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バドミントンがメジャー競技になり切れない理由(4)1ゲーム21点制という愚策

昨夜、バドミントンをライフワークレベルで熱愛する友人からこんなLINEがあった。「今、テレビで卓球選手の活躍が取り上げられている。近年は特にバドミントンの方が国際大会での成績もよい。にもかかわらず、メディア露出度は卓球に惨敗だ。なぜなのか」

国内で大衆に対する卓球の注目度が高まったキッカケは子供の頃から注目された福原愛さんにあるとみていいだろう。彼女が順調に成長し、日本を代表する選手となった。同時に石川佳純さん、平野早矢香さんらと共に世界卓球の団体戦がテレビ東京のゴールデンタイムで放映され、大変盛り上がった。10年ほど前のことかと思う。

その頃、70歳を過ぎていた私の母が楽しみにその中継を視ていた。母は卓球未経験だ。それで気づかされた。卓球は観るだけのファンを掴んでいると。

さらに世界卓球の放送内容は試合だけでない。選手たちの生い立ちや日常のドキュメンタリー映像にまあまあの時間を割いていた。あれも大きかったと思う。ライトなファンに応援対象を明確にしたのだ。

そして、今回の本題。

バドミントン界の課題としてなんといっても見逃せないのが得点ルールの問題だ。卓球は2001年に大掛かりなルール改正を行っている。それまで50年以上にわたって1ゲーム21点先取だったものを11点先取に変更した。加えていうと、テニスだ。1ゲーム4点先取のルールを考えた人は天才だと思う。

観戦人口のスケールでランクづけるとはテニス>卓球>バドミントン=4点先取>11点先取>21点先取。この方程式が見事に成立していると言えないだろうか。同じラケットスポーツだ。だからテニスの得点ルールでバドミントンはできるしバドミントンの得点ルールでテニスもできる。観戦人口という視点におけるメジャー度の違いは得点ルールの違いに過ぎないのかもしれないのだ。

さらにすごいのはサッカーだ。ほとんどの試合が1点差、2点差で決着する。基本的に点が交互に入るバスケやバレーもすばらしい。

要は点差が開きにくく逆転が発生しやすいルールが何気にテレビのチャンネルを合わせた人をひきつけるのである。どちら勝つかわからない状態が長い方が面白いのだ。競技時間中がどちらか勝つかわからない時間で埋め尽くされているという点では相撲もボクシングも当てはまる。

バドミントンのルールは競技者以外にとって面白くもなんともない。ワンサイドゲームになりがちでしかも1ゲームが長い。観るだけの人を掴むという意味では最悪の得点ルールである。

そんなバドミントンもかつて何度も得点ルール改正が試みられた。それは11点1ゲームや7点1ゲームという改正案である。そしてどちらも主要な国際大会でもテスト運用もされていた。改正の狙いはテレビ中継との親和性を考慮してのものと報じられていた。

しかしいずれのケースもルール改正は見送られた。反対理由はプレイヤーズファーストの視点からだ。私も一人の市民プレイヤーとして得点ルール改正案が見送られることを祈っていた。

プレイヤーにとっては1ゲームは長い方が面白い。1ゲーム30点先取のルールだって歓迎するだろう。得点を重ねていく途中でリスクを負ったがゆえの失敗や集中力が切れたことによる失敗を取り返すことが可能である。これはほとんどのプレイヤーにとって安心材料だ。

皮肉なことに1ゲーム21点制は一つの成果を生んでいる。高校生の運動部の連盟登録者数はラケットスポーツNo1はバドミントンで、テニスと卓球を抑えているのだ。

したがって競技人口視点でのメジャー化は見事に成功していると言える。一方、観戦人口でテニスと卓球を凌駕するには、どうすればいいのか。今さら1ゲーム11点先取にしたところで卓球と肩を並べることはできてもテニスを抜くことなどは100年かかってもできそうにない。

しかし私にはテニスよりも卓球よりもエキサイティングな試合を可能にする画期的な得点制の提案がある。

デュースの5ゲーム制だ。7ゲーム制でもよい。2点差をつけた時点で1ゲーム獲得。1ゲームは2-0で終わることもある。9オールになったら最後は10点めを取った方がゲームを取る。決着は例えば4オールからの5点目でも面白いだろう。これであれば競技時間は勝敗の行方が分からない時間で埋め尽くされる。

この方式は実は私が主催する市民バドミントンクラブではすでに5年以上も実験を重ねてきた。考案のきっかけは国際大会を会場で観ていた時だ。会場がうねるように盛り上がる瞬間のほとんどが19オール以降にあったのだ。

まずは各チームで試してみて欲しい。選手も勝負強くなる。そしてバドミントン界全体で、広い視野と高い視座で、1ゲーム21点制との決別を真剣に検討してほしい。

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