共起アムリタ

【小説の仮説】カップルでも対立させた方が良い?

私は物語開始時点から付き合っているカップルを主役に置くことがよくあります。
一人の男性や女性よりも、カップルの方が見ていて興奮を覚えます。
なので主役に置いた男女を、最初から恋愛関係、もしくはそれに近い関係にしたがるところがあります。

ここで気になるのは、
カップルを主役にして物語を書く際に注意すべきことはなにか?
ということです。

私の小説『デスandトモ~死神の手でハッピーエンドを手に入れチャオ☆~』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885472609
を分析してみたところ、一つの仮説が立ちました。

それは、
「カップルでも対立した方が良い」
(=いくらラブラブな二人でも、お互い全肯定だと魅力が下がる)
というものです。

なお分析例として紹介した、
『飛べない澄子の声』も最初から主役二人が恋愛関係にありますので、
こちらの分析結果も併せて見ていき、この仮説を立てるに至った私の思考を説明します。

まずはクロス集計にて、カップル関係にある主役二人が、各話どのくらい登場しているのか比較を行いました。

中盤の特定の話を除き、「アムリタ」が「トモビキ」よりもちょっと多く登場していて、
二人とも似たような登場傾向にあることがわかります。
デストモの主人公「アムリタ」と「トモビキ」、彼らは恋人っぽい雰囲気があるほど親密です。
そしてアムリタが多く登場している回では、トモビキも多く登場しています。
アムリタの登場が少なければ、トモビキも少ない。
これは、二人が大抵一緒に行動していることに起因します。

恋人同士であれば一緒に行動したり、相手のことを思ったりすることが多くあります。
そのため二人の語の登場傾向が似たような形になりやすいのです。
これは分析するまでもなく想像できることですが、想像のとおりであったことが確認できました。

続いては共起ネットワーク図を出します。
「アムリタ」を基準とした特徴語の共起ネットワーク図と
「トモビキ」を基準とした特徴語の共起ネットワーク図、
これを見比べてみます。

この図を出す前に私が懸念していたことは二つあります。
1.どちらの図も同じ語ばかりである
2.どちらかが、他の語との共起関係が希薄になってしまっている

1の場合、いつも一緒にいたばかりに、物語上の役目や立場が一致してしまっていることを指します。
2の場合、カップルのうち片方の存在が濃く、もう片方はそのオマケみたいになってしまっていることを指します。

デストモの場合、2のパターンでした。

1を回避したのは、アムリタとトモビキが別行動をする回が中盤にあったためです。
共起ネットワーク図に現れた語には、この別行動した回にたくさん登場した語が多く含まれています。

アムリタの場合、
「ソルテラ」や「テンデル」など、トモビキと別行動している時に一緒にいたキャラ
他のキャラがアムリタについて話している場面で出た「可哀想」
アムリタの能力に関係する語の「念動」や「欠片」「感じる」、「死神」
といった語が共起ネットワーク図に登場しています。

トモビキなら、
別行動時に戦闘をしていたので「剣」などその場面での言葉が出てきます。

ただしアムリタの時と異なり、トモビキならではの語というのが少なかったらしく、
アムリタとの関係も強いはずの語が、トモビキの共起ネットワーク図のみに現れるということも見られます。
「ピース」がその代表で、これはアムリタとトモビキが二人一緒にいる場面でいつも行われています。
またアムリタの方では「可哀想」といった、物語のテーマになり得る語が見つかるのに対して、
トモビキにはそのような語が見当たらないのも問題点に感じます。

これはトモビキが物語上の役割をあまり持てていないことを示唆しています。

同様のことが『飛べない澄子の声』でも起きていました。
不思議な能力を持つ澄子には物語に深く関する語が登場するのに、
澄子と恋人関係にある大樹にはいまいちそのような語はありません。

物語上の役割が同じになってしまったり、片方の存在だけが濃くなってしまうのは、
二人で一人分のキャラクターとして機能してしまうせいだと私は考えました。
これが今回の仮説です。

一心同体、みたいなものです。
二人がラブラブで常に一緒にいるほど、
二人ではなく一人のキャラクターとしての性質を強めていくのです。

これを回避するのであれば、一心同体ではない状態にするのがシンプルな方法です。
物理的な距離を離すか、精神的な距離を離すか。

ですが物理的な距離を離してしまうと、ラブラブ度も下がりやすいのが気になります。

なので精神的な距離を離す方が望ましいのではないかと私は思います。
つまりお互いに譲れない部分や、相手のことを良く思ってない部分があったり、
相手とは全く違う価値観がありその人独自の世界観を持っていたりする。

そういう方法で、噛み合わなさやデコボコ具合を演出する。
デコボコのコンビというのは人気ある要素ですから、
この解決策が無難なのだろうと思います。

私のように、最初からラブラブな二人を主役にする人がどれだけいるかはわかりません。
しかし途中からラブラブになるという展開も含めれば、多くの方の小説で関係のある話だと思います。
ラブラブになった後、一心同体となって、二人いるのに実質一人のキャラクターとなることが、望むべきことなのか望まないことなのか、意識するとより魅力的なキャラクターが描けると思います。

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