モテキ

学生時代、テニス部の女子キャプテン。高校からテニスを始めたので、結構うまい方。短いスコートをなびかせながら、真っ黒になってテニスばかりしていた。

それは、夏の合宿。私は後輩達を部屋に呼び出し、正座をさせた。きびしい顔で後輩達に合宿の進め方について説教。がしかし次の瞬間、『それで、いったい誰が好きなわけ?』と言い放つ私。後輩達は、きつねにつままれた風。実は小芝居をかました告白タイムだったのだ。テニス部の男子の中でだれが好きかを告白しなければいけないのだ。みんな、爆笑。そして照れながらも、好きな男子を次々と告白していく。

がしかし、時を同じくして、男子達も別室に集まっている。目的は同じ、テニス部の女子達の中で好きな人を言わされているのだ。さぞ、もりあがった事だろう。

次の日の夕食タイム。いよいよ人気投票の発表だ。なんと、女子の部一位は私。えっ?マジ?おいおい、だれにもコクられたことないし。いや。一度あるか。後輩にコクられたことが。しかし、若かりし私は、完全に有頂天だった。

まさに、今思えば、人生最大のモテキであったにちがいない。後輩からコクられ、先輩からもてはやされ、あー、いい気になっていた、おろかな私。若さだけが武器とはよく言ったもの。今でいう手塚さとみ風だった私は、自分でいうのもなんだが、本当にかわいかったが。

しかし、今になって思うのだ。大勢に人気があることの空しさを。一人の人に大切にされる方が、よっぽど人生にとって幸せではないかと。きっと、今のAKBも、大人になってそれに気がつくにちがいない。なんてね。

今、そのころの先輩たちに合うと、必ず言われるフレーズ。『アー。林は昔は可愛かったなー』と遠い目をするのだ。はい。勝手に言っててください。今の私に興味がない方はそれで結構でございます。若い事だけが価値でないのをなにより、今の私が知っているから。これ、負け惜しみに聞こえるかもだけど。

男ってほんとうに、どうしようもない生き物だわ、なんて思う今日この頃でございます。はい。


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