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日本語訳:国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法

 以下に掲載するのは、スコットランド(英国)で2021年3月16日に可決された「国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法案」の全訳です(後半は有料です)。日本で「子ども(の権利)基本法」について考えていくうえで、台湾の「子どもの権利条約実施法」(2014年)などとあわせて参考にすることができるかと思います。法案の概要については提出時の解説記事も参照してください。note本文では少々読みにくいかもしれませんので、無料公開部分のPDFファイルも以下にアップしておきます。
 なお本法は、英国政府による異議申立てを受けた英国最高裁判所の判決(10月6日)により、4つの規定についてスコットランド議会の立法権限を逸脱していると判断されたため、施行には至っていません。今後、問題とされた規定を修正したうえで再可決される見込みですが、時期は未定です(10月7日付の投稿参照)。

国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法(成立時)

原文(英語
日本語仮訳:平野裕二(2021年11月18日掲載)

国連・子どもの権利条約に掲げられた権利および義務をスコットランド法に編入すること、条約に関連する義務の遵守を確保するために関連の定めを置くこと等を目的とするスコットランド議会制定法。


第1部 UNCRC上の要件

「UNCRC上の要件」および関連表現の意味
1 「UNCRC上の要件」および関連表現の意味
(1) 本法において――
 「条約」(the Convention)とは、1989年11月20日の総会決議44/25によって採択されかつ署名、批准および加入のために開放された国連・子どもの権利条約をいう。
 「第1選択議定書」(the first optional protocol)とは、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書をいう。
 「第2選択議定書」(the second optional protocol)とは、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書をいう。
(2) 本法において、「UNCRC上の要件」(the UNCRC requirements)とは、条約、第1選択議定書および第2選択議定書から生ずる権利および義務であって附則に掲げるものをいう。
(3) UNCRC上の要件は、英国が行なったすべての留保、異議または解釈宣言であって随時効力を有するものに服することを条件として、本法の適用上、効力を有する。

〔訳者注〕第1条(2)の規定に基づく附則(日本語訳は省略)には、これらの文書の実体条項が、英国政府の管轄に属する一部の規定を除いてそのまま掲載されている。掲載されていないのは次の規定である。
【条約】10条1項(家族再統合のための出入国)/11条2項(国外不法移送・不返還の防止のための国際協定等)/33条3項(18歳に満たない者の軍隊への徴募)
【第1選択議定書】1~3条(18歳未満の者による敵対行為への直接参加の禁止;18歳未満の者の義務的徴募の禁止;自発的入隊に関する最低年齢の引上げおよび保障
【第2選択議定書】5条(犯罪人の引渡し)/10条1~3項(国際協力)

2 UNCRC上の要件における締約国への言及および関連表現の意味
(1) UNCRC上の要件における単数または複数の締約国への言及および関連表現は、本法の適用上、(2)および(3)に掲げるように解釈される。
(2) (3)の規定が適用される場合を除き――
 (a) 単数の締約国への言及は、公的機関への言及を含むものとして解釈される。
 (b) 複数の締約国への言及は、公的機関への言及を含むものとして解釈される。
(3) 次の表の第1列に掲げられたUNCRC上の要件の条文において、単数または複数の締約国への言及または(場合により)関連表現は、表の第2列に掲げられているように読み替える。

〔表〕UNCRC上の要件/修正
〈条約第2条〉
 第1項において、「その管轄」への言及は「スコットランド」と読み替える。
 「締約国」への言及は、「スコットランドのいずれかの公的機関またはスコットランドの公務(スコットランドの公的機関であって複数の公務を有する機関または特定の公務を指定されていない機関の理事会への行政外役職者の任命に関連する公務を除く)を遂行する越境公的機関」と読み替える。
〈条約第7条〉
 第2項において、「自国の義務」への言及は「英国の義務」への言及と読み替える。
〈条約第22条〉
 第1項において、「自国が締約国となっている」への言及は「英国が締約国となっている」と読み替える。
〈条約第27条〉
 第4項において、「締約国」への言及は「スコットランド」と読み替える。
〈条約第38条〉
 第1項において、「自国」への言及は「英国」への言及と読み替える。
 第4項において、「自国の」への言及は「英国の」への言及と読み替える。
〈第1選択議定書第6条〉
 第1項において、「その管轄内」への言及は「スコットランド」と読み替える。
 第3項において、「その管轄内」への言及は「スコットランド」と読み替える。
〈第2選択議定書第4条〉
 第1項、第2項および第3項において、「自国の領域」への言及は「スコットランド」と読み替える。

(4) 上の表に掲げた条約第2条関連の修正における用語の意味は次のとおりである。
 「越境公的機関」(cross-border public authority)は、1998年スコットランド法第88条(5)に掲げられた意味を有する。
 「行政外役職者」(non-executive post)および「スコットランドの公務」(Scottish functions)は、同法附則5の第2部第L.2条(機会均等)に掲げられた意味を有する。
 「スコットランドの……公的機関」(Scottish public authority)は、同法第126条(1)に掲げられた意味を有する。
 「スコットランドの公的機関であって複数の公務を有する機関または特定の公務を指定されていない機関」(Scottish public authorities with mixed functions or no reserved functions)は、同法附則5の第3部第1項および第2項に掲げられた意味を有する。

3 附則の改定権限
(1) スコットランド諸大臣は、次の目的のため、規則により、適切と考える形で附則を改定することができる。
 (a) 条約の選択議定書を考慮すること。
 (b) 条約または条約の選択議定書の改正を考慮すること。
 (c) 条約、第1選択議定書または第2選択議定書の規定であってさしあたり附則に掲げられていない規定を追加すること。
(2) (1)(a)の規定に基づく規則は、当該議定書を英国が批准している場合に限って定めることができる。
(3) (1)(b)の規定に基づく規則は、当該改正が英国を拘束する場合に限って定めることができる。
(4) (1)(a)または(b)の規定に基づくいかなる規則も、当該議定書または改正が英国との関連で効力を生ずる前に施行されるように定めることはできない。
(5) (1)の規定に基づく規則により、第1条、第4条、第12条および第35条に対し、スコットランド諸大臣が適切と考える派生的改定を行なうことができる。
(5A) スコットランド諸大臣は、(1)の規定に基づく規則を掲げたスコットランド法上の委任立法の草案をスコットランド議会に提出する前に、次の者と協議しなければならない。
 (a) スコットランド子ども・若者コミッショナー。
 (b) スコットランド人権委員会。
 (c) 適当と考えるその他の者。
(6) (1)の規定に基づく規則は、確認的手続に服する。

UNCRC上の要件の解釈
4  UNCRC上の要件の解釈
(1) 裁判所または審判所は、手続において生じたUNCRC上の要件関連の問題について判断するにあたり、当該手続におけるUNCRC上の要件の解釈に関連するかぎりにおいて、(2)に定める事項を考慮に入れることができる。
(2) これらの事項とは次のものをいう。
 (a) 条約の第1部、第1選択議定書および第2選択議定書の規定であってさしあたり附則に掲げられていない規定。
 (b) 条約、第1選択議定書および第2選択議定書の前文。
 (c) 一般的意見(作成されている場合)。
 (d) 総括所見(作成されている場合)。
 (e) 第3選択議定書に基づく見解および認定事実(採択されている場合)。
 (f) 一般的勧告日を受けた勧告(作成されている場合)。
 (g) その他の国際法および比較法。
(3) (2)における用語の意味は次のとおりである。
 「総括所見」(concluding observations)とは、条約第45条(d)に基づいて国連・子どもの権利委員会が行なう提案および一般的勧告をいう。
 「一般的意見」(General Comments)とは、国連・子どもの権利委員会がその手続規則の規則77に基づいて作成する意見をいう。
 「一般的勧告日を受けた勧告」(recommendations following days of general discussion)とは、国連・子どもの権利委員会が、その手続規則の規則79に基づいて開催する一般的討議日を受けて行なう勧告をいう。
 「第3選択議定書に基づく見解および認定事実」(views and findings under the third optional protocol)とは、次のものをいう。
  (a) 第3選択議定書第10条第5項に基づいて国連・子どもの権利委員会が採択する見解。
  (b) 第3選択議定書第13条第4項に基づいて国連・子どもの権利委員会が採択する認定事実、意見および勧告。
(4) 本条および第5条において、「第3選択議定書」(the third optional protocol)とは、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書をいう。

5 条約の第3選択議定書の批准にともなう第4条の改定義務
(1) 英国が第3選択議定書を批准した場合、スコットランド諸大臣は、第3選択議定書を考慮するため、規則により、適切と考える形で第4条を改定しなければならない。
(2) (1)の規定に基づいて規則により行なういかなる改定も、第3選択議定書が英国との関連で効力を生ずる前に施行されるように行なうことはできない。
(3) (1)の規定に基づく規則は、否認的手続に服する。

第2部 公的機関の義務

公的機関の行為とUNCRC上の要件との両立
6 公的機関の行為とUNCRC上の要件との両立
(1) 公的機関がUNCRC上の要件と両立しない形で行為することは、違法である。
(2) (1)の規定において、「行為」には不作為を含む。
(3) 本条において、「公的機関」(public authority)は――
 (a) とくに次の機関を含む。
  (i) スコットランド諸大臣。
  (ii) 裁判所または審判所。
  (iii) その職務の一部が公的性質の職務であるすべての者(ただし(4)を参照)。
 (b) スコットランド議会、またはスコットランド議会における手続に関連した職務を遂行する者を含まない。
(3A) (3)(a)(iii)の規定の適用上、「公的性質の職務」(functions of a public nature)には、とくに、公的機関との契約その他の取決めに基づいて遂行される職務を含む。
(3B) (3)(a)(iii)の規定の適用上、職務が、公的資金を得ていないという理由のみで公的性質の職務から除外されることはない。
(4) 特定の行為に関連して、ある者は、当該行為が私的な性質のものである場合には、(3)(a)(iii)の規定のみによっては公的機関とされない。

違法行為の救済
7 違法行為に関する手続
(1) 公的機関が第6条(1)の規定により違法とされるやり方で行為した(または行為しようとしている)と主張する者は、次のいずれかの対応をとることができる。
 (a) 請求された救済を付与する管轄権がある民事裁判所または審判所において、当該機関を相手どって手続を提起すること。
 (b) いずれかの法的手続において、関係するUNCRC上の要件に依拠すること。
(2) (1)(a)の規定において、公的機関を相手どった手続には、反訴または類似の手続を含む。
(3) (1)(b)の規定において、「法的手続」には次のものを含む。
 (a) 公的機関によってまたは公的機関の指示によって提起される手続。
 (b) 裁判所または審判所の決定に対する上訴。
(4) (1)の規定は、本条の施行前に行なわれた行為には適用されない。ただし同項(b)の規定は、公的機関によってまたは公的機関の指示によって提起される手続に対しては、行為が行なわれた時期にかかわらず、適用される。
(5) スコットランド諸大臣は、公的機関が行なった(または行なおうとしている)行為であって第6条(1)の規定を適用した結果違法とされる(またはされるであろう)ものとの関連で、特定の審判所が適切な救済を付与できることを確保するために必要と考えるときは、次のいずれかに追加を行なうための規則を提案しなければならない。
 (a) 審判所が付与することのできる救済。
 (b) 審判所がいずれかの救済を付与する理由。
 (c) 審判所が言い渡すことのできる命令。
(5ZA) (5)の規定において、「規則を提案する」(bring forward regulations)とは、スコットランド諸大臣が必要と考える規定を定めるための規則を記載したスコットランド法上の委任立法の草案をスコットランド議会に提出することをいう。
(5A) スコットランド諸大臣は、(5)の規定に基づく規則を記載したスコットランド法上の委任立法の草案をスコットランド議会に提出する前に、次の者と協議しなければならない。
 (a) スコットランド子ども・若者コミッショナー。
 (b) スコットランド人権委員会。
 (c) 適当と考えるその他の者。
(6) (5)の規定に基づく規則は、確認的手続に服する。
(7) (1)(a)の規定に基づく手続は、申立ての対象である行為が行なわれた日から1年の期間が終了するまでに提起されなければならない。
(8) ただし、(7)の規定は、いずれかの手続に関連する規則であって、当該手続との関係でより厳しい期限を定めるすべての規則に服する。
(9) (7)の規定にいう1年の期間の算定にあたっては、自らまたは代理人を通じて手続を提起する者が18歳未満であった期間をすべて除外する。
(10) ある者が、(7)の規定が適用されなければ(1)(a)の規定に基づく手続を提起する資格を有している場合、裁判所または審判所は、(7)の規定にかかわらず当該者に手続の提起を認めることが衡平法上妥当であると考えるときは、提起を認めることができる。
(11) 1988年最高民事裁判所法第27A条(期限)において、(1)の後に次の規定を加える。

「(1A) 裁判所の監督管轄権の行使を求める申立てが2021年国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法第7条(1)(a)の規定に基づく手続に関するものであるかぎりにおいて、(1)(a)の規定にいう3か月の期間の算定にあたっては、自らまたは代理人を通じて手続を提起する者が18歳未満であった期間をすべて除外する。」

8 司法的救済
(1) 裁判所または審判所は、公的機関が行なった(または行なおうとしている)行為であって第6条(1)の規定を適用した結果違法とされる(またはされるであろう)と認定したものとの関連で、その権限の範囲で、有効、公正かつ適切と考える救済を付与しまたはそのような命令を言い渡すことができる。
(2) ただし、公的機関の違法行為を理由とする損害賠償は、裁判所または審判所が民事手続における損害賠償命令権限を有している場合でなければ、命じることができない。
(3) 裁判所または審判所は、――
 (a) 損害賠償を命じることの可否、または
 (b) 損害賠償を命じる場合にはその額
――について検討するにあたり、損害賠償を命じることおよび(命じる場合には)損害賠償の額が、損害賠償の受領者に正当な満足を与えるために必要であるか否かを考慮しなければならない。
(4) 損害賠償の支払いを命じられた公的機関は、1940年法改正(雑則)(スコットランド)法第3条の適用上、当該命令が、損害賠償の受領者に対する損失または損害との関連で当該公的機関の責任が認められた損害賠償請求手続において言い渡された場合と同様に、扱われる。
(5) スコットランド子ども・若者コミッショナーまたはスコットランド人権委員会が提起しまたは介入した手続において、同コミッショナーまたはスコットランド人権委員会を受領者とする損害賠償命令は言い渡されない。

8A 救済等の有効性に関する子どもの意見
(1) 裁判所または審判所は、第8条(1)の規定に基づいてどのような救済を付与しまたはどのような命令を言い渡すかについて検討する場合――
 (a) 実行可能なかぎり、当該手続に関連する子どもに対し、次のいずれかの方法で、当該救済または(状況に応じて)命令の有効性に関する意見を表明する機会を与えなければならない。
  (i) 当該子どもが希望する方法。
  (ii) 子どもが希望を明らかにしないときもしくは子どもの希望を受け入れることが状況に照らして合理的でないときは、当該子どもにふさわしい方法。
 (b) 当該子どもが表明したすべての意見を、その年齢および成熟度を考慮に入れながら顧慮しなければならない。
(2) ただし、裁判所または審判所は、当該子どもに意見を形成する能力がないと確信する場合、(1)の規定の遵守を要求されない。
(3) 子どもは、反証がないかぎり、意見を形成する能力があると推定される。

9 裁判上の行為に関する手続への制限
(1) 裁判上の行為に関する第7条(1)(a)上の手続は、次のいずれかに該当する場合でなければ提起できない。
 (a) 上訴権の行使による場合。
 (b) 最高民事裁判所の監督管轄権の行使を求める申立てによる場合。
 (c) 最高民事裁判所において、(a)または(b)に基づいて裁判上の行為に関する手続を提起できない場合。
(2) (1)の規定は、裁判所または審判所が最高民事裁判所の監督管轄権に服することを妨げるいかなる法令または法原則にも影響を与えるものではない。
(3) 本法に基づく手続において、信義誠実の原則に基づいて行なわれた裁判上の行為について損害賠償を命じることはできない。
(4) 本条において、「裁判上の行為」(judicial act)とは、裁判所または審判所が行なう裁判上の行為を意味し、かつ、裁判官または審判官の指示によってまたは裁判官または審判官に代わって行なわれた行為を含む。

手続を提起しまたは手続に介入するコミッショナーの権限
10 手続を提起しまたは手続に介入するコミッショナーの権限
(1) 2003年子ども・若者コミッショナー(スコットランド)法を次のとおり改正する。
(2) 第4条(権利の促進および保護)において、(2)の後に次の規定を挿入する。

「(2A) コミッショナーは、当該一般的職務を履行するにあたり、次のことを行なうことができる。
 (a) 2021年国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法第7条(1)(a)の規定に基づく手続を提起すること。
 (b) いずれかの者が、公的機関が同法第6条(1)の規定によって違法とされるやり方で行為している(または行為しようとしている)と主張する手続に介入すること。」

手続を提起しまたは手続に介入するスコットランド人権委員会の権限
10A 手続を提起しまたは手続に介入するスコットランド人権委員会の権限
(1) 2006年スコットランド人権委員会法を次のとおり改正する。
(2) 第4条の後に次の規定を挿入する。

「第4条A 2021年国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法に基づく手続
 委員会は、その一般的職務の履行にあたり、次のことを行なうことができる。
 (a) 2021年国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法第7条(1)(a)の規定に基づく手続を提起すること。
 (b) いずれかの者が、公的機関が同法第6条(1)の規定によって違法とされるやり方で行為している(または行為しようとしている)と主張する手続に介入すること。」
(3) 第6条(請求または法的手続を援助する権限が認められない場合)において、(2)の後に次の規定を挿入する。
「(2A) (1)および(2)の規定は、第4A条に基づいて委員会が提起しまたは介入する手続には適用されない。」

第2部に関する指針
10B 第2部に関する指針
(1) スコットランド諸大臣は、第2部の実施および運用を支援するための指針を発出しなければならない。
(2) 指針においては、とくに次のことをすることが考えられる。
 (a) 第2部に関する理解を促進すること。
 (b) 第2部の実施および運用との関連で、子どもの権利を尊重する実務を促進すること。
 (c) 第2部の実施および運用により、子どもの権利のよりよいまたはさらなる実施をどのように確保できるかについての情報を記載すること。
 (d) 第2部の実施および運用における協働に関して公的機関等を支援するための情報を記載すること。
(3) (1)の規定に基づく指針を発出する前に、スコットランド諸大臣は次の者と協議しなければならない。
 (a) 子ども。
 (b) スコットランド子ども・若者コミッショナー。
 (c) スコットランド人権委員会。
 (d) スコットランド諸大臣が適切と考えるその他の者。
(4) スコットランド諸大臣は、(1)の規定に基づく指針の発出後、実行可能なかぎり早期に、適切と考える方法で指針を公表しなければならない。
(5) スコットランド諸大臣は、(1)の規定に基づいて発出された指針を随時再検討しなければならず、かつ当該指針を改定することができる。
(6) (2)~(5)における指針への言及は、改定された指針への言及を含む。

第3部 子どもの権利計画、子どもの権利・ウェルビーイング影響評価および報告義務

子どもの権利計画
11 子どもの権利計画
(1) スコットランド諸大臣は、次のことを目的として設けられている対応策またはスコットランド諸大臣が設ける予定の対応策を掲げた計画を作成しなければならない。
 (a) スコットランド諸大臣による、第6条(1)の規定に基づく義務の遵守を確保すること。
 (b) 子どもの権利のよりよいまたはさらなる実施を確保すること。
(2) (1)の規定に基づく計画は、「子どもの権利計画」(Children’s Rights Scheme)と称する(かつ、本法では「計画」という)。
(3) 計画には、とくに、スコットランド諸大臣が次のことをするための対応策が含まれなければならない。
 (a) 子どもが、参加のために必要な支援および代弁(たとえば子どもアドボカシーサービスによるもの)にアクセスしながら、自分たちに影響を与える決定に参加できることを確保すること。
 (aa) 子どもの権利が充足されていない(または充足されない相当のおそれがある)すべての状況を特定し、かつこれに対処すること。
 (b) 子どもの権利に関する意識を高め、かつ子どもの権利を促進すること。
 (ba) 子どもが理解しかつ活用することのできる苦情処理手続を促進すること。
 (bb) 子どもが司法に効果的にアクセスできることを確保すること。
 (bc) 子どもに影響を与えるサービスを提供している者(公的機関を除く)とのやりとりとの関連で子どもの権利を保護すること。
 (c) スコットランド政府の予算策定プロセスにおいて子どもの権利を考慮すること。
 (d) 自己の行為が、2015年コミュニティ・エンパワーメント(スコットランド)法第1部に基づいて定めた子どもに関する国家的成果目標に貢献することを確保すること。
 (e) 子どもの権利・ウェルビーイング影響評価を作成しかつ公表すること(第14条参照)。
 (f) 子どもが(話し方、言語等との関連で)自己のニーズをもっともよく満たせるような方法で情報を受けかつ自己を表現することができることの確保につながる、インクルーシブなコミュニケーション方法を使用し、かつそのような方法の使用を促進すること。
(4) 本条に基づいて作成される最初の計画は、次の内容を備えていなければならない。
 (a) 第13条に基づいてその運用に関する最初の報告書が発行されかつスコットランド議会に提出される期日が定められていること。
 (b) 計画の作成日に始まり、その運用に関する最初の報告書が発行される日をもって終了する期間中にスコットランド諸大臣が計画に関してとる予定の措置が記載されていること。
(5) スコットランド諸大臣はいつでも、計画を改定し、またはそれに代わる新たな計画を作成することができる(本法における計画への言及には、改定された計画または現行計画に代わる新たな計画を含む)。
(6) 第12条において、計画の作成、改定または再作成に関してスコットランド諸大臣がしたがわなければならない手続を掲げる。
(7) 第3部において、「子ども」(children)とは18歳未満の者をいう。

12 計画の作成、改定または再作成に関する手続
(1) 本条において、提案への言及は、(状況に応じて)次のいずれかの提案への言及を意味する。
 (a) 第11条(1)に基づく最初の報告書を作成する旨の提案。
 (b) 計画を改定する旨の提案。
 (c) 現行計画に代えて新たな計画を作成する旨の提案。
(2) 提案の作成にあたり、スコットランド諸大臣は――
 (a) 次のことを顧慮しなければならない。
  (i) 条約第44条第5項に基づく国連・子どもの権利委員会の報告であって、関連性を有するとスコットランド諸大臣が考えるすべてのもの。
  (ii) 英国による条約、第1選択議定書または第2選択議定書の実施に関連して国連・子どもの権利委員会が発出する他の報告書、提案、一般的な勧告その他の文書であって、関連性を有するとスコットランド諸大臣が考えるすべてのもの。
 (aa) 関連性を有すると考える他のすべての国際法または比較法を顧慮することができる。
 (b) 関連性を有すると考える他のすべての文書または事柄を顧慮することができる。
(3) スコットランド諸大臣は、提案を公表し、かつ次の者と協議しなければならない。
 (a) 子ども。
 (b) スコットランド子ども・若者コミッショナー。
 (ba) スコットランド人権委員会。
 (c) スコットランド諸大臣が適切と考えるその他の者。
(4) スコットランド諸大臣は、(3)の規定に基づく協議の後、適切と考える形で提案を修正することができる。
(5) スコットランド諸大臣は、提案がスコットランド議会に提出されるまで、次のことを行なうことはできない。
 (a) 計画を作成すること。
 (b) 計画を改定すること。
 (c) 現行計画に代えて新たな計画を作成すること。
(6) (5)の規定に基づくスコットランド議会への提案の提出は、(3)の規定に基づいて提案が公表された日から28日以上の期間を経た後でなければ、行なうことができない。
(7) スコットランド諸大臣は、計画、改定された計画または(状況に応じて)新たに作成された計画を、適切と考える方法で公表しなければならない。
(8) 本条に基づく最初の計画の作成または当該計画に関連する協議のために行なわれるいかなる行為も、次のいずれかの場合には無効とされる。
 (a) 本法案が可決される前に行なわれたとき。
 (b) 本法案の可決後ではあるが本条の施行前に行なわれたとき。

13 計画の検証および計画に関する報告
(1) スコットランド諸大臣は、各報告対象期間の終了後、実行可能なかぎり早期に次のことをしなければならない。
 (a) 計画およびその運用を検証すること。
 (b) その知見の報告書を公表すること。
(2) 計画を検証するにあたり、スコットランド諸大臣は――
 (a) 報告対象期間中に次のことがあった場合、これを考慮に入れなければならない。
  (i) 条約第44条第1項(b)に基づいて英国が提出した報告書を踏まえて条約第45条(d)に基づき行なわれた、委員会による提案または一般的な勧告。
  (ii) 条約または条約の選択議定書の改正の発効。
  (iii) 委員会による一般的意見の作成。
  (iiia) 委員会による、第3選択議定書に基づく見解および認定結果の採択。
  (iiib) 委員会による、一般的討議日を受けた勧告。
  (iv) 英国による条約の議定書の批准。
  (v) 裁判所による無効宣言または非両立性宣言。
 (b) 関連性を有すると考えるすべての国際法または比較法を考慮に入れることができる。
 (c) 関連性を有すると考える他のすべての文書または事柄を考慮に入れることができる。
(3) (1)の規定に基づく報告書には、次のものが含まれていなければならない。
 (a) 次の目的のためにスコットランド諸大臣がとった対応の概要。
  (i) 報告対象期間中に第6条(1)に基づく義務の遵守を確保すること。
  (ii) 子どもの権利のよりよいまたはさらなる実施を確保すること。
 (b) 検証の知見に照らし、計画を改定しまたはそれに代わる新たな計画を作成する意図があるか否かの声明。
 (c) 次の報告対象期間中にとることを意図している対応の概要。
(4) (1)の規定に基づく報告書には、計画の運用または子どもの権利一般のいずれに関連するものであるかにかかわらず、スコットランド諸大臣が適切と考えるその他の資料を含めることができる。
(5) スコットランド諸大臣は、本条に基づく報告書を公表する前に、(3)(c)にしたがってとる予定の対応との関連で、次の者と協議しなければならない。
 (a) 子ども。
 (b) スコットランド子ども・若者コミッショナー。
 (ba) スコットランド人権委員会。
 (c) スコットランド諸大臣が適切と考えるその他の者。
(6) 本条に基づいて公表される各報告書は――
 (a) 子どもが理解できる版の報告書をともなうものでなければならない。
 (b) スコットランド諸大臣が適切と考える方法で公表されなければならない。
 (c) 公表後、実行可能なかぎり早期にスコットランド議会に提出されなければならない。
(7) 本条における用語の意味は次のとおりである。
 「一般的意見」(General Comment)とは、委員会がその手続規則の規則77に基づいて作成する意見をいう。
 「一般的討議日を受けた勧告」(recommendations following days of general discussion)とは、委員会の手続規則の規則79に基づく一般的討議日を受けて委員会が作成する勧告をいう。
 「報告対象期間」(reporting period)とは次の期間をいう。
  (a) 計画の作成日に始まり、報告を行なうべき日として計画で定められた日をもって終了する期間(第11条(4)参照)。
  (b) その後は1年ごとの期間。
 「委員会」(the Committee)とは、国連・子どもの権利委員会をいう。
 「第3選択議定書に基づく見解および認定結果」(views and findings under the third optional protocol)とは、次のものをいう。
  (a) 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書第10条第5項に基づいて委員会が採択する見解。
  (b) 当該議定書第13条第4項に基づいて委員会が採択する認定結果、意見および勧告。

子どもの権利・ウェルビーイング影響評価
14 子どもの権利・ウェルビーイング影響評価
(1) 子どもの権利・ウェルビーイング影響評価(child rights and wellbeing impact assessment)とは、子どもの権利およびウェルビーイングに関する法律上の規定によってまたは子どもの権利およびウェルビーイングに関連する戦略的性質の決定によって影響が生じる可能性のある場合に行なわれる、当該影響の評価をいう。
(2) スコットランド諸大臣は、次の法律上の規定との関連で、子どもの権利・ウェルビーイング影響評価を作成しかつ公表しなければならない。
 (a) スコットランド諸大臣がスコットランド議会に提出しようとするスコットランド議会制定法の法案。
 (b) スコットランド諸大臣が定めるスコットランド法上の委任立法であって、スコットランド議会制定法または英国議会制定法の規定に効力を生じさせる立法以外のもの。
(3) スコットランド諸大臣は、計画に掲げられた対応策で求められている場合に、これらの対応策にしたがい、子どもの権利およびウェルビーイングに関連する戦略的性質の決定との関係で、子どもの権利・ウェルビーイング影響評価を作成しかつ公表しなければならない。
(3A) (3)の規定の一般性を損なうことなく、スコットランド諸大臣は、次のものとの関係で、子どもの権利・ウェルビーイング影響評価を作成しかつ公表しなければならない。
 (a) 学校での子どもの教育の対面による実施をコロナウイルスに関連する理由で制限する旨の、スコットランド諸大臣によるすべての決定。
 (b) 決定の理由にかかわらず、教育当局の管理下にある学校での子どもの教育の対面による実施を一時的に停止しまたは制限する旨の決定を行なう際に教育当局によって適用されるべき、スコットランド諸大臣のすべての戦略、政策または基準。
(3B) 本条における用語の意味は次のとおりである。
 「コロナウイルス」(coronavirus)とは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス‐2(SARS-CoV-2)をいう。
 教育の「対面による実施」(delivery in person)への言及は、子どもが通常通っている学校への子どもの通学を指す。
 「学校」(school)とは、1980年教育(スコットランド)法第135条(1)にいう学校をいう。

指定当局の報告義務
15 指定当局の報告義務
(1) 指定当局は、各報告対象期間の終了後、実行可能なかぎり早期に、次のことに関する報告書を公表しなければならない。
 (a) 次の目的のために当該期間中にとった行動。
  (i) 第6条(1)に基づく義務の遵守を確保すること。
  (ii) 子どもの権利のよりよいまたはさらなる実施を確保すること。
 (b) 次の目的のために次期報告対象期間中にとることを意図している行動。
  (i) 第6条(1)に基づく義務の遵守を確保すること。
  (ii) 子どもの権利のよりよいまたはさらなる実施を確保すること。
(2) 2以上の指定当局は、合同で作成した報告書を公表することにより、(1)の義務を満たすことができる。
(3) 本条に基づく報告書は、当該指定当局が適切と考える方法で公表されなければならない。
(3A) 本条に基づいて公表される報告書は、子どもが理解できる版の報告書をともなうものでなければならない。
(3B) 指定当局(または、2以上の指定当局が合同で報告書を作成した場合にはそのいずれか)は、本条に基づく報告書の公表後、実行可能なかぎり早期に、当該報告書の写しをスコットランド諸大臣に送付しなければならない。
(4) 本条における用語の意味は次のとおりである。
 「指定当局」(listed authority)とは、第16条に掲げる当局をいう。
 「報告対象期間」(reporting period)とは、次の期間をいう。
  (a) 本条が施行された日から2023年3月31日までの期間。
  (b) その後は3年ごとの期間。

16 指定当局
(1) 第15条(1)の適用上、指定当局とは次の機関をいう。
 (a) 地方当局。
 (b) スコットランド子ども審判所(Children’s Hearings Scotland)。
 (c) スコットランド子ども調査官機構(Scottish Children’s Reporter Administration)。
 (d) 1978年国民保健サービス(スコットランド)法第2条(1)(a)に基づいて設置される保健委員会。
 (e) 1978年国民保健サービス(スコットランド)法第2条(1)(b)に基づいて設置される特別保健委員会。
 (f) スコットランド保健ケア改善機構(Healthcare Improvement Scotland)。
 (g) スコットランド資格局(Scottish Qualifications Authority)。
 (h) スコットランド技能開発株式会社(Skills Development Scotland Co. Limited)(登録番号SC202659)。
 (i) スコットランド社会的ケア・ソーシャルワーク改善機構(Social Care and Social Work Improvement Scotland)。
 (j) スコットランド社会サービス評議会(Scottish Social Services Council)。
 (k) スコットランド・スポーツ評議会(Scottish Sports Council)。
 (l) スコットランド警察本部長。
 (m) スコットランド警察管理局(Scottish Police Authority)。
 (n) スコットランド消防救助隊(Scottish Fire and Rescue Service)。
 (o) スコットランド法律扶助委員会(Scottish Legal Aid Board)。
 (oa) スコットランド裁判所・審判所(Scottish Courts and Tribunals Service)。
 (p) スコットランド精神福祉委員会(Mental Welfare Commission for Scotland)。
 (q) スコットランド住宅規制局(Scottish Housing Regulator)。
 (r) ゲール語委員会(Bòrd na Gàidhlig)。
 (s) クリエイティブ・スコットランド〔訳者注/旧芸術評議会〕。
 (t) 2014年公的機関(合同業務)(スコットランド)法第1条または第2条に基づいて作成された統合計画により、18歳未満の者に関する職務を委任された統合合同委員会。
 (u) ILFスコットランド〔訳者注/スコットランド自立生活基金〕。
(2) スコットランド諸大臣は、規則により、次のいずれかの手段によって(1)の規定を修正することができる。
 (a) いずれかの公的機関またはまたはいずれかの類型の複数の公的機関を指定当局として追加すること。
 (b) いずれかの指定当局を削除すること。
 (c) 指定当局の登録を改定すること。
(3) (2)に基づく規則は、確認的手続に服する。
(4) スコットランド諸大臣は、(2)(a)または(b)の規定に基づく規則を掲げたスコットランド法上の委任立法の草案をスコットランド議会に提出する前に、次の者と協議しなければならない。
 (a) 当該公的機関または(該当する場合には)当該類型の公的機関に該当する複数の公的機関。
 (b) 適当と考えるその他の者。

16A 第15条に関する指針
(1) スコットランド諸大臣は、第15条に基づく指定当局の職務の遂行に関する指針を発出しなければならない。
(2) (1)の規定に基づく指針を発出する前に、スコットランド諸大臣は次の者と協議しなければならない。
 (a) 子ども。
 (b) スコットランド子ども・若者コミッショナー。
 (c) スコットランド人権委員会。
 (d) スコットランド諸大臣が適切と考えるその他の者。
(3) スコットランド諸大臣は、(1)の規定に基づく指針の発出後、実行可能なかぎり早期に、適切と考える方法で指針を公表しなければならない。
(4) スコットランド諸大臣は、(1)の規定に基づいて発出された指針を随時再検討しなければならず、かつ当該指針を改定することができる。
(5) (2)~(4)における指針への言及は、改定された指針への言及を含む。

スコットランド議会の報告義務
16B スコットランド議会の報告義務
(1) スコットランド議会法人は、(2)に掲げる事項についての報告書を公表しなければならない。
(2) 当該事項とは次のとおりである。
 (a) 報告書で対象とされる期間中に、子どもの権利のよりよいまたはさらなる実施を確保するために議会およびその委員会がとった行動。
 (b) 次期期間中に、子どもの権利のよりよいまたはさらなる実施を確保するために議会およびその委員会がとることを意図している行動。
(3) 本条に基づく最初の報告書は、本条が施行された日から12か月以内に公表するものとする。
(4) 本条に基づく第2回以降の報告書は、前回の報告書の公表後12か月以内に公表するものとする。
(5) 本条に基づく報告書は――
 (a) スコットランド議会法人が適切と考える方法で公表され、かつ、
 (b) 子どもが理解できる版の報告書をともなうものとする。

派生的改正
17 2014年子どもおよび若者(スコットランド)法の派生的改正
(1) 2014年子どもおよび若者(スコットランド)法を次のとおり改正する。
(2) 第1部(子どもの権利)および附則1を削除する。
(3) 第99条(2)(下位法)において、「第3条(2)」の語を削除する。

第4部 立法とUNCRC上の要件

18 立法に関する両立性声明
(1) 議会に公共関連法案(Public Bill)を提出するスコットランド議会議員は、法案の提出時または提出前に、当該議員の見解によれば法案の規定がどの程度UNCRC上の要件と両立しているかについて、書面で声明しなければならない。
(2) スコットランド諸大臣は、諸大臣の見解によれば関連委任立法がどの程度UNCRC上の要件と両立しておりまたは(該当する場合には)両立することになるかについて、書面で声明しなければならない。
(3) (2)にいう「関連委任立法」(relevant instrument)とは、スコットランド諸大臣が定めるスコットランド法上の委任立法であって、スコットランド議会制定法または英国議会制定法の規定に効力を生じさせる立法以外のものをいう。

19 立法の解釈
(1) (2)に掲げる立法は、可能なかぎり、UNCRC上の要件と両立する方法で解釈されかつ実施されなければならない。
(2) 当該立法は、スコットランド議会の立法権限内にある法令(制定時期を問わない)であって、次のいずれかの条件を満たすものをいう。
 (a) 次のいずれかであるもの。
  (i) スコットランド議会制定法。
  (ii) 英国議会制定法。
 (b) 全体または一部が(a)に掲げた法令によって定められたもの。
(3) (2)の規定の適用上、スコットランドおよび他の法域にも適用される法令は、それだけを理由としてスコットランド議会の立法権限外にあるとはみなされない。
(4) (1)の規定は、次のことには影響しない。
 (a) いずれかのスコットランド議会制定法または英国議会制定法が両立性を欠く場合の、当該制定法の有効性、継続的運用または執行。
 (b) (2)(a)に掲げた法令(「一次立法」)によって定められた(2)(b)にいういずれかの法令が両立性を欠き、かつ当該一次立法によって非両立性の除去が妨げられる場合(取消しのいかなる可能性も顧慮しないものとする)の、当該法令の有効性、継続的運用または執行。

20 無効宣言
(1) (2)の規定は、関連法の規定がUNCRC上の要件と両立するか否かを裁判所が判断するいかなる手続にも適用される。
(2) 裁判所は、当該規定がUNCRC上の要件と両立しないと認めたときは、当該規定がその非両立性の限度で法律としての効力を失う旨の宣言(「無効宣言」)を行なうことができる。
(3) 両立性を欠く関連法の規定が(10)(a)に掲げた法令(「一次立法」)によって定められた(10)(b)にいう法令(「下位立法」)である場合、裁判所は、当該一次立法によって非両立性の除去が妨げられること(取消しのいかなる可能性も顧慮しないものとする)を認めた場合にかぎり、当該下位立法との関連で無効宣言を行なうことができる。
(4) 無効宣言は、宣言の日以降にかぎって効力を有するものとし、当該規定に基づいて従前になされたいかなる行為にも影響しない。
(5) 裁判所は、非両立性の是正を可能とするため、期間および条件を自由に定めて無効宣言の効力停止を命令することができる。
(6) 裁判所は、(5)の規定に基づく命令を発出するにあたり、(とくに)手続当事者以外の者にどの程度悪影響が生ずるかを顧慮しなければならない。
(7) 裁判所が(5)の規定に基づく命令を行なうか否か検討する際には、法務長官(Lord Advocate)にその旨を通知するものとする(ただし、法務長官が手続当事者であるときは、このかぎりでない)。
(8) 法務長官は、通知があった後、手続が命令の発出に関連するかぎりにおいて当該手続に当事者として参加することができる。
(9) (1)の規定にいう判断がUNCRCとの両立性問題に関連する最高裁判所による決定であるときは、(5)の規定に基づく命令を発出する権限は、最高裁判所ではなく最高法院によって行使されるものとする。
(10) 本条において、「関連法」(“relevant legislation)とは、スコットランド議会の立法権限内にある法令であって、次のいずれかの条件を満たすものをいう。
 (a) 次のいずれかであるもの。
  (i) スコットランド議会制定法であって、その法案について本条の施行日前に国王による裁可を得たもの。
  (ii) 英国議会制定法であって、その法案について本条の施行日前に国王による裁可を得たもの。
 (b) 全体または一部が(a)に掲げた法令によって定められたもの(定められた時期は問わない)。
(11) (10)の規定の適用上、スコットランドおよび他の法域にも適用される法令は、それだけを理由としてスコットランド議会の立法権限外にあるとはみなされない。
(12) (10)(a)(i)および(ii)において、スコットランド議会制定法または(該当する場合)英国議会制定法への言及は、本条の施行日に成立しているスコットランド議会制定法または(該当する場合)英国議会制定法を指すものとする。
(13) 本条および第21条において、「裁判所」(court)とは次のものをいう。
 (a) 最高裁判所。
 (b) 最高法院(第1審裁判所として開廷する場合を除く)。
 (c) 最高民事裁判所。

21 非両立宣言
(1) (2)の規定は、将来の法律の規定がUNCRC上の要件と両立するか否かを裁判所が判断するいかなる手続にも適用される。
(2) 裁判所は、当該規定がUNCRC上の要件と両立しないと認めたときは、その非両立性を宣言すること(「非両立宣言」)ができる。
(3) 両立性を欠く将来の法律の規定が(5)(b)(i)または(ii)(10)(a)に掲げた法令(「下位立法」)によって定められる法令である場合、裁判所は、当該下位立法によって非両立性の除去が妨げられること(取消しのいかなる可能性も顧慮しないものとする)を認めた場合にかぎり、当該下位立法との関連で非両立宣言を行なうことができる。
(4) 非両立宣言は――
 (a) 宣言の対象である規定の有効性、継続的運用または執行に影響せず、かつ、
 (b) 宣言が行われた手続の当事者を拘束しない。
(5) 本条において、本条において、「将来の法律」(“future legislation)とは、スコットランド議会の立法権限内にある法令であって、次の条件を満たすものをいう。
 (a) スコットランド議会の立法権限内にあること。
 (b) 次の制定法であり、または全体もしくは一部が次の制定法によって定められること。
  (i) スコットランド議会制定法であって、その法案について本条の施行日以降に国王による裁可を得るもの。
  (ii) 英国議会制定法であって、その法案について本条の施行日以降に国王による裁可を得るもの。
(6) (5)(a)の規定の適用上、スコットランドおよび他の法域にも適用される法令は、それだけを理由としてスコットランド議会の立法権限外にあるとはみなされない。
(7) (5)(b)(i)および(ii)において、スコットランド議会制定法または(該当する場合)英国議会制定法への言及は、第20条(10)および(12)の規定によって関連法となっているスコットランド議会制定法または(該当する場合)英国議会制定法を修正するスコットランド議会制定法または(該当する場合)英国議会制定法に掲げられた規定を含むものとする。

22 無効宣言または非両立宣言が検討される手続への介入権限
(1) 無効宣言または非両立宣言を行なうか否かについて裁判所が検討するときは、法務長官、スコットランド子ども・若者コミッショナーおよびスコットランド人権委員会にその旨を通知するものとする(ただし、通知先が手続の当事者であるときはこのかぎりでない)。
(2) (1)の規定に基づく通知を受けた者は、通知があった後、手続が無効宣言または非両立宣言の可否に関連するかぎりにおいて当該手続に当事者として参加することができる。

23 無効宣言または非両立宣言後の大臣の対応
(1) 裁判所が無効宣言または非両立宣言を行なったときは、スコットランド諸大臣は、宣言が行なわれた日の翌日から6か月以内に、次のことをしなければならない。
 (a) 当該宣言への対応としてとることを意図している措置があれば、その措置を掲げた報告書を作成すること。
 (b) スコットランド諸大臣が適切と考える方法で当該報告書を公表すること。
 (c) 当該報告書の写しをスコットランド議会に提出すること。
 (d) 当該報告書の内容についてスコットランド議会で陳述を行なうよう努めること。
(2) (1)(b)の規定に基づいて公表される報告書は、子どもが理解できる版の報告書をともなうものでなければならない。


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