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欧州評議会:教育現場における子どものデータ保護ガイドライン(2020年)

 私のサイトに、欧州評議会・個人データの自動処理に係る個人の保護に関する条約(条約第108号)諮問委員会が2020年11月20日に採択した「教育現場における子どものデータ保護」に関するガイドライン日本語訳(PDFはこちら)を掲載しました(採択後のプレスリリース Protect children's personal data in an education setting も参照)。

 ガイドラインの構成は次のとおりです。

1.はじめに
2.適用範囲および目的
3.ガイドラインの適用上の定義
4.データ処理の原則
5.教育現場における子どもの権利の基本的原則
:子どもの最善の利益/子どもの発達しつつある能力/意見を聴かれる権利/差別の禁止に対する権利
6.立法者および政策立案者に対する勧告:立法、政策および実務の見直し/意見を聴かれる子どもの権利のための効果的支援の提供/子どもの権利の承認および統合
7.データ管理者に対する勧告:正当性および法定根拠/公正性/リスク評価/データ保持/教育現場における個人データの安全管理/自動化された意思決定およびプロファイリング/生体データ
8.業界に対する勧告:基準/透明性/データ保護およびプライバシーに関連するデザイン特性

 欧州評議会の条約第108号プラス(1981年に署名のために開放された「個人データの自動処理に係る個人の保護に関する条約」を、2018年に採択された議定書により改正したもの)を教育現場で適用するためのガイドラインなので、同条約の締約国ではない日本に直接適用されるものではありません。

 しかし、子どもの個人データやプライバシーの保護は子どもの権利条約に基づく要請でもあり、国連・子どもの権利委員会も「デジタル環境との関連における子どもの権利」についての一般的意見25号(2021年)で詳細に取り上げています(今回のガイドラインでも一般的意見25号の草案が参照されています)。

教育データ利活用ロードマップ」(2022年1月7日)によって教育現場のIT化がいっそう進められようとしているなか、子どもの権利の視点に立ってそのあり方を慎重に検討することは重要です。この点に関する詳しい検討は私の手に余りますが、たとえば〈デジタル庁「教育データ利活用ロードマップ」は個人情報保護法・憲法的に大丈夫なのか?〉(なか2656のblog)という問題提起も行なわれています。

 今回のガイドラインは必ずしも十分に練られたものではないようで、文法的に整理されていない点も散見されますが、教育現場における子どもの個人データ保護を検討していくうえでおおいに参考になる文書だと思います。


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