遺言無効訴訟は誰に対して提訴するか
Q 遺言に遺言能力欠缺を理由とする無効の瑕疵があるにもかかわらず、この遺言により不動産を取得した第三者(A)が、当該不動産を売却し、当該不動産が転々流通して所有権登記が移転し転得者Yが生じた場合において、相続人XはAを被告として遺言無効確認訴訟を提起すればYの不動産所有権を否定できるのか。
A 否。
遺言無効確認訴訟は、あくまで訴訟当事者間だけでしか効果をもたない(対世効がない)。そのため、転得者Yも被告に加えて所有権登記抹消登記請求をしなければ、転得者Yの不動産所有権を否定できない(そうしないとXとYとの関係では遺言は有効なままだから)。
なお、相続人が複数いる場合、相続人Xと第三者Aとの間で仮に遺言無効だけの確認を求めたとしても、Xが勝訴したあと、遺言が無効であることを前提に、遺産分割協議を行うことが必要となる。
仮に遺産分割調停をする際は、相続人全員が参加する必要があるが、遺言無効確認がXとAとの間だけで判決で確認されていたとしても、他の相続人とAとの間で確認されているわけではない。Aは「Xとの間では遺言は無効であるが、その他の相続人との間では遺言が無効と認めない。」という主張が可能となってしまう。
そのため、遺言無効確認訴訟は、相続人全員を当事者にしなければ結局解決が出来ないことが多い。