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国連・子どもの権利委員会が各国に提示する新型コロナ関連の質問例


 先日の投稿で、英国の4法域(イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランド)の子どもコミッショナが-国連・子どもの権利委員会に提出した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の報告書の概要を紹介しました。

 委員会はこの間、締約国に対する事前質問事項(List of Issues)のなかですでにCOVID-19関連の質問をするようになっていますので、日本と経済的・社会的状況が近いと思われる国の事前質問事項をいくつかチェックしてみました。

 2020年6月29日~7月3日にかけてオンラインで開催された会期前作業部会ではニュージーランドに対する事前質問事項(CRC/C/NZL/QPR/6)が採択されていますが、そこでは次のような質問が行なわれています。

新たな進展
2.委員会は、締約国に対し、以下の情報を提供するよう要請する。
……
(b) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが子どもに及ぼす影響に関する2020年4月8日の委員会の声明に鑑み、COVID-19パンデミックの状況下で子どもの権利の保護を確保し、かつパンデミックの悪影響を緩和するためにとられた措置に関する情報(適宜)。……
……
資源配分
5.委員会に対し、「ウェルビーイング予算」アプローチに関する情報および以下のことを目的としてとられた措置に関する情報を提供されたい。
……
(c) 子ども(とくに、脆弱な状況に置かれている子ども)が、COVID-19パンデミックへの対応としてとられた後退的措置およびこれらの措置がきっかけで生じた経済危機がもたらしうる効果の影響を受けないことを確保すること。

 同じ会期前作業部会で採択されたスウェーデンに対する事前質問事項(CRC/C/SWE/QPR/6-7)では、「新たな進展」「資源配分」についてニュージーランドと同様の質問が行なわれているのに加え、以下の点についても質問されています。

立法
4.2020年1月1日付で条約が国内法に編入されたことに鑑み、以下のことを目的としてとられた措置または構想されている措置に関する情報を提供されたい。
……
(c) 子どもに影響を与えるすべての立法、政策および行政上の決定(COVID-19パンデミックへの対応であるものを含む)について、国および地方のレベルで義務的な子どもの権利影響評価手続を設けること。……
教育
27.以下の点に関する情報を提供されたい。
……
(g) 後期中等学校のすべての子ども(不利な社会経済的状況に置かれている子どもを含む)が、COVID-19パンデミックの状況下で質の高いバーチャル授業にアクセスできることを確保するためにとられた措置。

2020年10月5~8日にかけて開催された会期前作業部会では、フランスやアイルランドに対する事前質問事項が採択されています。フランスに対する事前質問事項(CRC/C/FRA/QPR/6)では、「新たな進展」についてニュージーランドと同じ質問が行なわれている程度です。

 アイルランドに対する事前質問事項(CRC/C/IRL/QPR/5-6)では、「新たな変化」「資源配分」についてニュージーランドと同様の質問が行なわれているのに加え、教育との関連で、

COVID-19パンデミックへの対応として行なわれた学校閉鎖および従来とは異なる成績算定システムが、不利な社会経済的状況に置かれている子どもの権利に及ぼすいかなる不均衡な影響にも対処すること。

 を目的とした措置についての質問が出されています(パラ27(g))。

 今後、より幅広い問題が取り上げられていくようになると思われます。なお、先日の投稿でも書いておいたように、来週(2月8日~12日)の会期前作業部会では英国に対する事前質問事項も採択される予定です。

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