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ニュージーランドのプライバシーコミッショナー事務所、子ども・若者のプライバシーに関する報告書を発表

 ニュージーランドのプライバシーコミッショナー事務所が、4月17日、「ニュージーランドの子ども・若者のプライバシーを守る」Safeguarding children and youngpeople's privacy in New Zealand)と題する報告書を発表しました。

★ New survey shows we all need to sharpen up about privacy risks for kids
https://www.privacy.org.nz/publications/statements-media-releases/new-survey-shows-we-all-need-to-sharpen-up-about-privacy-risks-for-kids/

 この報告書は、同コミッショナー事務所が「子ども・若者プライバシープロジェクト」の一環として昨年(2023年)8月から11月にかけて実施した、関係政府機関・専門家・NGOなどとの協議を踏まえたものです(子ども・若者をとくに対象とする協議は行なわれなかったようです)。

 協議の結果浮かび上がった主要なテーマとしては、次の3つが挙げられています(プレスリリースより;太字は平野による)。

1)ソーシャルメディアは主要な懸念のひとつであり、この点に関わる子どものプライバシーへのリスクに対応するためには、ガイダンスと規制改革の組み合わせが必要である。
2)専門家・親・子どもがプライバシーリスクについての理解を向上させられるよう、いっそうのガイダンスが必要である。
3)
プライバシー法を改正して忘れられる権利を含めること、子どもの最善の利益を考慮しなければならない旨の要件を導入すること、あるいは実務規範を策定することなど、若干の規制改革を行なうことで子どものプライバシー保護を向上させ得る。

 プライバシーコミッショナーを務めるマイケル・ウェブスター氏は次のようにコメントしています。

「いじめや脅迫に利用されかねない個人情報を子どもたちがシェアすることのようなプライバシー上の懸念は、よく知られています」
「けれども、子どもが自分自身または他人の個人情報や財務情報をシェアすることのような、それ以外のリスクもあるのです。クレジットカードの詳細、自宅住所、電話や電子メールの連絡先などです」
「位置情報は、それほど知られていないプライバシーリスクの好例です。多くのアプリやゲームがこの機能を利用しており、子どもの所在地を追跡するのに使われる可能性があります。しかし、こうしたリスクは、デバイスで正しいプライバシー設定をすれば簡単に対応できるというものではないのです」

 いわゆる〝シェアレンティング”の問題についても言及されています。

「時として、大人が自分の子どもを取り上げた画像やコンテンツをソーシャルメディア上でシェアすることがありますが、子どもには自分自身の人生があり、そのコンテンツをシェアしてほしくないと思うかもしれません。できれば、コンテンツをシェアすることの是非についての議論に、子どもたちに参加してもらうのがよいでしょう」

 さらに、次のようにも述べています。

「子ども・若者のプライバシーは、私の事務所にとっての優先分野のひとつです。子どもたちはプライバシー関連の危害に対していっそう脆弱なので、プライバシーが守られるようにするためには追加的な配慮を必要とします」

 調査から得られたその他の知見としては、次のようなものが挙げられています(太字は平野による)。

  • 親には、子どものプライバシー権をどうすれば守れるかについて理解するためのガイダンス(子どもの情報を収集している機関に対してどのような対応を期待できるかも含む)が必要である。

  • プライバシー関連の危害について幼いころから子どもを教育するための援助が必要である。

  • 諸機関は、人々の情報がどのように利用されているかについて、説明するべきである。

  • 子どものプライバシーを侵害した機関への罰則を厳しくする必要がある。

  • 子どもの画像をソーシャルメディアに投稿することのリスクについて親を啓発する広報キャンペーンが必要である。

 プライバシーコミッショナー事務所では、今回の調査結果を踏まえ、今後の対応について検討していく予定です。ニュージーランド子ども・若者委員会とも協力しながら子ども・若者自身の声ももっと聴いていけばよいと思いますが、このように、さまざまな機関がそれぞれの担当分野に応じて子どものための取り組みを進めていくことは重要です。

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