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一般的意見26号(子どもの権利と環境)に関する国連・子どもの権利委員会の声明

 昨日(9月1日)日本語訳を公開した国連・子どもの権利委員会の一般的意見26号(とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境)については、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)などがプレスリリースを出していますが、委員会自身も8月29日付で声明(PDF)を発表しました。委員会として強調したい点がよくまとまっていますので、以下に訳出します(太字は平野による)。

 なお、9月18日(月)に予定されている一般的意見26号のグローバル・ローンチにあわせて、チャイルドフレンドリー版も発表される予定です。これについても、速やかに日本語訳を作成・公開したいと思います。

子どもの権利委員会の声明
とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境についての
一般的意見26号ができました!
ジュネーブ、2023年8月29日

 第93会期中に一般的意見26号(2023年)が採択されたことにともない、国連・子どもの権利委員会は、環境劣化と気候変動に対処するための、各国による緊急の行動を呼びかけます。

 一般的意見には3本の主要な柱があります。

1.気候緊急事態、生物多様性の崩壊および汚染の蔓延から構成される3重の惑星危機が、現在の子どもたちおよび次々とこの星にやってくる子どもたちの具体的権利に及ぼしている悪影響に、光を当てている。

2.環境保護が子どもたちの権利の保護にとってどのように有益かを明らかにするとともに、子どもたちには清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する権利があることを強調している。この権利は条約に黙示的に含まれているものであり、とくに生命・生存・発達、到達可能な最高水準の健康、十分な生活水準および教育に対する権利と直接結びついている。この権利は、子どもたちの権利の全面的享受のためにも必要である。

3.環境劣化および気候変動が子どもたちの権利の享受に及ぼす悪影響に対処するために、また清浄、健康的かつ持続可能な環境をいま確保し、かつ将来世代のためにそのような環境を保全するために締約国が緊急に実施すべき立法上・行政上の措置を、具体的に述べている。

 委員会は、各国に対し、環境に関連する子どもたちの権利(健康的な環境に対する権利を含む)の全面的かつ効果的享受を達成することに向けて計画的、具体的かつ焦点化された措置をとり、かつ十分な資源を振り向けるように促します。

 国は、事業者に対し、事業者が環境と子どもの権利に及ぼす実際のおよび潜在的な悪影響を特定し、防止し、緩和し、かつそれに関する説明責任を果たすための環境評価および子どもの権利デューディリジェンス(相当の注意・配慮)を、自社のバリューチェーンおよび世界的操業と関連するものも含めて実施するよう、要求するべきです。

 気候変動との関連では、一般的意見は、国として、事業者によって引き起こされる気候変動に関連した子どもたちの権利に対する危害からの保護を提供するため、事業者が迅速に〔温室効果ガス〕排出量を削減させることを確保するなどの手段により、あらゆる必要な措置をとらなければならないと強調しています。

 一般的意見は、気候変動に対処するための行動をとる際に子どもの権利に関わる義務を尊重し、促進しかつ考慮するという、パリ協定に基づく各国のコミットメントの解釈に役立つとともに、世界レベルでの変革のための推進力として、また子どもたちとその擁護者が政府その他の関係者の説明責任を問うための強力なツールになりえるものです。

 国は、環境危害の影響を受けている子どもたちに対し、子どもにやさしく、ジェンダーに敏感でかつ障害についてインクルーシブな苦情申立てのしくみを含む、司法にアクセスするための経路を提供するべきです。切迫した、予見可能な、過去のまたは現在の子どもの権利侵害を主張するためのしくみが利用可能とされるべきであり、そこでは、環境危害が子どもたちにとって特有の形でいっそう強く表れるものであり、生涯にわたって続く可能性があることを考慮するよう求められます。国は、自国の領域から国境を越えて派生した危害の影響を受ける領域外の子どもたちも含め、自国の管轄下にあるすべての子どもたちが、これらのしくみを差別なく容易に利用できるようにするべきです。

 一般的意見では、先進国が現在の気候資金ギャップに緊急かつ集団的に対処することの必要性も強調しています。これには、子どもたちの権利への悪影響を回避するため、開発途上国に対して融資ではなく贈与の形で資金を提供することなども含まれます。また、気候資金が適応措置および損失・損害措置を犠牲にする形で緩和に過剰に偏っており、いっそうの緩和措置が必要な地域に暮らしている子どもたちに差別的効果を与えていることも、指摘しています。

 一般的意見26号は、各国、国内人権機関、国際機関、市民社会、テーマ別専門家および子どもたちとの、2度にわたる協議の後に採択されたものです。委員会は、121か国の子どもたちから16,331件の意見書を受け取りました。子どもたちは、環境劣化と気候変動が自分たちの生活およびコミュニティに及ぼしている悪影響を共有・報告してくれるとともに、清浄、健康的かつ持続可能な環境で暮らす自分たちの権利を主張しました。

「一般的意見の活用方法は本当にたくさんあります――法廷で使うだけのものではありません」と、ザンビア出身の子どもの権利活動家(16歳)で、一般的意見のための委員会の子どもアドバイザーのひとりであるジョージは言います。「一般的意見は、清浄で健康的な環境に対する権利がどれほど重要かを示すために活用されるでしょう。私たちはたいてい、この権利がどのぐらい重要かをわかっていません。私たちが持っている他の権利と結びつけることができなかったからです。権利は相互依存しているものですが、私たちは、権利がどのように結びついているのかを示せないことがあります。でも、この一般的意見が、私たちのためにそれをやってくれています」と、ジョージは付け加えました。

 委員会の子どもアドバイザーで、ベトナムの子どもの権利擁護者である18際のバクにとっては、「一般的意見26号の成果については、私たち子ども全員が本当に満足するのは、政府職員や有力な政策立案者が実際に行動を起こすときだけだと思います。こうした個人や機関・団体が、物事を決めるときに子どもたちの権利を優先させ、実際に子どもたちの権利を支持するときに初めて、私たちはこのプロセスが実際に支持されていると本当の意味で感じられるようになります」。

 ルワンダ出身の気候インフルエンサーで、子どもの権利活動家で、子どもアドバイザーであるエリザベス(17歳)によれば、「私たちがやることは全部、希望がともにあります。希望がなければ、私たちにできることはありません。だから私たちは――一般的意見のための子どもアドバイザリーチームのメンバーとして、そしてそれ以外の世界中の子どもたちとして――一般的意見の作成に参加し、文書の準備をし、世界中からアイデアを集め、行動のための課題と解決策を理解するなかで、希望を持てたと思います。自分たちは変化の一翼を担いつつあり、いま、そして未来にわたって環境を守っていく方法を、これ以上ないほど説得力のある形で示すことができるという希望です」。

「アドボカシーをしているのは、私たちの未来のために闘っているのは、私たち子どもです」と、エリザベスは言葉を継ぎました。「みなさんがここで私たちを手伝ってくれれば、みなさんがどこかで私たちを支えてくれれば、この一般的意見に希望を持つことができます」

 そして、14歳の気候活動家でブラジル出身の子どもアドバイザーであるタニアにとっては、「希望はあります! GC26〔一般的意見26号〕は、よりよい世界のための私たちの活動と希望を刺激してくれました。それと同じぐらい、世界中の人々の希望も刺激できるはずです」。

 委員会は、締約国との対話のなかで、気候変動その他の環境問題が子どもたちの権利に及ぼす影響を引き続き強調していきます。

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