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子どもの環境権に関するASEAN原則・政策指針:発表記念ウェビナー

 ユニセフ(国連児童基金)・UNEP(国連環境計画)・OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)の各地域事務所の努力でとりまとめられた「ASEAN地域における安全、清潔、健康的かつ持続可能な環境に対する子どもの権利についての原則および政策指針」の発表を記念するウェビナーが11月23日に開催され、私も視聴しました。

 同原則の概要はこちらの記事(草案段階のもの)で紹介しています(完成・発表についてお知らせした最近の記事も参照)。

 ウェビナーで行なわれた発言の一部は、次のリリースで見ることができます。

★ UNICEF: Enhancing children's rights to a safe climate, clean air and a healthy environment free from all types of pollution
https://www.unicef.org/eap/press-releases/enhancing-childrens-rights-safe-climate-clean-air-and-healthy-environment-free-all

 UNEPのアジア太平洋地域代表が述べているように、「安全、清潔かつ持続可能な環境に対する権利」は、2012年11月19日に採択されたASEAN人権宣言28条(f)ですでに認められていました*。国連人権理事会が2021年10月8日に採択した「安全、清潔、健康的かつ持続可能な環境に対する人権」に関する決議(決議48/13)は、このような権利を国際的に確認したものとして位置づけられています。

* ASEAN人権宣言については、たとえば渡辺豊「ASEAN人権宣言」法政理論第47巻第1号(2014年)〔PDF〕を参照。

 人権と環境に関する国連特別報告者のデビッド・R・ボイド(David R. Boyd)氏もウェビナーに登壇し、この国連人権理事会と今回の「原則および政策指針」を、環境のために行動している子ども・若者のエンパワーメントにつながるものとして高く評価しました。発言内容の一部はFacebook動画で見ることができます。

Speaking at the launch of the principles and policy guidance on children's rights to a healthy environment in the ASEAN...

Posted by UN Human Rights - Asia on Tuesday, November 23, 2021

 この動画では省略されていますが、同特別報告者は、水および衛生に対する権利についての国連総会決議64/292および人権理事会決議15/9(2010年7月・9月)が各国の国内法に大きな影響を与えてきたことを例に挙げ、法的拘束力のない決議などの文書でも触媒としての役割を果たしうることも強調していました(両決議がこの10年間に及ぼしてきた影響については、安全な飲料水および衛生に対する人権についての国連特別報告者が2020年7月に発表した声明〔英語〕など参照)。

 ウェビナーには国連・子どもの権利委員会の委員長を務める大谷美紀子さんも登壇し、この問題に関するこの間の委員会の取り組みを報告しています。時系列で整理すると次のとおりです。

-委員会は2016年に「子どもの権利と環境」についての一般的討議を開催し、委員会としての勧告をとりまとめた。それ以降、各国の報告書を審査するなかで、この問題に関する110以上の懸念表明と勧告を行なってきている。
-2018年に開催した「人権擁護者としての子どもの保護およびエンパワーメント」に関する一般的討議では、環境問題に取り組む子どもたちも人権擁護者であることを確認し、勧告でもとくに言及している(5.1.5)。
-2019年9月末には、気候変動問題について世界中の子どもたちが繰り広げているキャンペーンを支持・歓迎する声明を発表した。(概要はFacebookへの投稿を参照)
-2020年3月にサモアで特別会期を開催し、気候変動の大きな影響を受ける子どもたちとこの問題についても話し合った。
-2021年6月には、次の一般的意見(26号)のテーマを子どもの権利と環境(とくに気候変動に焦点を当てて)とすることを決定した。今回の「原則および政策指針」のような地域文書や、その作成過程で行なわれた子ども・若者との協議から、委員会もおおいに学べると考えている。
-2021年9月、世界各国の子どもから出されていた、気候変動による権利侵害を訴える通報について委員会としての決定を採択した。通報自体は受理不能としたものの、各国は気候変動が子どもの権利に及ぼす有害な影響について国境を越えて責任を負うことを認めている。(こちらの記事でリンクしている一連の記事を参照)

 なお、大谷さんは触れていなかったような気がしますが、委員会が11月19日付で「気候行動における子どもたちの中心性」と題する共同声明を発表したことも、お知らせしたとおりです。

 今回の「原則および政策指針」のチャイルドフレンドリー版も作成されていますので、紹介しておきます。「原則および政策指針」全文とともに、こちらのページからダウンロードできます。

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 チャイルドフレンドリー版の紹介を行なった CRC Asia のヘイゼル・ビターニャ(Hazel Bitaña)さんが、作成に関わった子どもの声として、
「子どもたちはこのような取り組みに参加したいと思っているが、大人にもっとがんばってほしいとも思っている」
 という趣旨のことを述べていたのが印象的です。そのとおりだと思います。

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