韓国の子どもたちが望む政策の第1位は遊び・余暇時間の拡大:民間団体調査
イングランド(英国)の子どもコミッショナーが実施した大規模アンケート「ザ・ビッグ・アンビション」は、遅くとも今年12月~来年1月までに行なわれる予定だった英国の総選挙を念頭に置いたものでした(時期が早まり、7月4日に実施されることになりました)。
韓国では4月10日に総選挙が実施されましたが、それに先立ち、韓国のNGO「グッドネイバーズ」が子どもアンケートを実施してその結果を2月27日に発表していますので、紹介しておきます。
★ 아동이 바라는 공약 1위, 놀이와 여가 시간 확대 / 굿네이버스, 제22대 국회의원 선거 아동정책 제안 설문조사 결과 발(子どもが望む公約の1位は、遊び・余暇時間の拡大/グッドネイバーズ、第22代国会議員選挙子ども政策提案アンケートの結果を発表)
https://www.goodneighbors.kr/story/press/8592/view.gn?category=13
このアンケートは、総選挙を控え、「国会議員候補者と政党が子ども政策に関心を傾け、子どもの意見を公約に反映させるよう促す」ことを目的として、2023年12月から2か月間、全国の小中高生500人あまりを対象として行なわれたものです。その結果は、「子どもたちの政策をお願いします!」と題した政策提案書(PDF)にまとめられています。
前掲プレスリリースによれば、回答した子どもたちにとって一番悩みの種になっているのは、成績や受験競争などの勉強に関わる問題でした(72%)。また、半数近くの子どもたちが、「夢を広げにくい社会に暮らしている」(48.9%)、「適性を生かせる教育を受けられない」(45.4%)、「遊び・休憩・余暇を十分に楽しめない」(44.6%)と答えています。
社会的な課題への関心としては、気候変動や自然災害がもっとも多く(57%)、それに次いで不平等な社会(52.7%)が多かったとのことです。また、回答者の64.5%が「子ども関連の政策をつくるときに参加する機会が与えられていない」と答えており、どの国でも、政策立案への子ども参加はまだまだ道半ばのようです(ちなみに韓国では2004年から毎年「大韓民国子ども総会」が開かれています)。
国会議員に対する子どもたちのイメージは、▽信頼できる人(30%)、▽市民とコミュニケーションする人(27%)、▽道徳的な人(25%)が上位を占め、それほど悪くはありません。子どもたちからは、「子どもの意見と権利を尊重し、よい政策をつくって子どもたちの模範となる、よりよい国会議員になってほしい」という要望が出されたとのことです。
子どもたちが望む公約としては、遊びと余暇時間の拡大が1位で、体験型進路教育の拡大および子どもを対象とする暴力や犯罪の防止が同率2位でした。それに続いて「子どもの権利を尊重する政策の拡大」が挙がっています。以下、上位8つの公約を紹介しておきます(太字は原文ママ;なお、2位が2つある場合その次は「4位」とするのが一般的だと思いますが、原文にあわせます)。
1位:子どもの遊び・余暇時間の拡大/遊びや文化生活のための施設と支援の拡大(10.5%)
2位(同率):カリキュラムにおける体験型進路教育(有望な将来の職業など)の大幅拡大(10.4%)
2位(同率):子どもを対象とする暴力や犯罪(児童虐待、学校暴力、性犯罪、デジタル犯罪など)の防止(10.4%)
3位:子どもの権利を尊重する政策の拡大(9.9%)
4位:学校別・分野別に教育課程を多様化できる教育制度改編(9.0%)
5位:自立が必要な子ども・青少年(家庭外で保護される子ども・青少年など)のための自立支援サービスの拡大(6.2%)
6位:子どもに関する法律/政策への子ども参加・意見反映の義務化(6.0%)
7位:社会的保護が必要なさまざまな背景(貧困・移住の背景・障害など)の子どもに対する特別支援の拡大(6.0%)〔平野注/6位と1票差〕
Facebookで書きましたが、韓国でも「こどもの日」である5月5日には、与党「国民の力」のほか野党である「共に民主党」「祖国革新党」の関係者も声明を発表し、子どもが幸せな国をつくっていくと宣言しています(KBSの記事=韓国語=参照)。昨年のこどもの日を前に与野党がそれぞれ国会に提出した「子ども基本法案」についてはその後まったく動きがなく、KBSの記事でも祖国革新党が「子ども基本法を通じ、子ども関連のすべての法律が子どもの権利に立脚するようにする」とコメントしているだけですが、日本のこども基本法およびそれに基づくさまざまな取り組みも参考にしながら、今後取り組みが進められていくことを期待します。
なお、〈韓国大統領選に向けて若者たちが要求する政策〉(2022年2月27日付)なども参照。
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