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メキシコ、法改正で親による体罰を全面禁止

 メキシコ議会(下院)は、2020年12月10日、親などによる子どもの体罰および屈辱的罰を禁止する法改正案を全会一致で可決しました。大統領の承認を受ければ正式に成立します。

★ News 957: Mexico's congress passes law to prohibit spanking kids
https://www.news957.com/world/2020/12/10/mexicos-congress-passes-law-to-prohibit-spanking-kids/

 上院ではすでに昨年(2019年)11月26日に法案が承認されていました。そのことをお知らせするFacebookの投稿で紹介しておいたとおり、これは「女児、男児および青少年の権利に関する一般法」(Ley General de los Derechos de Niñas, Niños y Adolescentes、2014年)を改正するものです(同時に民法も改正されたようです)。

 改正法の内容は、スペイン語ですが、次の記事で詳しく報じられています(Google翻訳で英語に翻訳して読みました)。

★ El Universal: Diputados prohíben los “chanclazos” y “nalgadas” como métodos correctivos contra menores(下院議員、未成年者に対する矯正措置としての「スリッパ叩き」や「お尻ぺんぺん」を禁止)
https://www.eluniversal.com.mx/nacion/nalgadas-padres-diputados-prohiben-castigo-corporal-contra-menores

 可決された法律によれば、父母または子どもの養育等に責任を負うその他の家族構成員は、子どもの矯正またはしつけの手段として体罰または屈辱的な罰を用いることが禁じられます。罰則は設けられていませんが、状況によって暴行罪・傷害罪等で処罰される場合もあるのは他の国々と変わりません。

 体罰は、子どもに対して行なわれる、有形力が用いられるすべての行為として定義されています。これには、たとえ軽いものであっても、手や物で叩くこと、押すこと、つねること、噛むこと、髪や耳を引っ張ること、不快な姿勢を強要すること、やけどを負わせること、煮えたぎった食品などを食べさせること、苦痛もしくは不快感を引き起こすことを目的とする他のあらゆる行為が含まれます(前掲記事の見出しに「スリッパ叩き」(chanclazos)というのがありますが、ラテン文化圏ではスリッパやサンダルで叩くことが子どもに対する罰として広く行なわれてきたようです)。

 屈辱的な罰とは、子どもに対して行なわれる取り扱いであって、攻撃的なもの、中傷的なもの、価値を低下させるもの、スティグマを与えるもの、嘲笑的なものおよび侮蔑的なもの、ならびに、苦痛、脅威、困惑または屈辱を引き起こすことを目的としたすべての行為をいいます。

 改正法ではさらに、子どもには、父母または子どもの養育等に責任を負うその他の者ならびに教育・スポーツ・宗教・保健・社会福祉施設の責任者および職員から、体罰または屈辱的な罰の被害を受けることなく、指導、教育、ケアおよび養育を受ける権利があるとも定められています。

 条文そのものは現時点で参照できていませんが、このような改正内容から、メキシコが世界で61番目の体罰全面禁止国と判断されるのは間違いないと思われます。

追記2021年1月15日発表のリリースによれば、Global Initiative to End All Corporal Punishment としては、メキシコ連邦を構成する32州のうちまだ州法で体罰を全面禁止していない11州で法改正が行なわれた後に、メキシコを体罰全面禁止国として認定する構えのようです。混乱するので、見出しから「世界で61番目の体罰全面禁止国に」という文言を削除しました。)

【追記1】(12月12日)改正法の詳しい内容等を紹介する英語記事も出ました。なお、上院による昨年11月の承認は予備的なもので、正式に可決されたのは今年9月だったようです。

★ Mexico News Daily: Lower house approves law prohibiting corporal punishment of children
https://mexiconewsdaily.com/news/lower-house-approves-law-prohibiting-corporal-punishment-of-children/

【追記2】(12月13日)上院による正式な承認時にだいたい同じような内容の投稿をしていたことをすっかり忘れていました。


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