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学校再開のための教職員支援~国際教職員タスクフォースのガイダンス

 各国政府代表、国際機関、国際NGO・国際教職員団体など140以上のメンバーから構成される国際的ネットワーク「『教育2030』のための国際教職員タスクフォース」International Task Force on Teachers for Education 2030)が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機後の学校再開にあたって教職員を支援するための資料(政策立案者向けガイダンス・学校指導者向けツールキット)を発表しています。

 同タスクフォースは、SDGs(持続可能な開発目標)の目標4「すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」、とくにターゲット4.c(2030年までに、開発途上国……における教員養成のための国際協力などを通じて、資格を持つ教員の数を大幅に増加させる)の達成促進を目的として2008年に創設されたネットワークです。今回のガイダンスは、ユネスコ(国連教育科学文化機関)およびILO(国際労働機関)との連名で発表されています。

1)2020年5月に発表された『学校復帰の取り組みにおける教職員の支援――政策立案者向けガイダンス』Supporting teachers in back-to-school efforts - Guidance for policy-makers)でとくに強調されている点(キーメッセージ)は以下のとおりです(太字は原文ママ)。

⇒ 学校再開にあたっては、教職員、学習者および教育支援スタッフの安全と健康が何よりも重要である。学校は、各校の施設状況、予算、職員体制、資源および備品の確保状況にしたがって、国際的に認められた保健・安全措置および衛生確保手順を適用しなければならない。
⇒ 教職員およびその代表組織との社会的対話は、安全・保健措置および学校に関連する他のあらゆるパンデミック対応方針を策定・実施していくうえで必要不可欠である。
⇒ 学校再開におけるCOVID-19対策として、すべての学習者、教職員および教育支援スタッフに対する今回のパンデミックの心理的・社会情緒的影響を想定し、学校コミュニティの構成員は誰であれ資源および支援サービスにアクセスし、これを利用できるようにしなければならない。
⇒ 教職員および学校支援スタッフが、学校再開の取り組みを容易にするための十分な追加的専門研修および準備のための支援を受けられることは、きわめて重要である。その際には、健康・衛生に関するプロトコール(標準対応手続)およびガイドライン、再編された学校・教室における授業と学習のための要件、学級規模の縮小と授業時間の削減にともなう課題、対面授業と遠隔授業の両方を行なう教員への負担が考慮されるべきである。
⇒ 教育制度は、学校再開の取り組みに際して、資格のある十分なスタッフが動員され、スケジュール設定が更新され、かつ教職員の権利および労働条件が保護されることを確保しなければならない。検討すべき対応としては、教職員の追加採用、時差勤務またはパートタイム勤務、教職員自身の家族的義務および個人的リスク要因、授業日に最低授業時間を確保できる可能性などが挙げられる。
⇒ 財源への圧力にもかかわらず、変化し続ける教職員・学校のニーズに対応するためには教育上の対応への投資がきわめて重要である

2)上記のガイダンスは全部で5ページの短い文書ですが、これを補完するものとして6月に発表された『学校復帰の取り組みにおける教職員の支援:学校指導者向けのツールキット』Supporting teachers in back-to-school efforts: A toolkit for school leaders)には学校指導者向けの詳しいチェックリストも掲げられており、PDF版で32ページあります。

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 ツールキットの構成は次のとおりです。日本ではとりわけ「社会的対話」(保護者や子どもたちとの対話も含む)がもっと重視されるべきだと思います。

I.社会的対話とコミュニケーション
II.学校安全・保健
III.心理的・社会情緒的ウェルビーイング
IV.教職員の準備と学習
V.職員の配置、権利および労働条件

 このツールキットはユニセフ・ユネスコ・世界食糧計画・世界銀行が4月末に発表した学校再開ガイドラインを補完するものとしても位置づけられていますので、あわせてご参照ください。

 このほか、7月には人道行動における子どもの保護のための連合(Alliance for Child Protection in Humanitarian Action)と緊急時の教育に関する機関間ネットワーク(Inter-agency Network for Education in Emergencies: INEE)が、学校閉鎖と再開に関わるリスク衡量の手引きIn Weighing up the risks: School closure and reopening under COVID-19 ? When, Why, and What Impacts?)を発表しています。

 以下の資料も参考になるかと思います(いずれも日本語訳)。

ILO産業別概況:COVID-19と教育セクター
・OECD(経済協力開発機構):2020年 新型コロナウイルス感染症パンデミックへの教育における対策をガイドするフレームワーク(仮訳)

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