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日本政府、LGBT差別に関する国連人権専門家からの照会に回答

 国連人権理事会の委任を受けて活動している人権専門家が、日本政府に対し、性的指向やジェンダーアイデンティティに基づく差別からLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスおよびジェンダーダイバース)の人々を保護するための法律が存在しないことについて照会する共同書簡PDF、2021年8月23日付)を送付していたことについて、9月にFacebookで紹介しておきました。

 共同書簡を送付したのは次の3人の専門家です。

-性的指向およびジェンダーアイデンティティに基づく暴力および差別からの保護に関する独立専門家
-女性に対する暴力、その原因および結果に関する特別報告者
-女性および女児への差別に関する作業部会 部会長兼報告者

 共同書簡では、日本における最近の立法関連の動向、子どもの権利委員会を含む国連人権条約機関からの勧告などを参照しながら、日本政府の認識や取り組みを質しています。これに対する日本政府の回答(PDF)が10月22日付で出され、本日(11月9日)公表されました。

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 回答では、
「日本政府は、性的指向およびジェンダーアイデンティティを理由とする差別または偏見を容認不可能なものと考えています。日本政府は、多様性が尊重され、すべての人が人権を大切にし、おたがいを尊重し、活動的な生活を過ごす社会を実現するために、あらゆる努力を行なっていきます」
 と述べたうえで、文部科学省、厚生労働省、法務省人権擁護機関などの取り組みを紹介しています。

 ただし、性的指向やジェンダーアイデンティティに基づく差別からLGBTの人々を保護するための現行法の枠組みについては明確に回答せず、関連の国際人権条約についても「誠実に遵守しています」「性的指向およびジェンダーアイデンティティを理由とする差別に反対することは、日本が長年にわたってとっている立場です」と抽象的に述べるに留まっています。共同書簡では、LGBT理解増進法案(性的指向・性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案)をめぐる最新動向も踏まえて質問をしているのですから、このような回答では専門家を納得させることはできないでしょう。

 また、国際人権法にのっとった法改正(新法の制定を含む)に関する各人権条約機関の勧告への対応についても質問されていましたが、いっさい言及していません(人権条約機関等からの勧告については、たとえば谷口洋幸(金沢大学)〈グローバルにみた日本のLGBTと人権保障〉(PDF)の資料など参照)。

 人権条約機関からの一連の勧告も踏まえ、速やかに国連人権基準を踏まえた立法的対応をとることが必要です。

 なお、国連人権特別手続からの照会等については、こちらのページで「State/Entity」から Japan を選択すると参照することができます。

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