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武力紛争時の子どもの誘拐/気候変動を背景として移動する子どもの保護に関する新たな国際的指針

 危険な状況に置かれている子どもを保護するための新たな国際的指針がユニセフ(国連児童基金)などによって相次いで発表されたので、紹介します。

子どもと武力紛争に関する国連事務総長特別代表/ユニセフ:武力紛争時の子どもの誘拐に関するガイダンス

 7月18日に発表されたこのガイダンス(Guidance Note on Abduction)については、UN Newsの記事の日本語訳がヒューライツ大阪のニュースに掲載されていますので、そちらをご参照ください。

● ヒューライツ大阪-国連、戦時下の児童誘拐および「重大な人権侵害」を抑えるための新ガイダンスを発表(7/18)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2022/07/718.html

 国連では、とくに(1)子どもを殺害する行為/子どもに障害を負わせる行為、(2)子どもの徴募/兵士としての使用、(3)子どもに対する性暴力、(4)誘拐、(5)学校または病院への攻撃、(6)子どもを対象とする人道アクセスの否定の6つを武力紛争時の重大な子どもの権利侵害に位置づけて重点的なモニタリングを行なっていますが、今回のガイダンスは、他の5つの重大な権利侵害との関連も含めて、誘拐の問題についてとくに取り上げたものです。

ユニセフ/IOM(国連移住機関)/国連大学ほか:気候変動を背景として移動する子どものための指導原則

 7月25日に発表されたこの指導原則(Guiding Principles for Children on the Move in the Context of Climate Change)については次のプレスリリースをご参照ください。

● ユニセフ(日本ユニセフ協会)-気候変動 避難する子どもたちを守る指針を発表 1000万人の子どもが気候の影響で避難
https://www.unicef.or.jp/news/2022/0143.html

● 国連大学-新ガイドライン発表:気候変動で移動する子どもの保護に関する初のグローバル政策枠組み
https://jp.unu.edu/news/news/new-guidelines-provide-first-global-policy-framework-on-protecting-children-on-the-move-in-face-of-climate-change.html

 このガイドラインには、気候変動の悪影響の結果として国内でおよび国境を越えて移動する子どもが有する、特有のかつ複層化された脆弱性に対処するための9つの原則が掲げられています。その概要は次のとおりです(ガイドラインのpp.11-12より;原則6のみp.33)。日本としても、これらの原則が国内外で実践されるようにするための方策を考えていく必要があります。

原則1:権利を基盤とするアプローチ
 気候変動を背景として移動する子どもは、子どもの権利条約に掲げられた子どもの権利のすべてを引き続き保持する。

原則2:子どもの最善の利益
 気候変動を背景として移動する子どもに影響を与えるすべての決定および行動において、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない。

原則3:アカウンタビリティ
 政府その他の主体は、気候変動を背景とする子どもの移動を助長する決定および行動について責任を負う。

原則4:意識啓発および意思決定への参加
 子どもは、気候変動を背景とする移動または滞在についての決定を行なうにあたり、その「年齢および成熟度」に応じて情報を提供され、相談されかつ参加する権利を有する。その際、権利の行使に際して子どもに適切な指導を提供する親(保護者のいない子どもまたは養育者と離れ離れになった子どもの場合にはその子どもを現に養育している者)の権利を認識するものとする。

原則5:家族の一体性
 気候変動を背景として移動する子どもは、親または養育者に育てられる権利と、親または養育者から引き離されない権利を有する。離れ離れになる事態が生じた場合、子どもは国による特別な保護および援助を受ける権利を有しており、国は、子どもの一時的な代替的養護を確保するとともに、親または他の親族と再会できるようにするために必要なあらゆる措置をとるべきである。

原則6:保護、安全および安定
 気候変動を背景として移動する子どもは、移動のあらゆる段階において安全でいる権利を有する。これには、身体的・情緒的危害、ジェンダーに基づく暴力、搾取、人を密入国させる行為、人身取引および強要行為からの保護のほか、庇護や難民としての地位へのアクセスを促進することも含まれる。

原則7:教育、保健ケアおよび社会サービスへのアクセス
 気候変動を背景として移動する子どもは、その行程のあらゆる段階で、教育、保健ケアおよびその他の社会サービスにアクセスする権利を有する。(この点につき、ユニセフが今年5月に発表した『人道危機における保育:緊急事態勃発時のプログラミングモデル』も参照)

原則8:差別の禁止
 気候変動を背景として移動する子どもは、自己またはその親の移住関連の地位にかかわりなく、非差別的な取扱いを受ける権利および権利行使を可能にするために必要な条件を整備される権利を有する。

原則9:国籍
 無国籍の子どもが気候変動を背景として移動する場合、または子どもが国籍国を離れた結果として無国籍になる場合、国は、このような子どもが国籍を有することを確保する義務(必要なときは受入国の国籍を付与することを含む)を負う。

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