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読書ノート『黒猫』

私の常の居場所であるところのTwitterがどうなるかわからない感じだそうなので、しばらく止まっていたnoteを動かそうと思っています。

とはいえ、何を書こうか。やもり、ヘビ、カエルたちは各々健在ですが、元気は元気で特筆すべきことがなく・・・小さな出来事を大きく盛って書いたりせず、気楽に書くのがいいんだろうなと色々ネタを探していました。

ところで、ここ数年心の余裕がなくてあまり本を読めていなかったのが、2022年になってぼちぼち読めるようになってきたりして。そこで、読書ノートでも付けたら後から見返すのに良いかなと、noteに読んだ本のことを書きためてみようと思いました。ときどきはいずりものたちやミルワ隊のことも書こうと思います。

ではとりあえず1冊目。

エドガー・アラン・ポー『黒猫』

子供の頃、母親から買い与えられた「青い鳥文庫」の「Kシリーズ」という海外の怖い話ばかり集めた叢書で、ディケンズやポーの怪談と出会いました。その時読んだ中でも一番印象に残っていたのが、ポーの『黒猫』でした。

しかし正確に言えば、印象に残っていたような気になっていたのでした。

思ってたんと違う『黒猫』

最近、久しぶりにポーの『黒猫』を読みました。そしてこう思いました。

「思ってたんと違う。」

その少し前、ポーの『黒猫』を読んだことがないという知人にざっくりとあらすじを説明したとき、私はこんなことを言いました。

「悪ふざけから誤って黒猫の仔を殺してしまった男が、黒猫に付きまとわれ、最終的に処刑器具が安置されている古城に追い込まれて、アイアンメイデンに挟まれて死ぬやつ」

当該作を読んだことのある方はお気づきでしょう。

全然違う。知らん。なにそれ。

ポーの『黒猫』はかわいそう

ポーの『黒猫』は、かわいがっていた黒猫を飲酒癖の悪化で虐待し、ついには殺してしまった男が、罪の意識から別の黒猫を迎え、再び愛育するも、やはり憎むようになり・・・というような話で、とにかく黒猫がかわいそう。

改めて読みながら気がついたのは、「思ってたんと違う」と思いながら、一応これも読んだことがあるにはあるぞ、ということでした。

しかしとにかく黒猫の虐待や殺害の描写が痛ましくてかわいそうで、主人公はクズで(作者自身を投影しているのかもしれませんがそれにしてもひどい)、それでも最後には黒猫が主人公に一矢報いるのですが、そこに至るくだりが、やっぱり「なんでそんなことするねん」といいたくなるくらいかわいそう。

おそらく、あまりにも黒猫がかわいそうなので、ポーの『黒猫』の展開は幼心に記憶から抹消してしまっていたのだろう、と思いました。

『古城の黒猫』

それでは、抹消されたポーの『黒猫』の記憶とすり替わっていた、例の「アイアンメイデンにはさまれて死ぬやつ」はなんだったのでしょう。私の妄想だったのかとも思いましたが、アイアンメイデンに馴染みはないからおそらく違う。きっと「Kシリーズ」に入っていた作品の一つだろう、と推測しました。

それで調べてみたところ、グラム・ストーカーという人の『古城の黒猫』という一編が当該シリーズに収録されていることがわかりました。私はこれを長年、ポーの『黒猫』と混同していたようです。Kシリーズも含め、確認できた限りで『古城の黒猫』が収録されている2点の本が絶版のためすぐに取り寄せることもできず、今は手元にありません。上に書いたあらすじもかなりうろおぼえです。

私があらすじを教えたあの人は、今もポーの『黒猫』を「アイアンメイデンにはさまれて死ぬやつ」だと思っているのかなあ。悪いことをした。嘘を教えられるわ、『古城の黒猫』のネタバレもされるわ、さんざんですね。

『古城の黒猫』はグロテスクで華やかなホラーとして幼い頃の私の印象には残ったようですが、今になるとポーの『黒猫』のほうに、身に迫る恐怖と気味悪さとで軍配が上がるように思います。

でも「アイアンメイデンにはさまれて死ぬやつ」ももう一度読みたい気がするので、今度古書店とかで探してみよう。




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