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欧州評議会:専門家向けの子ども参加ハンドブック

 先日の記事で、欧州評議会の閣僚委員会が2012年に採択した「18歳未満の子ども・若者の参加」に関する勧告(CM/Rec(2012)2)と、加盟国によるこの勧告の実施を支援するための「子ども参加アセスメントツール」について紹介しました。

 欧州評議会はさらに、上記の勧告の実施に関して子どものために/子どもとともに働く専門家を支援するための冊子『耳を傾ける-行動する-変革する:欧州評議会子ども参加ハンドブック――子どものために/子どもとともに働く専門家のために』(Listen - Act - Change: Council of Europe Handbook on children's participation - For professionals working for and with children)を刊行しました(2020年10月刊/2021年1月21日公式発表PDF〕)。

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 78ページからなるこのハンドブックは、▼子ども参加の理論と実践に関する基礎知識(セクション1)を提示したうえで、▼参加型の組織・環境の発展(セクション2)、▼個々の子どもの参加支援(セクション3)、▼集団的参加の進め方(セクション4)を詳細に解説したものです。多くの項目に実例やチェックリストも掲載されており、実践的な内容になっています。たとえば、「子どもにやさしい参加型の教室」と題したチェックリスト(p.32)で例示されているのは次のような項目です。

子どもにやさしい参加型の教室
(中略)
・生徒と教員が、国連・子どもの権利条約に掲げられた権利の言葉で表現された行動規範、約束事または憲章について交渉・合意する。
・何が学びの役に立っているか、何が一番楽しいか、何が学習を妨げているかについて生徒が教員にフィードバックする機会が、日常的に存在する。
・生徒が、自分自身の学びのアセスメントおよび学業の評価に全面的に関与する。仲間の学業について支援的な評価が行なわれる。
・生徒が学級運営の複数の側面について責任を負っている。
・生徒に学びの選択をする機会がある。
・相互の支援と協力が強く重視されている。
・教員が、どのような学び方を好むかは生徒によって異なる場合があることを認識し、多種多様な授業戦略および学びへの回路を活用する。
・誰もがおたがいの話に耳を傾け、教育に対する全員の権利を認識・尊重するので、好ましい行動が維持されまたは向上する。
・教員とティーチングアシスタントが、生徒の意見に積極的に耳を傾け、その意見に敬意を示す。生徒をこき下ろしたり嫌味を言ったりしない。罰を与えるときにははっきりした理由を示す。生徒個人が望ましくない行動をしただけのときに、学級全体に「連帯」罰を科したりしない。教員が、ティーチングアシスタントおよび他のすべての大人に敬意を示す。
・生徒が、おたがいの似ている点と違っている点を尊重して大事にし、おたがいに支えあう。望ましくない行動、悪口、人種差別的・性差別的発言はほとんどない。
・個別に、また(たとえば学校評議会を通じて)集団的に生徒の意見に耳を傾けて対応することが高く位置づけられ、そのために十分な時間が与えられる。

 付属資料も充実しています。

付属資料
1)
効果的・倫理的参加のための9つの基本的要件:実践にとっての意味合い(国連・子どもの権利委員会が示した9つの基本的要件については、先日の投稿の末尾を参照)
2)アクセスしやすい情報の作成:ガイダンス
3)安全とウェルビーイングの確保:チェックリスト
4)差別への対抗:実践にとっての意味合い
5)会合・議事進行における子どもたちの役割の説明:チェックリスト
6)子どもたちとのコミュニケーション:チェックリスト
7)集団的参加の準備:検討すべき主要な問題
8)表現・結社の自由の支援:チェックリスト

 日本でで子どもの意見表明と参加を保障・推進していくうえでも参考になる資料だと思います。

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