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東アジアの子どもたちによるソーシャルメディアの利用状況調査

 子どもの権利条約総合研究所と東洋大学 福祉社会開発研究センターが12月6日に共催した公開シンポジウム「ICT(情報通信技術)と子どもの権利―韓国・台湾・日本の取り組み」では、韓国・台湾・日本に、インターネット依存、オンラインの性的搾取・虐待、ネットいじめ、デジタルディバイド(格差)など多くの共通の課題があることがあらためて明らかになりました(シンポジウムの内容は、2021年春に電子版で刊行予定の『子どもの権利研究』32号に掲載されます)。

 一方、12月14日には、ユニセフ(国連児童基金)東アジア・太平洋地域事務所および司法・犯罪防止センター(南アフリカ)による報告書『私たちのオンライン生活:東アジアの子ども・青少年によるソーシャルメディアの利用――機会・リスク・危害』(Our Lives Online: Use of social media by children and adolescents in East Asia - opportunities, risks and harms, PDF)が発表されています(執筆:Monica Bulger and Patrick Burton)。

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 サマリー版『子どもたちのオンラインでの振舞いに関する理解は東アジアにおける保護戦略にどのような示唆を与えうるか』(How can understanding children's online behaviour inform protection strategies in East Asia?、PDF)と解説ビデオも作成されています。

 調査は、カンボジア、インドネシア、マレーシア、タイの4か国で、301人の子ども(ストリートチルドレンおよび子どもの難民121人を含む)の参加も得て実施されました。その結果得られた知見の概要は以下のとおりです(報告書の Executive Summary より)。

● 東アジアのあらゆる生活階層・背景の子どもが携帯機器にアクセスできており、その利用に関して男女差はほとんどない。
● 4か国でインタビュー調査の対象とされたすべてのグループで、ソーシャルメディア・アプリの利用が広く行なわれている。
● 研究に参加した子どもの大多数は、ソーシャルメディアを主に情報収集、コミュニケーションおよび娯楽目的で利用している。
● フォーカスグループに参加した子どもの5人に2人が、誰にも言いたくない嫌な経験をしたことがあると報告している。
● フォーカスグループに参加したティーンの半数以上が、最初はオンラインで出会った人と実生活でも会ったことがある。
● 男女とも、ソーシャルメディアで性的メッセージや性的画像を受け取ったことがあると報告している。
● 現場のワーカーや親は、ソーシャルメディアには子どもたちにとっての新たな脅威やリスクがあると考えている。

 子どもたちの安全なインターネット利用を支えるための主な対応としては、以下のものが提言されています(サマリー版p.6のBox1より)。

■ オンラインのリスクに取り組むための戦略やプログラムが、子どもに対する暴力に対処するための国内的・地域的枠組みと調和したものになるようにする。
■ デジタル子育て(digital parenting)のための支援を向上させるため、国の子育て戦略にテクノロジーおよびソーシャルメディアを統合し、かつ屋・養育者のデジタルリテラシースキルの構築を図る。
■ 介入策が、利用パターンや、子どもたちを安全に保つうえで「何が有効か」に関するエビデンスに基づいたものであるようにする。
■ 子どもたちの対処機制、紛争解決スキルおよびソーシャルスキルをオフラインでもオンラインでも高めるため、オフラインにおける子どもたちのレジリエンスを醸成する。
■ テクノロジー企業に対し、自社のプラットフォームの安全な利用を責任のあるやり方で促進するよう促す。そのための手段には、プロフィールを非公開にすること、コミュニケーションの「友達限定」をデフォルトにすること、コンテンツのシェア/受取りをコンタクトリストメンバーに限定することなどが含まれる。
■ 進展のモニタリングおよび基準の設定を目的とするデータシステムを確立する。データはジェンダー、年齢、所在地、主要な社会経済的変数によって細分化する。

 日本での対応を考えていくうえでも参考になりそうです。なお、デジタル子育ての支援については先日紹介した欧州評議会のガイドも参照。


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