韓国国家人権委員会、障害者向けの居住施設に入所している障害児の処遇改善を勧告
韓国国家人権委員会(以下「人権委」)は、2月10日、障害者向けの居住施設に入所している障害児の発達保障・人権促進を進めるよう、保健福祉部(省)に対して勧告しました。
★韓国国家人権委員会:보건복지부에 장애인거주시설 내 장애아동 인권 증진을 위한 제도개선 권고(保健福祉部に、障害者居住施設内の障害児の人権を促進するための制度改善を勧告)
https://www.humanrights.go.kr/base/board/read?boardManagementNo=24&boardNo=7608809
人権委によれば、韓国における障害のある子ども(18歳未満)の人数は8万人弱(7万7,961人、2021年12月現在)と推定され、そのうち1.91%(1,486人)は児童福祉法に基づいて設置されている児童福祉施設に入所していますが、2.47%(1,928人)は障害者福祉法に基づいて設置されている障害者居住施設で生活しています。
後者の子どもたちについては児童福祉法に基づくさまざまな支援サービスが提供されておらず、障害のある子どもの特性にふさわしいサービスや保護を十分に受けられていません。人権委が2021年に実施した「障害者居住施設の障害児人権状況実態調査」では、次のような現状が明らかになりました。
〇 障害者居住施設の約半数(47.9%)で障害のある子どもと成人が混合収容されているほか、個別学習空間のない施設が29.8%、屋外遊び場および遊具のない施設が52.1%に達するなど、障害のある子どもへの配慮が不足している。
〇 2020年に保健福祉部が実施した調査によると、障害者居住施設で暮らしている障害児のうち学習のための全面的支援が必要な子どもは52.7%に達した。しかし、障害者居住施設のうち、障害のある子どものための支援人材のいない施設が約38%、障害のある子どもへの支援サービスのない施設が約30%に達するなど、障害のある子どものためのサービスや人材が不十分である。
〇 児童福祉施設に入所している障害児は児童福祉法に基づいて自立支援標準化プログラムを利用できるのに対し、障害者居住施設に入所している障害児に優先的に適用される障害者福祉法には年齢別の支援に関する具体的規定がないため、成人に達して以降の自立を支援するための適切な教育を施設内で受けられていない。
○ 障害者居住施設に入所している障害児には、後見人が指定されていなかったり、縁故者はいるものの親権者と連絡がとれなくなっていたりする子どもが多い。このような障害児は、施設長によって親権を濫用されたり、金融取引やサービス契約締結を拒否されるといった日常生活の制約を受けたりして、多くの困難を経験したりしている。
○ 障害のある子どもが入所している施設の職員の39.7%が、過去1~2年の間に障害のある子どもの人権に関する専門的教育を受ける機会が十分ではなかったと回答している。
こうした結果を踏まえ、人権委は、障害者居住施設に入所している子どもの権利を、児童福祉施設に入所している子ども、さらには地域社会で暮らしている子どもと同等の水準で保護するとともに、障害のある子どもの人格の完全で調和のとれた発達を保障することによって障害のある子どもが社会で自律的に成長できるようにすることが必要だと判断。保健福祉部長官に対し、これらの障害児の発達支援体制の構築および法的保護の強化という観点から、次のような勧告を行なったものです。
-障害者居住施設に入所している障害児の発達支援体制を構築するため、標準化された発達支援プログラムを開発して「障害者居住施設サービス最低基準」に含めること。
-障害のある子どもの脱施設化を優先的に支援する政策を履行するための具体的な地域社会自立支援方策を定め、これらの子どもが施設での準備過程を経て地域社会での生活に移行できるよう、持続的な資源連携および事後管理を行なうこと。
-障害のある子どもの法的保護を強化するため、後見人の指定の実態を把握し、管理と勧告を徹底するとともに、「保護施設にある未成年者の後見職務に関する法律」に定められた後見人指定手続などについて職員教育を行なうこと。
-障害者福祉施設事業案内指針による職員の人権教育に子どもの人権に関連する内容を含め、障害のある子どもの基本的権利、人権侵害の予防、権利救済などに関する総合的な教育を義務的に行なうこと。
人権委は、昨年7月には全国10か所の児童養育(養護)施設の実態調査を行なって改善を勧告しています。社会の目が届きにくく、自ら声をあげることも容易ではない子どもの権利を守っていくうえで、やはりこのような独立機関が日本でも必要です。
なお、この間Facebookでも人権委の取り組みについて何度か取り上げていますので、紹介しておきます。
-パーマ・髪染めを禁止する校則の是正を勧告(2022年9月22日/2022年11月28日投稿)
-刑事処分可能年齢の引き下げについて反対の意見表明(2022年9月26日/2022年11月26日投稿)
-昼食時間に休憩する権利を高校生に保障するよう勧告(2022年12月6日/2022年12月25日投稿)
-中学生に対する過度な「生徒生活規定」の改正を勧告(2022年12月6日/2022年12月26日投稿)
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