ユニセフ、「豊かさの中の子どもの貧困」に関する報告書を発表:日本は総合順位で39か国中8位に
取り上げるのが遅くなりましたが、ユニセフ(国連児童基金)は、2023年12月6日、レポートカード18「豊かさの中の子どもの貧困」(Child Poverty in the Midst of Wealth)を発表しました(これまでのレポートカードについては日本ユニセフ協会のサイトを参照)。
★ユニセフ/日本ユニセフ協会:ユニセフ「レポートカード18」 豊かさの中の子どもの貧困 日本39カ国中8位 改善には偏り
https://www.unicef.or.jp/news/2023/0208.html
日本の状況と課題については阿部 彩さん(東京都立大学教授/子ども・若者貧困研究センター長)による解説が別途掲載されていますので、そちらをご覧ください。阿部さんは、日本でこの間とられてきた子どもの貧困対策を一定程度評価しつつ、「子どものある世帯全体の経済状況が改善される中、そのような、労働市場の波にのることができていない世帯が取り残されていること」を指摘するとともに、「現金給付とサービス給付の両輪が必要」であることを強調しています。
ユニセフによる今回の報告は、他の国々でも反響を呼んでいます。たとえば、総合順位で39か国中37位と低迷した英国では、スコットランド、ウェールズおよび北アイルランドの子どもコミッショナーが共同で声明(12月6日付)を発表し、
「私たちは、子どもたちがお腹を空かせ、寒い思いをし、学ぶことができない状況に置かれていることを、単なる人生の現実として受け入れることはできません。英国政府および自治政府は、英国の取り組みが不十分であることに関するユニセフの警告を受けとめ、子どもの貧困に直ちに対処するために緊急の行動をとらなければなりません」
と強調しています。
また、総合順位が39か国中19位だったニュージーランドでは、子ども・若者委員会で主任子どもコミッショナーを務めるクレア・アクマド(Claire Achmad)博士が、「政府が近年行なってきた協調のとれた努力によって子どもの貧困率が改善されてきたのは心強いことです」と評価し、取り組みを継続する必要性を訴えています(こちらのページを参照)。
今回の調査結果を踏まえ、ユニセフは次の提言を行なっています(日本ユニセフ協会のリリースより)。
1.世帯の所得を補うための児童手当や家族手当など、子どものための社会的保護を拡大する。〔平野注/この点については〈ILO/ユニセフ、子どもの社会的保護に関する報告書を発表〉なども参照〕
2.すべての子どもたちが、保育や無償の教育など、ウェルビーイングに欠かせない質の高い基本的サービスを利用できるようにする。
3.保護者の仕事と育児の両立を支援するために、適切な賃金の雇用機会や、有給の育児休業などの家族にやさしい政策を整える。〔平野注/この点については、ユニセフ・イノチェンティ研究所が2019年に発表した報告書『世界でもっとも豊かな国々は家族にやさしいか? OECDとEUにおける政策』なども参照〕
4.特に困難な状況の家庭やひとり親家庭のニーズに対応する措置を用意し、社会的保護、主要なサービス、適切な仕事へのアクセスを促進し、不平等を是正する。
ユニセフはさらに、これらの取り組みの基本をなすべき重要な原則として次の3つを挙げています(こちらのページより;報告書p.49も参照)。日本でも、これらの提言と原則を踏まえてさらなる取り組みを続けていくことが必要です。
a)子どもの貧困削減への支持を構築する。
b)よりよいデータを生成する。
c)貧困に関する議論に子どもたちの関与を得る。
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