【31】目に見える増殖に気付く
2021年夏、体重は40kg台になった。告知時よりおよそ20kg近く減り脂肪も筋肉も落ちて皮膚はたるんでいた。減ったものはよしとして、内側で外から見えない異常細胞の増殖が外側に感じる出来事があった。
肛門から飛び出るように会陰にかけて赤く膨らんでいるモノがある。
肛門近くの直腸内側で幅を利かせている異常細胞が増えて出口付近にも押し寄せてきていた。
自己判断で一日に何度もしていたノニジュース浣腸が入りにくくなっていた。(注意:危険な行為です。真似をされても責任は持てません。)
自分でカテーテルを入れるだけで力尽き、馬鹿みたいに大きな注射器のオバケのようなものに入れたノニジュースを、夫に頼んで押してもらっていた。「いつか笑い話になる日が来るから」と笑って言いくるめて。
変なプレイではなく、真っ当に、大真面目に真剣なんだよ。
夫は自分では納得できないのに、頑固に言い張る妻の望みを叶える為に日光浴でこんがり陽に焼けた妻の尻に向かうのは複雑な気持ちだっただろう。危険も充分に理解した上で協力してくれていた夫。(今振り返ると患部に届いていたのは少量で、詰まっていたウンチが浣腸により出るくらいだった気がする)
利く効かない、安全かどうか
恥ずかしいか否か
そんなことよりも
試してみることの方が、ずっと重要だった。
口に出さずにいたけど、悲しい感情のほころびは小さくあった。
それ以上に自分を奮い立たせて光だけを見ていた。
起き抜けには、必ず鏡の中の自分の目を見て私に伝え続けた。
「毎日少しづつ、私の体の全ては、今、益々良くなりつつあります」
by超常戦士ケルマディックさん
ある夜、ベッドで夫と裸んぼになって肌に触れた。あったっかい身体。馴染んだ匂い。安心するのに、なんだか切ない感じもする。
トコトンやっていた食事制限で脂肪が一気に激減。夫が好きな私の丸々と大きかったお尻も、Eカップオッパイも見る影なく消えガリガリの私。標準治療を断って自分で選択した結果の身体。
こんなんなっちゃってゴメンとか、見えない体の変化の怖さとか、不安とか、ぐちゃぐちゃになって夫の胸に顔をうずめる。
私の中に夫を迎えられなかった。
物理的に膣に隙間が無い。
指で触れてみても違和感を感じるゴツゴツ。
増殖した異常細胞はギッシリ膣にまで占拠していた。その硬さと質感にゾワっとする。
異常細胞を減らすつもりでお手当しているのに進行性とはこういうものか。予想以上に速度が速い、漂う乗っ取られ感。
見えないところで勢力を広げていた異常細胞。自分の知っていた身体の形が、違うものになっている事実。
私の内側の周波数はネガティブ優勢の証拠を突き付けられている。それでも外からさすって声をかけ続けた。
毎日少しづつ、
私の体の全ては、今
益々、良くなりつつあります
大丈夫、
よくなる過程にあると言い聞かせて。