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欧州委員会(EU)、子どもとインターネットに関する新たな戦略を採択
EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会は、5月11日、「子どもと若者のためのデジタル10年:子どもにとってのインターネット向上のための新欧州戦略」(A Digital Decade for children and youth: the new European strategy for a better internet for kids: BIK+)を採択しました。
この戦略は、欧州委員会から欧州議会、欧州理事会、欧州経済社会委員会および地域委員会に対するコミュニケーション(連絡文書)として策定されたものです。EU加盟国を法的に拘束するものではありませんが、欧州委員会をはじめとするEU諸機関のとるべき行動を定義することにより、EU全体での政策目的の推進を目指すものです。
今回の戦略は、2012年5月に採択された第1次「子どもにとってのインターネット向上のための欧州戦略」(BIK)をアップデートしたものと位置づけられています(この分野におけるEUの取り組みについてはこちらのページも参照)。欧州委員会が2022年1月26日に採択した「欧州デジタル権およびデジタル原則に関する宣言」(Declaration on European Digital Rights and Principles)で
「子ども・若者はオンラインにおいて保護され、かつエンパワーされるべきである」
と述べられたことなどを踏まえ(p.2)、
「誰ひとりとして取り残されず、欧州のすべての子どもがオンラインで保護され、エンパワーされかつ尊重される、年齢にふさわしいデジタルサービス」
の構築をビジョンに掲げています(p.9)。
戦略の3本柱は次のとおりです(ファクトシートより)。
1.有害・違法なオンラインコンテンツから子どもを守る、安全なデジタル環境。
2.デジタル世界における子どもたちのエンパワーメントを図り、オンラインで安全な選択と自己表現をするために必要なスキルを身につけられるようにする。
3.革新的・創造的なデジタル経験を推進するために子ども主導の活動を増やし、子どもの積極的参加を向上させる。
![](https://assets.st-note.com/img/1652438674812-3G9Yzi8nuA.jpg)
戦略の要旨を1枚にまとめたインフォグラフィックでは次のように説明されています。
![](https://assets.st-note.com/img/1652438707218-nZU855AW4r.jpg?width=1200)
インターネットは、次のようなことができるすばらしい場所です。
● 学ぶ
● 遊ぶ
● 共有する
● 鑑賞する
● つながる
● 自己表現する
私たちは、新しい戦略で、すべての若者が、オンラインでどこに行こうとも、安全で、幸せで、エンパワーされていると感じてほしいと思っています。
私たちは次のことを実現したいと思っています。
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■ あなたのデジタル世界が安全であること。
-あなたの年齢にふさわしいもの以外は目に入らない。
-オンラインで見たりやったりすることのせいで、変な気分、悲しい気持ち、居心地の悪さを感じたりしない。
-ネットいじめ、ヘイト、危害から守られる。
■ あなたが必要なスキル、知識、支援を得られる。
-自宅や学校でインターネットを安全に利用する方法を学べる。
-オンラインで何を信じればよいか見分けるスキル、本当のこととフェイクを判別するスキルを身につけている。
-オンラインの問題についてどこに助けを求めればよいか、知っている。
■ あなたに発言権がある!
-興味のある問題に参加するためにインターネットを活用できる。
-インターネットで好きなように考えを共有できる。
-私たちは、あなたの考えに耳を傾け、他の人たちと協力しながら変化が起きるようにする。
ポスターも紹介しておきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1652438782154-s7XMiZBtEm.jpg?width=1200)
戦略では、国連・子どもの権利委員会の一般的意見25号(デジタル環境との関連における子どもの権利、2021年)にもいくつかの箇所で言及されています。欧州評議会の「デジタル環境における子どもの権利の尊重、保護および充足のためのガイドライン」(2018年)、デジタル環境における子どもに関するOECD勧告などもあわせて検討していくことが必要です。
なお、欧州委員会は同時に、オンラインでの子どもの性的虐待の規制に関する新たな規則も提案しています。これについてもそのうち概要を紹介したいと思います。
マガジン〈デジタル環境と子どもの権利〉もあわせてご参照ください。
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