木と市長と文化会館 または七つの偶然
映画は色々と漁るより、つい同じもの何度も観てしまう。そのわたしの心理には、寅さんの新作が公開されたといって映画館に観に行く人がそれが新作であるにもかかわらずいつもの美女に振られるお馴染みの寅さんを求めて観に行くように、知らぬふりをしてまたいつもの驚きと笑いを体験したい、そんな少し自己本位な動機が潜んでいるのかしれない。というより、それは元来歌舞伎といい、大衆が芸術に求めるところのものであった。迂路をへて、結局は馴染み深い感情に至るのである。予定調和だが、知らぬふりをして驚き笑