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【絵日記】こんなコロナなご時世ですが#こんコロ2021

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2021年4月25日から、「こんなコロナのご時世ですが2 #こんコロ2 」を連載します。 2020年春、緊急事態宣言発令を受け、mokumoku studioはこの未曾有な時間を…
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#イラスト

【絵日記#こんコロ-DAY129】 蝉つまみ出し

文 掛田智子 絵 ちから 今朝中央線に乗っていると 羽音が聞こえた  あたりの人達みな周囲を見回した でもどこにその音の主がいるかわからない 私は読んでいた本にまた目を向けた そのとき 立っている私の前に座っていたおにいちゃんが 隣に座っているおにいちゃんの背中から 蝉を指でつまみ 幸運にもコロナ対策で開けられている窓からその 蝉を逃した 素晴らしい技だった 落ち着きしかも迅速な技だった 本来なら拍手喝采するべき場面だが 日本の朝の電車社会は人と人のつながりをもとめ

【絵日記#こんコロ-DAY124】 ちょうすけ

文 掛田智子 絵 ちから 今日はちょうすけの命日だ 3年前ちょうすけという愛のかたまり 愛の世界が わたしたち家族からすり抜けて その消えてしまった空虚がどうしようもなくつらく ただただちょうすけには わたしたち家族は 言葉にできないほど 愛しているよ うちに来てくれてありがとう 伝わっていてほしい なんて人間のエゴかもしれないけれど その存在が愛おしすぎて それはもう圧倒されるレベルであり 3年経った今でも ずっと泣いているよ 形あるものはいつかなくなるという

【絵日記#こんコロ-DAY121】 水出しアイスコーヒーの最高峰

文 掛田智子 絵 ちから 近所に老舗のコーヒー豆屋さんがあって 引越してきてからというものかなりの頻度で通う 今年の夏はおじさんの水出しアイスコーヒーが最高で 10時間かけて一滴一滴丁寧に抽出しているらしく ミルクと割っても最高 氷を入れても全く薄くならない これもかなりの頻度で買いに行ってる 明日から数日定休日なので アイスコーヒーがないと生きていけないので 閉店間際駆け込むと いつもの冷蔵庫に入っていない するとおじさんが 「一本とっておいたよ」と裏から出して

【絵日記#こんコロ-DAY120】 なんにもしないことを全力でした日

文 掛田智子 絵 ちから のび太の名言のひとつである 一生懸命のんびりする なかなかできることじゃないか 今日は二日酔いも手伝って 洗濯はしたものの それ以外はパジャマで 一日中ごろんごろん 二日酔いがなければ 疲れているはずなのに生産性をもとめ きっとじっとしていられなかっただろう 二日酔いを肯定しているのではないが たまには良いか 一日中ごろんごろん

【絵日記#こんコロ-DAY119】 Head to toe

文 掛田智子 絵 ちから ぽわんとしている 全身がおもだるい 目を閉じてみると イグアナの滝が全身を駆け巡る つぶつぶが勢いよく 頭からつま先まで ひと方向に流れる 音はない 足の指につぶつぶを感じる 肩にも移動する 肩のあたりは特に重い こめかみにもつぶがある おでこから後頭部に移動する 今日はつぶつぶが消えるまで 観察する

【絵日記#こんコロ-DAY118】 かわいいわたし

文 掛田智子 絵 ちから 何か今日わたし理由もなく美しいじゃん と思う日がたまにある 久しぶりに現場に向かった 久しぶりに人と顔を合わせて仕事をする 昨日の夜はお酒を飲まなかったし 生理もひとやま超えて むくみも落ち着いてきていたし 髪型も特別何かしたわけじゃないけど 今日の顔にあっていたし 服も特別なものを選んでないないのだけど 今日の身体に似合っていたし 肌の調子も良くて 金曜日だし そんな特別ではない日の少しの自分へのきらめきが 結構原動力になる そうやっ

【絵日記#こんコロ-DAY117】 想像する広島

文 掛田智子 絵 ちから 今日は久しぶりに広島に太陽が戻ったと 母から連絡がきた これだけ雨が続くと 太陽のもたらす効果に驚くけれど 太陽の戻った広島を 目を閉じて想像してみる 実家のそばを流れる川がきっと青い そして水面がきらきらしているのだろう 南に見える山もくっきり緑が見えるかな 母は洗濯をすればよかったと後悔し 犬は天気もお構いなしに しっぽを激しく振って 喜んで歩く 父は暑いと文句を言いながらも 思う存分散歩をさせるだろう 広島 わたしの広島 青い空

【絵日記#こんコロ-DAY116】 Undercooled

文 掛田智子 絵 ちから 仕事でもやもやしていたかもしれない 生理も重なっていらいらしていたかもしれない その時流れたのは Ryuichi SakamotoのUndercooled 韓国語のラップなので 意味はわかりきらないのだけど そのメロディに助けられた 少し涙がでるような パワーがあるけど物悲しいような 世の中が嫌いだけど愛おしくなるような そんな瞬間をもたらしてくれた

【絵日記#こんコロ-DAY115】 胸騒ぎ

文 掛田智子 絵 ちから 朝からずっと胸騒ぎがする 胸が痛い 心が重い 心配がつきない 広島では大雨が続く どうなるのか 地盤がこれほどの雨でゆるんでいるのに アフガニスタンはどうなるのか アフガニスタンのピープルは ハイチも ミャンマーのピープルは わたしにできることはないかもしれない 与えられる影響はゼロかもしれない でもずっと朝から心が重い 考えることはできる

【絵日記#こんコロ-DAY114】 電車と本

文 掛田智子 絵 ちから 中央線に乗り込み、あいている席に座る となりのおばあちゃんが本を読んでる わたしもわたしも 本を持っているよ 乗っているのはほんの 15分ほどなのだけど 本を開いてみる 電車の中ほど 読書に熱中できる空間はあるだろうか 山手線にのって ぐるぐる読書の時間 いつかやってみたい 最近はスマホもいいけど 電車で本を読んでる人を多く見かける気がしませんか

【絵日記#こんコロ-DAY113】 グレーという色調

文 掛田智子 絵 ちから 遅めの朝ごはんを食べていると相方が対岸にすわる うちは暗くてもなるべくライトをつけないので 姿がグレーにしっとりと浮かび上がる これほど美しいものはない 思わずiPhoneをたぐりよせ この一瞬を切り取ろうとする わたしの性能良すぎるiPhoneはありとあらゆる光を手繰り寄せ あたかも完璧なライティングがあるかのように相方をうつしだす ありがとう でもちがうんだ 夏休み最後の日 明日の足音が聞こえる緊張感と 聞こえな

【絵日記#こんコロ-DAY112】 選択できるということ

文 掛田智子 絵 ちから 当たり前すぎて 見過ごしているけど 選択肢を持つということ 自分の意思で 責任で どの道を歩むか決められること どんなことを大切にして 何を人生で議論するのか 何を中心に置いて 時間をわざわざかけるのか そしてどんな道を歩もうが サポートしてくれる人がいるということ とても幸せで特別で 当たり前ではないということ かかえきれない感謝の気持ちと 雨音と 眠りにつく

【絵日記#こんコロ-DAY109】 自らの道を切り開くということ

文 掛田智子 絵 ちから 想像を超えていた 祖父母の墓は呉市仁方の山の中にあり それはそれは自然に囲まれた気持ちの良い場所である しかし、頻繁に墓参りにも来れず あたりはもうジャングルと化していた もともと小道があったのだが、雑草で覆われ完全に塞がれていた。これは、少しずつ道を開通させるしかない。斧と枝切り鋏を駆使して道を切り開く。 ありとあらゆる植物。触れようものなら、棘に刺され、抜こうとすると、皮膚を切られる。 必死の思いで墓まで辿り着く。 墓石の中からも何や

【絵日記#こんコロ-DAY107】 晩夏

文 掛田智子 絵 ちから 見つけてしまった ちいさい秋を 感じてしまった 夏の終わりを 暑さの中にもどこか落ち着きがある 入道雲も本気じゃない 夏はもう成熟してしまった  とんぼが5匹飛んでいた ぐうんと空は青いけど もう少しだけ 見てみないふりさせて