とある既婚男性がにじさんじ性癖コンビの配信を見たことで思い出した幸せ

初めに言っておくが、これは性癖コンビの感想ではなく、にじさんじのバーチャルライバー「白雪巴さん」と「健屋花那さん」によって幸せを思い出した、とある男の自分語りである。百合でも薔薇でもない普通の男の話である。

 

————————

 

「朝が来るのが嫌だ…」

「ねー、つぎいつ会えるかなー…」

 

手に持ったスマホに映されている動画の中の2人が話している。

 

特に百合が好きな訳でもなく、かといって嫌いな訳でもない、そんな私が夢中になって2人の女性ライバーのコラボ動画を見漁っていたのは不思議かもしれない。

 

だが私がこの2人から目が離せなかったのは、容姿も声も、なんだったら性別も全く違うこの2人におこがましくも自分を重ねていたからだ。

 

————————

 

もともと にじさんじ が好きだった。

 といっても、見ていたのはほとんどゲーム実況系で、滅多に雑談配信などは見ず、特定の誰かを追いかけるわけでもなく、好きなゲームをしている誰かを暇つぶしに見ていただけだった。

にじさんじ性癖コンビの動画を見たのは本当に偶然であり、自動再生で流れてきた切り抜き動画の投稿者にも感謝を伝えなければならない。

 

「いや、うらやましいな…」

気がつけば最後まで見ていた 2人がいちゃいちゃしているだけの数十分の切り抜き動画 に対して自然と溢れた言葉だ。

 

 

私は27歳男性、既婚である。

妻とは高校生の頃に出会い、7年のお付き合いを経て3年前に結婚した。

 

結婚

 

それはひとつの幸せの形なのかもしれない。

あの日確かに私は永遠の愛を誓い、一生この人の傍にいると誓った。

その誓いはもちろん今も変わっていない。

ただ結婚後に変わっていったのは私の目線だった。

 

付き合っていた頃、私と彼女は電車に乗って1時間半程度という近いのか遠いのかよくわからないような距離に住んでいた。

しかし、平日に会いにいくには少し抵抗があるその微妙な距離は当人にとって非常にもどかしく、本当に本当に2人の休日が重なる週末が待ち遠しかった。

そしてようやく会えた時には、会えなかった分にため込んだ愛をなんとかして伝えようと彼女にささやきまくった。大して容姿も良くない私だが、彼女は笑って受け止めてくれ、そんな彼女が愛おしくて部屋ではずっとくっついていたし、隙があればキスをしまくるような典型的なバカップルだった。

小さなアパートで彼女が料理をする後ろ姿を眺めて、一緒にご飯を食べて、「洗い物は僕がするよ」と少しかっこつけて、シングルの布団を一枚だけ敷いて2人で寝転んで、「将来は一緒に暮らしたいね。」「もっと広いお部屋に住みたいね」「もっと大きいベッドがあればいいね」とあれがやりたい、これがやりたい、時間が足りないと2人で夢を話している、それだけですごく幸せで、この時間がずっと続け、朝なんか来なければいいと真剣に願っていた。

 

 

いつからだろう。私が妻に愛をささやかなくなったのは。

いつからだろう。私が妻の料理している後ろ姿を眺めなくなったのは。

いつからだろう。私が妻の前でかっこつけなくなったのは。

 

結婚して、妻のそばにいるのが当たり前になった。

小さなアパートは3LDKのマンションに変わった。

シングル一枚だった布団はダブルサイズのベッドに変わった。

付き合っていた頃に「もっと幸せになれるよ」と話した夢はほとんど叶えられた。

 

なのに

 

最近、私は幸せを感じていただろうか。

 

なぜこの動画の2人がこんなにもうらやましく思うのか。

この2人が話す夢をおそらく私はほとんど叶えられている。

 

なんでなんだろう。羨ましい。

 

気がつけばyoutube、ツイキャス全ての動画を見終わっていた。

2人は、お揃いのものを買って、口癖がうつったか気にして、交友関係を気にして、喧嘩して仲直りして、相手の全てが可愛く感じて、隙があればキスして。

見れば見るほどうらやましく、そしてあの頃の自分を思い出していった。

 

 

ああ、そうか。あの頃の僕は本当に、妻を見ていたんだ。

 

最近、妻を見たのはいつだろうか。

同じ家にいるし、話もする。仲も悪くない。

なので視界に映ることはたくさんある。

 

ただ、

 

妻を見ようと思って見たのはいつだろうか。

妻に会おうと思って会ったのはいつだろうか。

一緒にいようと思って一緒にいたのはいつだろうか。

 

あまりにもそこにいるのが当たり前すぎて、

『何かの時間と時間の合間に妻がいる。』

それだけになってしまっていたんだ。

 

 

ツイキャスを閉じた僕はその足で妻に会いにいった。

会いにいくのに1時間半もかからない。

扉を一枚開ければそこに彼女はいた。

 

用もないのに会いに来た僕に、彼女は「どうしたの?」と聞いた。

当時と変わらない笑みを浮かべて。

 

僕は久しぶりに彼女を見て「かわいい」と言って抱きしめることができた。

ああ僕は今、幸せだ。

 

 

健屋花那さんが「巴さんと一緒に居すぎてみんなが飽きてしまわないか心配だ」と言っていた。

飽きるわけがない。この配信は人を幸せにした。幸せとは何かを思い出させてくれた。

そんな2人の未来をこれからも見ていきたいと思う人は大勢いるだろう。

 

もちろん私も、2人の未来に幸多からんことをを願うとともに、彼女との時間の合間には白雪家の壁になりにいく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?