新型コロナと子どもたち:アイルランド子どもオンブズマンによる調査結果
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックが子どもたちに及ぼしている影響の調査や評価に関して各国の子どもオンブズパーソン/コミッショナーが果たしてきた役割についての関連記事を〈新型コロナ禍が子どもたちに及ぼした影響:欧州諸国の子どもオンブズパーソンによる「子どもの権利影響評価」(CRIA)〉にまとめておきましたが、その続きとして、アイルランドの子どもオンブズマン事務所(OCO)が2022年4月20日に発表した報告書を紹介します。
★ OCO (Ombudsman for Children's Office) - No Filter: A survey of children’s experiences of the Covid Pandemic
https://www.oco.ie/news/no-filter-a-survey-of-childrens-experiences-of-the-covid-pandemic/
『フィルターなし:子どもたちのCOVIDパンデミック経験の調査』(PDF)と題されたこの報告書は、OCOが、1,400人弱の子ども・若者(9~17歳)を対象として2022年2月に実施した調査の結果をまとめたものです。上記リリースを訳出しておきます(適宜段落替えした箇所があります)。
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子どもオンブズマン事務所(OCO)が調査した子どもたちの半数近くが、COVIDパンデミックによって生活が相当に変わったと語っている。OCOとアモーラック・リサーチ(Amarach Research)社が2022年2月に実施した調査『フィルターなし』は、2年間のパンデミックに関する子どもたちの意見と経験に初めて光を当てたものである。
全国の初等・中等学校23校で調査に応じてくれた1,389人の子ども・若者(9~17歳)のうち、パンデミックの期間を通じて孤独感を経験していたのは74%にのぼり、76%はさまざまなレベルの不安感を、70%は怒りを経験していた。教育に関しては、回答者の83%がパンデミックによって学習に何らかの悪影響があったと感じていたほか、憂慮すべきことに、子どもたちの14%が、パンデミックの期間全体を通じ、家庭でのオンライン学習に関して何の援助も受けられなかったと語っている。COVIDのために学校に行けなかったことに関しては、今年の学年度が始まって以降の期間〔注/2021年9月~〕に限っても、子どもたちの28%が2週間以上学校に行けず、29%が1~2週間学校に行けなかった〔注/COVID-19関連の制限、陽性反応または隔離規則のため〕。子どもたちの60%が、COVID期間中にスクリーンタイム(テレビ、NetflixおよびYoutubeを含む)が増えたと語っている(学業のためにオンラインで過ごした時間は含まれない)。
子どもたちは、自分のパンデミック経験についてコメントすることも促された。12~14歳のある女の子(ゴールウェイ在住)は、「人づきあいが苦手になった。初めて会う人にどう話しかければいいかわからず、何を言おうか考えちゃう」と語っている。15~17歳のあるティーンエイジャーは、パンデミックが「メンタルヘルスや実生活で他人とコミュニケーションする力に大きな影響」を与えたと述べた。
プラス面に目を移すと、調査に応じてくれた子ども・若者の54%は制限が解除されたことを喜んでおり、40%近くが希望を感じている。回答者からは、パンデミックがもたらしたいくつかの利点も表明された。ある初等学校生徒(ウィックロー在住)は、「何をするのが好きかを自覚するチャンスになったと思う。自分のことが本当によくわかった」と語っている。キャバン在住の10代の女の子は、「家族と外で過ごす時間がすごく増えて、生活がすごくシンプルになって、とても楽しかった」と述べた。
報告書へのコメントで、子どもオンブズマンを務めるナイアル・ムルドゥーン(Niall Muldoon)氏は次のように述べている。
「パンデミックの期間全体を通じ、この2年間の経験が子どもたちにどのような影響を与えてきたかについて大人がたくさんのことを語ってきましたが、この調査は、自分たちの生活への影響についてどのように感じているか、子どもたちから直接聴く機会を提供してくれるものです。
制限なしの生活に順応していくなかで、私たちは、子どもたちの記憶がまだ新鮮なうちに、自分たちが置かれた普通ではない状況に子どもたちがどのように対処したと感じているか、スナップショットを撮って記録しておきたいと考えたのです。
この調査によって、いくつかの興味深い知見が明らかになりましたし、場合によっては、とくに子どもたちによる一部のコメントとの関連で、憂慮すべき知見も明らかになりました。調査に応じてくれた子どもたちのうち、パンデミックによって生活が『とても』変わったと答えた子どもが半数弱にのぼっており、この2年間が子ども・若者に及ぼしてきた真の影響を十分に理解するために、さらなる取り組みが必要であることははっきりしています。
子ども・若者から直接声を聴き、その意見が正当に重視されるようにすることは、子どもオンブズマンとしての私の仕事の重要な一部であり、この調査で共有された力強いメッセージが、今後の取り組みの参考となり、意思決定や政策立案を担当する立場にある人たちの耳に届くようにするために、がんばっていきます」
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