見出し画像

欧州社会権委員会、ベルギーの「偽装インターンシップ」について欧州社会憲章違反を認定

 欧州評議会の欧州社会権委員会(European Committee of Social Rights: ECSR)は、ベルギーで行なわれてきたいわゆる「偽装インターンシップ」について、改正欧州社会憲章(1996年)に違反するとの決定を言い渡しました(2月16日発表)。欧州若者フォーラム(European Youth Forum: EYF/Youth Forum Jeunesse: YFJ)による集団的申立て(collective complaint)を受けたものです。

1)Belgium found to have breached the European Social Charter over "bogus internships"
https://www.coe.int/en/web/portal/-/belgium-found-to-have-breached-the-european-social-charter-over-bogus-internships-

2)The decision on the merits in European Youth Forum (YFJ) v. Belgium, Complaint No. 150/2017, is now public
https://www.coe.int/en/web/european-social-charter/-/the-decision-on-the-merits-in-european-youth-forum-yfj-v-belgium-complaint-no-150-2017-is-now-public

「偽装インターンシップ」(bogus internships)とは、決定書の説明によれば、インターンシップの形態をとって行なわれる、「雇用主の支配下でかつ雇用主の利益のために行なわれる現実の業務遂行をともなう、偽装された雇用形態」のことです。ベルギーでは、2005年ボランティア権利法に基づき、無給のインターンシップが広く利用されてきました。このようなインターンシップが若者の搾取につながらないよう、制度の濫用を防止するための法規定も設けられていますが、EYFの主張によれば、労働監督制度が不十分であるためにこのような規定は十分に執行されていません。このような状況は、改正欧州社会憲章第4条1項(本人および家族が人間らしい生活水準を享受できるような報酬に対する労働者の権利)および第7条5項(公正な賃金または他の適切な手当てに対する若年労働者および実習生の権利)に違反するというのがEYFの主張です。

 欧州社会権委員会は、訓練生制度(traineeship)の概念は「有給か無給かにかかわらず、雇用可能性(employability)の向上および正規雇用への移行の促進を目的として実務的および専門的経験を得るために行なわれる期間限定の労働実践であって、学習および訓練の要素を含むもの」として理解されなければならず、ベルギーの「偽装インターンシップ」はこのような要件を満たさないと判断しました。

 EYFはまた、「偽装インターンシップ」は憲章第E条(第3部)に定められた差別の禁止の原則にも違反すると主張していました。インターンに賃金を支払わないことは、無給で長期間働く余裕のない若者に対する差別であるとともに、他の労働者に対しては公正な賃金に対する権利が保障されているのに無給のインターンに対してはこのような権利が保障されないという点で、インターン自身に対する差別でもあるという指摘です。

 欧州社会権委員会はこの点についても、労働監督制度が効果的に運用されていないため、「偽装インターン」は、正規の雇用契約に基づいて同様の労働を行なっている他の労働者に対しては保障されている公正な報酬に対する権利を実質的に剥奪されているとして、EYFの主張を基本的に認めました。

 結論として、▽憲章第4条1項の違反、▽憲章第4条1項を踏まえて解釈した場合の第E条の違反がともに賛成多数(それぞれ13対1および11対3)で認定されています。

 EYFは今回の決定を歓迎する記事を発表しました。

3)Belgium must do more to stop unpaid internships, rules international human rights body
https://www.youthforum.org/news/belgium-must-do-more-to-stop-unpaid-internships-rules-international-human-rights-body

 その記事によれば、ピエールーイブ・デルマーニュ(Pierre-Yves Dermagne)副首相兼経済労働相も今回の決定を受けて次のように述べ、是正の意向を示しているようです。

「無給のインターンシップは不公正な競争であり、若い労働者の人権侵害であり、労働市場における不平等を強化するひとつの方法です。連邦諸機関の同僚の援助を得て、その是正のために全力を尽くします」


noteやホームページでの翻訳は、ほぼすべてボランティアでやっています。有用だと感じていただけたら、お気持ちで結構ですのでサポートしていただけると、嬉しく思います。