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ウェールズ(英国)、体罰全面禁止法の施行に向けて啓発の取り組みを強化

 ウェールズ(英国)では2020年1月28日に体罰全面禁止法が議会で可決され、成立しました。Facebookの投稿を再掲しておきます(抜粋)。

 可決された「子ども(合理的処罰の抗弁の廃止)(ウェールズ)法」 Children (Abolition of Defence of Reasonable Punishment) (Wales) Act の主な内容は次のとおりです(関連資料は以前の投稿参照)。
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1.コモンロー上の合理的処罰の抗弁の廃止
(1)コモンロー上の合理的処罰の抗弁は、ウェールズで行なわれる子どもの体罰との関連では、これを廃止する。
(2)これにともない、ウェールズで行なわれる子どもの体罰は、いかなる民事上または刑事上の手続においても、合理的処罰にあたるという理由で、これを正当化することはできない。
(3)同様に、ウェールズで行なわれる子どもの体罰は、いかなる民事上または刑事上の手続においても、他のいずれかのコモンロー上の規則の適用上認められた行為であったという理由で、これを正当化することはできない。
(4)本条の適用上、「体罰」とは、処罰として行なわれるすべての殴打(battery)をいう。
(5)(略:英国2004年子ども法第58条の修正)
2.(略:施行に関する規定)
3.(略:法律の略称に関する規定)
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 改正に反対する声も一部にあり、法案は賛成36票・反対14票で可決されました。施行は2022年からです。ウェールズ政府は6年間で220万ポンド(3億円超)の予算を組んで体罰禁止に関する意識啓発キャンペーンを行なう予定で、施行から3年後・5年後に法律の効果に関する検証を実施することにしています。

 法律の施行日は2022年3月21日です。ウェールズ政府は法律を周知するための特設ページを設け、9月14日には30秒の啓発動画を公開するなど、施行に向けた取り組みを強化中です。

 法改正が行なわれた経緯などについては、今年3月20日に公開された動画で詳しく説明されています。

 End Violence Against Childrenの記事〈The Government of Wales Takes Further Steps to Implement Prohibition of Corporal Punishment〉(2021年9月21日付)によれば、政府はさまざまな関係者と170回以上の会合を持ってキャンペーンの計画を立て、13の言語で啓発資料を作成するなどの取り組みも進めてきました。なお、啓発キャンペーンの予算は当初の220万ポンドから290万ポンド(4億3,600万円超)に増額されたようです。

 体罰禁止を広報するためのアドカーもウェールズ各地を走っているとのことで、画像を探してみたところ、Cllr Joshua Beynon議員のFacebookに次の写真がアップされていました。

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 ウェールズでは定期的に体罰に関する意識調査が実施されており、直近の調査(2020年実施/2021年9月23日発表)では、「時には子どもを叩くことも必要だ」と考える市民が3割強(34%)存在するという結果が出ています。一方、このような考え方に反対する市民は約半数(47%)で、啓発がさらに進めば体罰容認の意識はさらに少なくなるとも考えられます。

 約1年前に体罰禁止法が施行されたスコットランドにおける広報の取り組みも参照。

 なお、福岡市で昨年(2020年)11月に実施された〈「体罰等によらない子育て」&「189いちはやく」啓発キャンペーン〉の際、市営地下鉄の駅に啓発広告が掲示されていましたので、あわせて紹介しておきます(当時、Facebookで紹介したものです)。

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【追記】日本政府の取り組みとしては、厚生労働省のサイトに特設ページ体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~が設けられています。noteでも前に取り上げました

 8月19日に発表された子どもに対する暴力撲滅行動計画も参照。


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