ドラマ「PICU 小児集中治療室」
(ネタバレあり)
「PICU 小児集中治療室」は、2022年秋期の「月9」枠に、小児科をテーマにした、志子田武四郎(吉沢亮)という若手小児科医を中心に描いているドラマです。
ドラマを観始めたら、同じくフジテレビの「コード・ブルー」のことを思い出しました。新人の成長や、仕事とプライベートの両立など、似ている印象が浮かび上がりました。「コード・ブルー」がずいぶん前のドラマで、はっきり覚えていなくて、「PICU 小児集中治療室」と比較しにくいと思います。でも、自分の記憶の限りでは、「コード・ブルー」の「緊急救命」という緊張感に対して、「PICU 小児集中治療室」のほうはじわじわと視聴者を拷問しているみたいです。
そういう視聴者を「拷問する」という意味が、第1話を見ればわかります。他の「死者ゼロ」のドラマと異なり、第1話でいきなりある病気を発症した少女がなくなります。少女は救急の最中に、志子田先生の袖を掴んだり、志子田先生の顔へ血を吐いたりしました。その上、死亡後のミーティングで、植野科長(安田顕)の「(さっきの少女)生存ルートはあったでしょうか?」という質問に対して、みんな冷静にディスカッションしていることは、私の心を酷く刺しました。私は直接植野科長に「ミーティングをやめて」と言い出すことができないですが、新人の志子田先生は私の代わりに「拷問」のようなミーティングに反抗してみました。
「どうして そんな 何もなかったように淡々と話せるんですか?」
自分の父が亡くなった直後、似ている気持ちを経験しました。病院で家族みんなが号泣していた時、いつも父を世話してくれていた看護師さんたちは、静かに、無口で、器械を片付けたり、書類を整理したりしていました。死亡に対して、反応がこんな両極端に分かれたことを、信じ難かったです。その看護師さんたちは、まだ新米の時、ドラマの志子田先生のように泣き出したのでしょうか?多分、毎日泣いたら体が必ず崩れてしまうので、体の防衛機制として、成長と共に、感情を抑えることが少しずつ上手くなったのでしょう。
単なる感情を抑えることではなく、嘘をつけるようになることも成長の一環だ、とこのドラマは語っています。リスが大好きな私は、リスの嘘について読んだことがあります。リスは、他のリスを騙すために、餌を埋めるふりをして、実はこっそり他の場所で食糧を埋めることがあります。こうしたら、食糧を貯められて、生存率が上がって、進化論によるとリス全体が「埋めるふり」という嘘が段々上手になっています。ドラマの素直な志子田先生は、第2話での小児患者の「本当のこと教えて」という質問に対し、真実を伝えてしまって、その小児患者はチューブを抜去して、ほぼ死に瀕していました。もし、かつて、ある民族の中で、お医者さんがみんな志子田先生のように誠実に患者に真相を言ったら、患者たちの気持ちを乱して、その民族の生存率を下げたかもしれません。それで、お医者さんたちは、ポーカーフェイスで嘘をつけるようになるのでしょう。志子田先生もそのようなお医者さんになって、成長の証として第8話での心臓病の患者に病状を隠すことができました。
いくら子供を騙せても、志子田先生は母親を騙せませんでした。第9話で、志子田先生は医者として母親のがんの治療方法を色々調べて、方法がなくても母親に真相を隠しました。もちろん、母親はその嘘が一瞬わかって、自分の病気がやはりだめだと知りました。母親の最期に、志子田先生は母親と団欒な時間を過ごして、ちゃんと話し合って、そして母親の死に直面しながら、仕事を続けて、時間をかけて辛い時を乗り越えました。ネットでこのドラマの続編希望の声もあるみたいですが、志子田先生にとって母親の死ほど大事な成長段階はないと思います。普通の医療ドラマになるくらいなら、このまま1シーズンでドラマを終えてほしいです。
結末に、前に「他の子供が死ぬのを待つのが嫌だ」と言った心臓移植待機の男の子は、無事手術を受けて、病気が治りました。この最終話は、少なくとも暗くなった私の気持ちを明るくしてくれました。
ちなみに、前に言った自分の父の最期の時、家族の誰もが末期癌のことを父に告げませんでした。その後、私はちゃんと姉と妹に「私だったら、ぜひ真相を教えてくれ」と言いました。希望が叶うか、まだわかりません。せめて、その時に、志子田先生が演じている吉沢亮のような美男美女系のお医者さんに診ていただけたら、癒やされて、いくら騙されてもちょっと楽に死ねるのでしょうか。
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