アイルランド子どもオンブズマン事務所、国連・子どもの権利委員会に2つのレポートを提出
アイルランドの子どもオンブズマン事務所(OCO)は、国連・子どもの権利委員会による同国の定期報告書審査に向け、政府から独立の立場で同委員会に提出した2つの報告書を公開しました(9月7日)。
★ Ombudsman for Children's Office submits two major reports to UN Committee on the Rights of the Child
https://www.oco.ie/news/ombudsman-for-childrens-office-submits-two-major-reports-to-un-committee-on-the-rights-of-the-child/
ひとつはOCOとしての報告書(PDF)、もうひとつはOCOとその若者助言委員会(Youth Advisory Panel)が中心となって子どもたちの声をとりまとめた「子どもレポート」(PDF)です。
OCOの報告書は全65ページで、冒頭で「新たな進展」として3つの問題を取り上げたのち、委員会の定期報告書ガイドラインにしたがい、対処されるべき問題を分野ごとに挙げています。論点ごとに現状の簡潔な説明と国への勧告を掲載するというスタイルです。取り上げられている問題は次の43項目です(〔 〕内は平野による補足です)。
子どもレポートには "Pieces of Us"(私たちのピース)というタイトルが付されています。パズルを社会、パズルのピースを1人ひとりの子どもに見立て、すべての子どもが社会でぴったりの居場所を見つけられるようにするにはどうすればよいか考えよう、という思いが込められているそうです(レポートのpp.2-3に掲載されている次のイラストを参照)。
子どもレポートは、オンラインアンケートとフォーカスグループ・ディスカッションを通じて集められた子どもたちの声をもとに作成されました。オンラインアンケートの設問は(a)アイルランドで子どもでいることのよい点、(b)アイルランドで子どもでいることのそれほどよくない点、(c)アイルランドの子どもたちの生活をよりよいものにするために必要なことの3つを尋ねるもので、5,515人の子どもたちから回答があったとのことです。
フォーカスグループ・ディスカッションでは、(a)教育、(b)子ども支援サービス、(c)平等と差別禁止、(d)コミュニティと余暇、(e)子どもたちの声、(f)特別な保護を必要とする子どもという6つのテーマについて議論が行なわれ、200人以上の子どもたちが23のフォーカスグループに参加しました。
子どもレポートでは、オンラインアンケートに寄せられた子どもたちの回答が12歳未満/12歳以上の年齢別に、またフォーカスグループ・ディスカッションで出された子どもたちの声が上記のテーマ別に、それぞれ整理されて紹介されています。たとえば、教育に関するフォーカスグループ・ディスカッションで浮上した論点として挙げられているのは、次の9項目です。
子どもレポートは全170ページという大部なもので、子どもたちが描いたイラストや手書きのメッセージも豊富に掲載されています。委員会への情報提供というだけではなく、子どもの権利条約の実施のあり方をアイルランド国内で考えていくうえでも貴重な資料になっていると言えます。
国連・子どもの権利委員会によるアイルランドの報告書審査は第92会期(2023年1月~2月)に行なわれる予定です。今回の報告書が第5回・第6回統合定期報告書となります(簡略報告手続にしたがい、委員会が事前に作成した質問事項への文書回答が報告書として扱われています)。前回の総括所見(2016年)の日本語訳は私のサイトを参照(それ以前の総括所見の日本語訳にもリンクしています)。
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