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欧州諸国の子どもオンブズパーソンによる新型コロナ関連の取り組み

 ヨーロッパでは、各国に設置された子どもオンブズパーソン/コミッショナーがENOCEuropean Network of Ombudspersons for Children:子どもオンブズパーソン欧州ネットワーク)という団体を設置し、相互の交流などを図っています。加盟資格があるのは欧州評議会加盟国に設置されている子どもオンブズパーソン等で、2020年現在、34か国の43組織が加盟しています。現在議長を務めているのは、スコットランド子ども・若者コミッショナーのブルース・アダムソン氏です。

 ENOCも、各国の子どもオンブズパーソン等と連携をとりながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の取り組みを行なってきました。

 2020年4月1日には執行部(Bureau)として「COVID-19アウトブレイクの状況における子どもの権利」に関する声明(ENOC Bureau Statement on Children's Rights in the context of the COVID-19 outbreak、PDF)を発表し、とくに以下の分野に焦点を当てながら、COVID-19パンデミック下でも引き続き子どもの権利を守っていくことの必要性を強調しています。

● 情報および参加(子どもの権利条約12条・13条)
● 暴力および虐待からの保護(条約19条・34条)
● 健康・発達に対する権利、社会保障を享受する権利および十分な生活水準に対する権利(条約24条・26条・27条)
● 教育(条約28条・29条)

 これとは別に、養護下にある子どもに生じうる影響についても強い関心を示し、「継続的学校教育、監督および若干の余暇活動へのアクセス」を保障する必要性を指摘するとともに、10項目の勧告を行なっています。

 このほか、▼ストリートチルドレンおよび保護・養育者のいない(庇護希望者である)子どもにシェルターを提供すること、▼移住者(庇護希望者を含む)である子どもとその家族の収容を停止すること、▼妊産婦のケアと新生児の発達に配慮することの必要性なども指摘しています。

 ENOCはさらに、ユニセフ(国連児童基金)欧州・中央アジア地域事務所などと協力して2020年5月にオンライン調査を実施し、その結果を「子どもオンブズパーソン/コミッショナーにとっての課題とCOVID-19対応に関する報告書」(ENOC-UNICEF Report on Ombudspersons and Commissioners for Children's Challenges and Responses to COVID-19、PDF)として発表しました(6月29日)。

 そこでは、COVID-19対策として導入された外出制限等のために子どもオンブズパーソン/コミッショナー事務所としての活動にもさまざまな制約が生じながらも、ほとんどの国ではオンラインでモニタリング活動を継続したことなどが明らかにされています。子ども・若者を対象とするオンライン調査をいち早く実施した例も挙げられているので、紹介します。

 いくつかの国では、子ども・若者がロックダウン中の経験をシェアする調査が行なわれた。たとえば、フラマン語共同体〔ベルギー〕の子どもの権利コミッショナー事務所は、COVID-19パンデミック中の子ども・若者の経験についてよりよく知るためのオンラインアンケートを実施し、4万4400人以上の子ども・若者の参加を得た。この協議の結果は、2020年5月28日、子ども・若者によってフラマン語共同体議会に提出された。ウェールズの子どもコミッショナーも「コロナウイルスと私」と題する全国調査を行ない、2万人以上の子ども・若者の参加を得た。
 スコットランド子ども・若者コミッショナーも、スコットランドにおけるCOVID-19関連の法律・政策のあらゆる側面に関する子どもの権利影響評価の実施を計画している。

* 平野注/脚注は省略しましたが、注8によれば、このようなオンライン調査はベルギー(フラマン語共同体)、エストニア、ジャージー(英国)、オランダ、スコットランド(英国)、ウェールズ(同)で実施されたとのことです。また、スコットランドで実施された子どもの権利影響評価については以前の記事を参照。

 COVID-19パンデミック中に新たに浮上した問題としては、次のようなものが挙げられています。とくに1)遠隔学習と学校閉鎖については詳しい記述が行なわれています。

1)遠隔学習と学校閉鎖
2)子どもの貧困
3)暴力および虐待
4)刑事司法
5)健康問題と保健ケアへのアクセス
6)障害のある子ども
7)施設の子ども
8)離婚・別居家族
9)移住者・難民である子ども

 一方で、影響を緩和するための措置や革新的アプローチがとられてきたことも、各地の子どもオンブズパーソン/コミッショナー事務所から次のような分野に関して報告されています。

● デジタル貧困と遠隔学習に関する措置
● 経済的措置
● 心理的・身体的健康に関する措置

 各国の子どもオンブズパーソン/コミッショナー事務所等がCOVID-19に関してどのような取り組みを行なってきたかについては今後も随時紹介していきたいと思いますが、あらためて、このような独立した公的機関が存在することの重要性を感じます。

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