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癒やしの間

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キズを癒やせたら良いなと思い書いた作品です
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2023年3月の記事一覧

ウサギたちの宴

ウサギ達には秘密の宴があった。 満月の夜更に他の動物たちに内緒で集まるのだ。 動物たちの住む森の向こう、小さな池のほとりには不思議な草が生えていた。満月の日に赤い実がなって、その実を口にするとウサギ達は気分が良くなった。 ウサギ達は集まって、この実を口にして盛り上がった。食べ過ぎると気分が悪くなる。先月も年頃の娘ウサギが無理に食べ過ぎて、意識がなくなった。それでもウサギ達はこの実の魅力に取り憑かれた。一つ食べれば気分がフワフワする。二つ食べれば嫌なコトも忘れられた。三つ食べ

昨日会ったヒト

昨日会ったヒトは、哀しい目をしていた 青い空が、悲しいと言った 夜の闇が、不安だと言った 毒親、貧困、悲惨な家庭 乱れたココロは 伝わるの 家族みんなで 壊れてく ヒトに馴染めず 居場所もないの 虐め、虐待、非行に搾取 僅かな希望は 削がれて消えた 自傷にクスリ 逃げ出す先に 救いも希望も 何も見えない 恋に依存し 傷つけ合って 孤独が私の お友だち 手首の傷は 生きてる証  私がココに いるシルシ 誰を好きでも 構わない 生まれる子どもは 大変なんだ 子どもは親を 

生きにくい彼女の恋物語

その昔、動物たちが暮らす森に雌の若いヤマアラシが住んでいた。 その娘は毛並みも良く美人と評判だったが、厄介なトゲのせいで他の動物たちと仲良くできずにいた。 彼女は日々苦しんでいた。もともとは彼女が幼いこどもの頃からだ。 家族同士、お互いのトゲが刺すからスキンシップのない家庭で育った。互いに傷つけ合う歪んだ関係は普通の家庭にはなかった。やがて父親が他所にその幸せを求めた。母親も散々悩んだ挙げ句、家庭を見捨てて安らぐ先で落ちついた。一人残された彼女に残ったのは人気のない広い家と