対応分析

【小説の仮説】キャラは文章全体の15%以上に登場させなさい

今回は、パンドラキャンディさんの『荒唐無稽(こうとうむけい)のアニマルビジョン!』を分析させていただきました。
(https://kakuyomu.jp/works/1177354054886032066)

近況ノートや応援コメントを見るに、
登場人物の魅力こそが作品の魅力の中心にあるようでしたので、
登場人物(キャラクター)に焦点を当てた分析を行うことにしました。

今回、分析していくうちに得られた仮説は、以下の三つです。

1.主人公以外のメインキャラは椅子取りゲームをして出番を取り合っている
2.平等に椅子を分け合うよりも、一話ごとに椅子の多くを占有するキャラを決めた方が、読者に好印象を与えやすい
3.キャラを魅力的に見せるなら15%登場させるべし

まずは1の椅子取りゲーム仮説から説明していきます。
椅子取りゲームという表現を、字面の面白さ重視で用いましたが、
陣取り合戦と言った方がより正確な表現かもしれません。

とにかく、メインキャラが多かろうと少なかろうと、
小説内で彼らが登場できるスペースは有限(=椅子や陣地が限られている)ということです。

このことを強く感じたのが、このグラフです。

主人公のミストナを含めたメインキャラ四人のグラフと、
ミストナ以外の三人のグラフ。
その形はけっこう似ています。

この結果から、こんな仮説を立てたんですね。

小説の文章を「カメラが人物を見ている文章」と「それ以外の文章」の二つに分けたとする。
すると基本的に「カメラが人物を見ている文章」の中では「カメラが主人公を見ている文章」が一定以上の割合で含まれる。
つまり主人公は一定の陣地が確保されているが、他のキャラは残りのスペースを取り合うことになる。

計量テキスト分析においては、キャラクターの名前が出ている文章が「カメラが人物を見ている文章」に該当します。
今回の分析対象『荒唐無稽の~~』の場合、ほぼ全話で「カメラが人物を見ている文章」のうち三割以上が「カメラが主人公を見ている文章」でした。(例外は分析した14話中1話のみ)
残りの七割以下を、三人の(場合によってはもっと多くの)キャラクターで取り合っているように私には見えたわけです。

主人公だから目立つのは当然のことです。
しかしそれによって、他のキャラクターたちが目立つ機会が制限されてしまいます。
これも仕方ないことです。
なので既にこの点を意識しながら書いている方もいらっしゃることでしょう。

だから大切なのはここからです。
この椅子取りゲーム。
どういうふうにスペースを分配したら、読者から支持されやすいのでしょうか?

みんなで平等に分け合うのが良いのか?
それとも、第〇話は〇〇さんの話、というように場面やシーンによって目立つキャラを決めた方が良いのか?

カクヨムでは応援コメントという機能があります。
これは各話に感想を書けるシステムです。
ウェブ小説は何十話、何百話にも分割されて書き進められていきます。
そのうちの面白かった話に感想を書くことができるというものです。

『荒唐無稽の~~』の応援コメントを分析すれば、
平等がいいのか、一人を目立たせた方がいいのか、参考データが取れます。

というわけで、応援コメントを分析したグラフがこちらになります。
(話数を斜線で消している部分は、応援コメントが0件であったという目印です)

さらに続けて、これら三人のキャラが小説内でどれだけ登場していたかのグラフも掲載しますので、比べて見てみましょう。

わかりやすく、その回でたくさん登場したキャラが応援コメントでも言及されています。
ツバキだけは初登場時から登場回数が少なめで、そのためか初登場回とその次の回でも応援コメントで触れられています。
ラビィとベリルのみを見ると、
その話の文章全体の15%以上に名前が出てきていると、応援コメントでも触れてもらえています。

【補足】
文章全体の〇%について
たとえばこのような文章があったとします。

Aくんが目を覚ました。
AくんとBさんは朝ご飯を食べた。
ふたりは仲が良い。
Cくんは寝坊した。

今回の分析では、改行ごとに文章を区切る設定で分析を行っています。
その数え方だと、上の文章は4行からなる文章ということになります。
その4行のうち、「Aくん」という語が出てきたのは2行です。
なのでAくんは文章全体の50%に登場した、という解釈になります。
同様に「Bさん」と「Cくん」という語は4行のうち1行で出てくるので、25%と数えます。
「ふたり」とはAくんとBさんを指していますが、これは「Aくん」や「Bさん」としてカウントできません。
計量テキスト分析なので、名前が登場しているか否かに注目してカウントしている点にご注意ください。
つまり計量テキスト分析の上では15%となっても、実際にはセリフ等を含めて15%以上の文章で登場していたものと考えられます。

分析結果の話に戻ります。
応援コメントで触れてもらえるのは、文章全体の15%以上登場した時でした。
この15%という点が気になったので、追加で分析してみます。
主人公のミストナ。
「ミストナ」という語がどのくらい登場していたかというグラフがこちらです。
左にある数値は、文章全体の〇%という意味です。

そして驚くべきことに、ミストナでも15%を超えていた話にはミストナに触れる応援コメントが来ているのです!!

つまりこんな仮説が立ちます。

文章全体の15%以上で登場するキャラは、印象に残りやすい。

これはまだ出来立てほやほやの仮説です。
しかし検証する価値のある、面白みあふれる仮説です!

重要な調査事項と位置づけておきます。
そして、分析の実験台に名乗りを上げてくれた作品の分析をする際には、必ずこの点もチェックしていくことにします。
たくさんの小説を分析して、どのような結果が出てくるか、楽しみですね!!!

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