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つべこべ言わずにお金出してよ!の巻②~マラウイにラーニングセンター~

5.教育へ投資するということ

「自覚と愛着」の理屈は分かりました。

でも、日々の暮らしも満足に送れない人たちに費用や労働力を出してもらうことは、可能なのでしょうか。そもそも「教育に投資する」ことに理解が得られるのか。

ビジネスを始めるのに、「みんなでお金を出し合えば、次の年から収入がこれだけ上がりますよ」というのなら分かりやすいし、目に見えるリターンもあるなら協力しようかな、という気にもなるかもしれません。

でも、教育への投資となると、それが自分の生活にどのくらい利益をもたらしてくれるのか、想像がつきにくいのです。実際にリターンを得られるまでには、少なくとも10年、20年という時間が必要でしょう。

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この「地域住民に教育への投資を納得させる」という一番難しい部分を、パートナーのジョナサンがうまくやってくれました。

住民みずからの力で学校を建てて、運営する。「寺子屋」もしくは「おらが学校」のマラウイ版です。

6.負の連鎖を教育で断ち切る

私たちが構想したラーニングセンターの対象範囲には10の村がありました。村の人たちは9割以上が農民です。

そもそも学校に行く意義を理解していない親もたくさんいます。小学校を卒業していない親もたくさんいるので、当然とも言えます。

農繁期は、学校に行かせず、子どもに手伝いをさせることもよくあること。近隣の小学校では農繁期になると、児童の出席数が激減するんだそうです。

それだけではなく、雨期には大雨で通学路の橋がたびたび水没し、通学が危険なため、雨の日も多くの児童が休みます。

休みが増えてしまった児童たちはドロップアウトといって、小学校卒業までいかずに、やめてしまうことも多々あり、その割合の高さが問題になっている地域でもありました。

しかし、小学校をドロップアウトしても、農民になれば食っていけるので、そんなに困らない。その代わり新しい産業は育たず、地域としては貧しいまま・・・。そんな悪循環のまっただ中にいるのです。

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「地域の発展のために、最も重要なのは教育だ」との信念を持っていたジョナサンは、こうした状況にもめげずに、地域住民への説得を続けました。各村に足を運び、村長に話したり、つてを使ったりして、地道に少しずつ村人に納得してもらっていったそうです。

私は現場から片道3時間半かかる場所に住んでいたので、到底そんなことできません。現地に住むジョナサンが、意欲あふれる人物だったからこそできたことです。


7.村長会議と運営委員会で決まったこと

いつしか、ジョナサンは地域に認められるようになり、村長を集めて話し合う村長会議を取り仕切ったり、センターの運営委員会を立ち上げたりするまでになっていきました。

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私は、LINEのようなアプリWhatsAppのメッセージで、ジョナサンにセンター運営のアドバイスをこまめにしました。ポイントは、いかにセンターを持続可能なものにできるかということ。

電波が悪かったり、停電が続いたり、インターネット通信に使うお金が底をついたり、日本ではあまり起こらないような障壁があるので、1つのことをやり取りするのにも、想像以上の時間がかかりました。

ジョナサンの住む家には電気がなかったので、彼は知り合いの家にわざわざ行き、携帯電話の充電をしていたそうです。バッテリーの持ちも悪く、フル充電しても1時間しか持たない。それも、停電の時はアウトです。(マラウイでは当時、1日数時間の停電ではなく、電気がある時間が数時間しかないという状況でした。)

私も、本来の業務があるので、月に1度ほどしか村を訪問できません。プロジェクト申請に必要な段取りを整えるのに、携帯のメッセージのやり取りは避けて通れなかったので、根気よく続けました。

そして話し合いを重ねた結果、各村長の合意を得て、
①レンガ作り、川砂の採集運搬にかかる労働費(約12万円相当)
②センターへの寄付金(各村から約700円ずつ年3回)

は周辺10村が分担する方向で話がまとまった、と連絡を受けました。

①レンガを作るのに必要なのは、地面を掘って出てくる粘土。さらに、粘土をレンガ型に成型して、焼く工程には薪が必要となります。セメントに混ぜる川砂は、川に行けばいくらでも手に入ります。つまり、材料は全て自然にあるものなので、実質タダ。

これでは、負担ではないのでは?!と思われるかもしれませんが、自分たちでそれらの材料を用意する労力は必要です。もし、これらを業者に頼むと、日本円で12万円相当するんだそうです。

②それから、チョーク代やボランティア教師への謝礼、また施設が修繕するための費用など、運営費に充てるための各村の寄付金。少額ですが、この地域の精一杯だったのだと思います。

これらに加えて、中心にある村が、建設用地の周りの土地もセンターのために分けてくれることになりました。

半分はグラウンド、もう半分はセンターに通う子どもたちに食べさせるためのトウモロコシ畑にすることにしました。

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こうして、やっとのことで申請に至ったのです。


肝心の支援金30万円(実質27万円)を何に使ったか、センターの建設がどう進んだかは、次の記事に続きます。

最後までお読みくださり、ZIKOMOでした!

☆YouTubeでも紹介しています!

https://www.youtube.com/watch?v=M8jc5Eq7cAY&t=9s

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