好きの種

私はシングルマザー。子供達はすでに自立している。経済的サポートもしていない。当たり前の様に、働いてきた。一番は、稼ぐ為だ。自分と子供達の生活の為に、お金が必要だった。しかし、今思うと結局、好きな事を続けてきたように思う。美大を卒業して、キャラクター会社に就職した。自分のアイデアを形にすることに夢中になった。

会社員として商品開発畑を歩きながら、やがて営業、管理、物流と経験することになる。そして全ての部署で、ジャンルに縛られることなく、アイデアを形にするプランニングこそが、自分の強みであるという結論に繋がっていく。

何の為に働くのか。お金を稼ぐ為? 今、振り返ってみて、自分が働くこととは、アイデアを形にした結果として、お金があったのではないかと思う。だから、子供達の為に、犠牲になったこともないし、ただただ自分の表現の為に働いて、気づいたら、子供達も大学を卒業し、その後は、彼女達の人生を彼女達自身が切り開いていった。

働くことのその先にある自分らしい何か。人と接するのが好きとか、作るのが好きとか、人の為に動くのが好きとか、子供が好きとか。誰でも自分の中のシンプルな自分の「好きの種」の感覚がきっとあるはずである。布を触っているのが好きとか、1ヶ所ではなく移動するのが好きとかでもいい。

きっと、その「好きの種」を掘り下げていくと、なにか理由が必ずあるはずである。私の場合は、幼稚園時代。クリスマス近いある日、私達は、それぞれに帽子の絵を描いていた。私はキラキラした三角帽子。そして、クリスマス会が開かれた日に、サンタクロースが、私達にプレゼントしてくれたのは、正に、自分達が書いた帽子そのもの。その時の驚きと感動が、私の表現の強烈な原体験だ。自分が描いたデザインが、実際の形になったリアルな体験が、自分のアイデアを形にする喜びの根源となっていると、今になって思うのである。まさに、初めてのデザイン画である。

自分のそう言った原体験に基づいた「好きの種」に気がついたからこそ、業種やジャンルの壁を超えて、今に繋がっているのだ。プロダクトだけのアイデアではない。仕事のプロセスや仕組みに課題を見つけ、改善プランを考え、実行していくこともアイデアを形にしていく事に他ならない。

やってて苦しい仕事は、続かない。それが人間関係だとか、残業が多いとかいろいろな原因と思われる事が浮かんだとしても、自分の感覚に耳を傾けてみてほしい。働く環境や人間関係は、相性だと思っている。例えばそこに集まる人達が、自分と合わなかったとしても、誰のせいでもない。相性の問題だ。違和感がある場合は、速やかにその場を去り、自分を活かせる場所を探した方がいい。いつまでも合わない土壌では、本来の自分の芽は育たない。似通った人は、自ずと集まってしまうものである。そこに留まる自分の違和感を見逃してはならない。

しかし、人は中々その違和感に気がつかない。何故なら、それまでの育った環境や親からの価値観にがっつり固まってしまいブレーキがかかるからである。そして、ストレスを抱え、病気を呼んでしまったりするのだ。例えばその違和感が、親の期待を裏切る事であっても、気にする事はない。自分の人生は、自分で切り開くしかない。迷っている時に、前に進む事を引き止める人に、耳をかす必要はない。背中を押してくれる人こそ、真の家族、真の友人である。

自分の「好きの種」を是非、自分の五感を使って感じ取って欲しい。それこそが、自分の強みとなり、生涯続けていける仕事に繋がると思う。働くってなんだろう。それは、「好きの種」を大事に育て続けていくことだと。人生の貴重な時間を、使い果たすことなく、親や周りの価値観に振り回されることなく、自分の人生を、働く事を通して貫いてほしいと願っている。働くことは、人生そのものだから。

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