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【絵日記】こんなコロナなご時世ですが#こんコロ2021

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2021年4月25日から、「こんなコロナのご時世ですが2 #こんコロ2 」を連載します。 2020年春、緊急事態宣言発令を受け、mokumoku studioはこの未曾有な時間を…
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#家族

【絵日記#こんコロ-DAY143】 父を待つ犬

文 掛田智子 絵 ちから 父が東京に来ていた 過去数日用事で東京に滞在していた その分私たちは父とお酒を飲み楽しい時間を過ごせたのだが 問題は犬である 広島の犬である 父を何よりもの同士 いやマスターと考えているであろう犬が感じる寂しさは測り知れない 犬が幼児の頃からうちに来て父が数日間も留守にすることはなかっただろうコロナだし 玄関を見つめているという 毎時間見つめているという 父には そして母にも旅行に行ってほしいし いろんなところに連れて行きたい だけど犬が

【絵日記#こんコロ-DAY137】 お花畑を探しに

文 掛田智子 絵 ちから 絵本やアニメで見たお花畑が見たかった 一面に広がる どこまでも続くお花畑 おじいちゃんにお花畑が見たいと伝え おじいちゃんは自転車の荷台に私を乗せ 考えつく限りのお花畑らしい場所を探した 広島市のど真ん中に 絵本で描かれるようなお花畑なんてない わかりきっていただろうに おじいちゃんは探し続けてくれた 水たまりほどに広がるシロツメクサ わたしはこんなんじゃない みたいのはこんな草むらじゃないと言った おじいちゃんごめんね それに加えて

【絵日記#こんコロ-DAY124】 ちょうすけ

文 掛田智子 絵 ちから 今日はちょうすけの命日だ 3年前ちょうすけという愛のかたまり 愛の世界が わたしたち家族からすり抜けて その消えてしまった空虚がどうしようもなくつらく ただただちょうすけには わたしたち家族は 言葉にできないほど 愛しているよ うちに来てくれてありがとう 伝わっていてほしい なんて人間のエゴかもしれないけれど その存在が愛おしすぎて それはもう圧倒されるレベルであり 3年経った今でも ずっと泣いているよ 形あるものはいつかなくなるという

【絵日記#こんコロ-DAY123】 お父さんお誕生日おめでとう

文 掛田智子 絵 ちから 美大生だったころの父に会ってみたいと思う のっぽさん帽子に ベルボトムのパンツ 晴れの日に傘を差して歩いていた わたしが描く絵とは全く違うテイストだけれど 両者を知る人に言わせると わたしの絵に父のタッチを感じるらしい うすうす私も気づいていた 考え方や性格は違うけれど 私の背骨には父の思考やアイデンティティがしっかりと通っている そこから血管や関節に分岐してわたしになっているけれど  鏡には父が映る時がある 父という膨大な歴史の上にわた

【絵日記#こんコロ-DAY117】 想像する広島

文 掛田智子 絵 ちから 今日は久しぶりに広島に太陽が戻ったと 母から連絡がきた これだけ雨が続くと 太陽のもたらす効果に驚くけれど 太陽の戻った広島を 目を閉じて想像してみる 実家のそばを流れる川がきっと青い そして水面がきらきらしているのだろう 南に見える山もくっきり緑が見えるかな 母は洗濯をすればよかったと後悔し 犬は天気もお構いなしに しっぽを激しく振って 喜んで歩く 父は暑いと文句を言いながらも 思う存分散歩をさせるだろう 広島 わたしの広島 青い空

【絵日記#こんコロ-DAY110】 母の歩み

文 掛田智子 絵 ちから 昔の母の写真を見るとまるで今のわたし 父の方に顔立ちは似ているのだけど 写真を見ると頬も少しぽってりして いでたちもまるで今のわたし お母さんわたしに似ているね! というと あなたがわたしに似ているの と返す わたしがこれだけ大人になって思い返すと 母の人生のそれぞれの瞬間の彼女の反応の意図とか 仕草とか なんだかわかり始めている おばあちゃんが突然亡くなった後は 不安定だったね 当然だね 運転することにも神経を尖らせていた わたしの歳

【絵日記#こんコロ-DAY89】 母の誕生日

文 掛田智子 絵 ちから 7月22日 母の誕生日 私が世界でもっとも好きなひと この当たり前にある思考や 当たり前にある身体が 感情が 母がいなかったら存在しなかった 人と変わった格好をすることも 休日の日は家にいるよりも外に出たがることも 女性の当たり前の権利を訴えることも 電話では声が大きくなることも すべて母から得ている 電話をしようとして電話を握ったら母から電話がかかってくることなんて数えきれず 鏡を見るたびに母に似てくる自分を喜ぶ きっと私も母も知ら

【絵日記#こんコロ-DAY71】 2人暮らしパート2

文 掛田智子 絵 ちから 相手の放つひとことに 10年以上だったこんにちも きちんときずつく きずついていますよ サインの出し方は20代のころといっしょ ひとつ屋根のしたゆえ 電話にでなかったり メールを返さないことでは サインにはならないだけで 逃げもかくれもできない 追求したくなるけど 答えはわかっている わかってなきゃいけない 追求することだけが答えではない けむりのようにすっと 空気に解き放ってしまおう しん と留まった空気にまざりあう

【絵日記#こんコロ-DAY70】 2人暮らし

文 掛田智子 絵 ちから もう10年以上一緒にいる すいもあまいも 美しいも醜いも 半径50センチの距離で共に見て 表情をよんで 怯えて 怒って 苛立って わかってるようでわからない わかってもらってるようでわかってない 距離が近づけば近づくほど わたしとあなたの境界線はぼやけるけど 越えられない壁はある それで良い 自分への苛立ちは あなたへの苛立ちとして出力されて 御自分への怒りは 私への怒りとしてアウトプットされる すぐにレシーブ決めてボールもどさずに す

【絵日記#こんコロ-DAY60】 風呂上がりアイス

絵 掛田智子 文 ちから 突然子供の頃に食べた  銀紙に包まれたアイスが食べたくなった バニラ味があったかな パリパリチョコみたいなのもあったと記憶する 今でもあるのかな 銀紙に包まれているなんて 四角くて長細くて お風呂上がりにおばあちゃんにもらったな 美味しかったな また食べたいな 子供の頃に大好きで 突然思い出して食べたくなることがあり 今でも手に入るものであれば食べることがある 名前は何と言ったか バニラアイスとチョコがミルフィーユ状に折り重なっていて 包丁

【絵日記#こんコロ-DAY58】 犬のアジェンダ

文 掛田智子 絵 ちから 実家の犬、キャバリアのきりんはよく吠える 散歩の際、ほかの犬とすれ違う時 宅配が来る時 隣の家の屋根にカラスがとまったのが見えた時 先代の犬、キャバリアのちょうすけがあまりにもおとなしかったので 両親も手を焼いている プロに相談し、トレーニングを受けようかと考えたらしい だけれど、吠えてはならないと決めたのは人間たち 人間たちのルールに犬を適応させようとしている きりんは理由があって吠えている 犬だから吠えて表現している それを奪う権利は人

【絵日記#こんコロ-DAY21】 私はさか上がりと跳び箱ができないそして今は誇りを持っている

体育の授業は苦痛だった。運動神経がそれはそれは悪い私は、何をやってもダメだった。ドッジボール、マット運動、徒競走。良い思い出が全くない。 さか上がりがどうしてもできなくて、母と放課後の学校の運動場で泣きながら特訓したのだけれど結局一回もできたことがない。 明日は跳び箱をやります。それは地獄への招待状。一晩中憂鬱な気分にさせた。家で布団を敷き詰めて、母にマット運動を教えてもらったっけ。後ろ回りができなくて。熱が入りすぎた母は、頸肩腕を痛めてしまった。 縄跳びの二重跳び

【絵日記#こんコロ-DAY11】母の強さと弱さ

母は絶対的な存在だ。 何か心配事があって母に相談すると、 「大丈夫」 という答えが返ってくる。そして物事は大抵大丈夫だ。 彼女に物事を「大丈夫」にする力があるというよりも、母としてのパワーが万物を押し切って「大丈夫」にしてしまう。それとも、私が母に大丈夫と言われたことで、大丈夫な道に自ずと進めるという方が正しいか。 そんな母も歳をとる。 目が見えづらくなる。 できなくなったことが増えた。 会うたびに小さくなる。 守っていた立場から、守られる存在になった。 自分でも驚

【絵日記#こんコロ-DAY6】懐かしくてきゅんとするなくなって立ちすくむ

大好きで仕方なくて、無くなってしまった時にあまりのショックに事実を処理しきれず、その場に立ちすくんでしまった経験が、みなさんはあるだろうか。 私はある。 広島金座街にあったパフェのツチイ。パフェ専門店で、考えつくことのできるありとあらゆるパフェを楽しむことができた。チーズケーキがどんと乗っているもの。フルーツで埋め尽くされたもの。モンブラン。チョコレート。グラタンなど食事系も置いてあった。そこはまさに夢の国で、店頭のサンプルを見ているとわくわくして目移りする。 アン