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日本を含む国連・気候変動枠組条約の締約国、COP27で子ども・若者が果たす重要な役割を公式に認める

 11月6日~20日にかけて、エジプトのシャルム・エル・シェイクでCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)が開催されました(会議の概要は環境省〈国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)、京都議定書第17回締約国会合(CMP17)及びパリ協定第4回締約国会合(CMA4)の結果について〉など参照)。

 依然としてさまざまな課題は残るものの、今回の会議の重要な成果のひとつとして、変革の担い手(agents of change)としての子ども・若者の役割が初めて公式に認められたことが挙げられています。ユニセフ(国連児童基金)代表団は、会議終了後の11月21日に発表した声明で、「汚染のない健康的かつ持続可能な環境に対する世界全体の権利と、気候行動の文脈におけるその重要性が、明示的に承認されたこと」を歓迎するとともに、
「……COP27は、子どもや若者を変革の担い手として初めて公式に認めるという、別の面での重要な進展を示しました。子どもと若者は重要な気候行動提唱者として、世界のリーダーたちがなかなか前進しない中で、行動を求めてきました。彼らが持つ、意見や経験、解決策を表明する自由は守られなければなりません」
 と強調しました。セーブ・ザ・チルドレンも、「今回のCOPではじめて、各国政府が子どもたちを危機への対応における変化の担い手として正式に認識し、政府が気候関連政策の立案と実施に子どもたちを参加させることに合意したこと」を歓迎しています。

* この投稿の見出し画像には、セーブ・ザ・チルドレンの声明の原文(英語)をFacebookでシェアした際に出るサムネイル画像をお借りしました。

 昨年のCOP26(英国・グラスゴー)で採択されたグラスゴー気候合意環境省仮訳PDF)でも、前文で「気候変動への対処及び対応における先住民、地域社会及び市民社会(若者や子供を含む。)の重要な役割」が認められており、本文でも
「この条約の目的及びパリ協定の目標に向けた前進への貢献において、市民社会、先住民、地域社会、若者、子供、地方政府、地域政府を含む非締約国の関係者が有する重要な役割を認める」(パラ55)
 と述べられていました。

 このような認識はCOP27で採択されたシャルム・エル・シェイク実施計画にも引き継がれており、パラ51で、グラスゴー気候合意の前文の記述がそのまま繰り返されています。シャルム・エル・シェイク実施計画では、さらに次のような記述が加わりました。

気候変動への対処および対応における変革の担い手としての子ども・若者の役割を認識し、締約国に対し、世代間衡平性の重要性および将来世代のために気候システムの安定性を維持することの重要性を認識して、気候政策および気候行動の立案・実施プロセスに子ども・若者を包摂するとともに、自国の代表団に若者の代表および交渉担当者を含めることを適宜検討するよう、奨励する」(パラ55)

 昨年のグラスゴー気候合意でも、締約国およびステークホルダーは「この条約及びパリ協定に基づく意思決定を含め、多国間、国家及び地方の意思決定過程において若者が意味のある形で参加しかつ代表されることを確保する」ように促されていましたが(パラ64、環境省仮訳を一部修正)、今回はさらに次の要素が加わったことになります。

・若者だけではなく子どもの参加も推進すること
・立案プロセスだけではなく実施プロセスにも子ども・若者の関与を得ること
・締約国会議等への代表団に若者の代表・交渉担当者を含めることを(引き続き)検討すること

 また、COP26では気候エンパワーメント行動(ACE)のためのグラスゴー作業計画も採択されており、そこでは次のように子ども・若者参加について言及されていました(太字は平野による)。

14.締約国はさらに、ACEの実施を開始しかつ主導するための若者の能力構築を図るとともに、UNFCCC〔国連気候変動枠組条約〕関連の会合への代表団に若者を含める等の手段により、国内および国際社会のレベルにおける関連の気候プロセスへの若者参加を促進するよう、奨励される。

29.締約国は、次の措置をとるよう奨励される。
(中略)
(e)気候変動に関する意思決定への公衆参加の増進および子ども・若者の包摂の増進ならびに気候変動に関する意思決定に関する地方政府および公衆の援助を目的とするガイドラインを策定すること。

 今回のCOP27でとりまとめられた気候エンパワーメント行動のためのグラスゴー作業計画に基づく行動計画では、優先分野C(ツールおよび支援)の活動のひとつに
「C.2 国内事情にしたがい、すべてのレベルにおける気候行動に若者を意味のある形で包摂し、かつこれらの行動に関して若者と意味のある形で連携するとともに、とくに子ども、女性、先住民族および障害のある人の、気候行動への包摂的参加を促進すること」
 が掲げられています。

 日本の環境省も特設ページ〈こども環境省〉を設けるなどして子どもにわかりやすい形での情報提供に努めていますが、今後は、こども家庭庁などとも連携しながら、子ども・若者の意見を組織的に聴き、施策に反映させていくことが必要です。

【付記】
 冒頭で紹介したとおり、ユニセフ代表団は「汚染のない健康的かつ持続可能な環境に対する世界全体の権利と、気候行動の文脈におけるその重要性が、明示的に承認されたこと」についても歓迎の意を表しています。これは、グラスゴー気候合意の前文で
「気候変動が人類共通の関心事であり、締約国が、気候変動に対処するための行動をとる際に、人権、健康についての権利、先住民の権利、地域社会、移民、子供、障がい者及び影響を受けやすい状況にある人々の権利並びに開発の権利に関するそれぞれの締約国の義務の履行、並びに男女間の平等〔ジェンダー平等〕、女性の自律的な力の育成〔女性のエンパワーメント〕及び世代間の衡平を尊重し、促進し、及び考慮すべきであることを確認し」
 と述べられていた部分が、シャルム・エル・シェイク実施計画の前文では
「……人権、清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する権利、健康についての権利、……」
 と修正されたことなどを指していると思われます。清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する権利は、国連人権理事会決議(2021年10月)でも国連総会決議(2022年7月)でも承認されましたので、このような加筆は当然かと思います。


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