見出し画像

イベントレポート「DISK-Over Session vol.5 平山みき、筒美京平と橋本淳を語る」

スージー鈴木さんプロデュースのイベントシリーズ「DISK-Over Session」(ディスカバーセッション)vol.5(7/24開催)は、「平山みき、筒美京平と橋本淳を語る」と題し、二部構成で開催しました。今回も私、アシスタントとして出演しましたので、イベントの様子をレポートいたします。

ゲストに、あの平山みきさんをお迎えし、5月にリリースされたアルバム『トライアングル ~筒美京平★橋本淳★平山三紀 3人の絆~』 収録曲をレコードで聴きながら、当時の思い出やエピソードを語っていただいた今回のDISK-Over Session。後半からは、なんと作詞家の橋本淳さんもご登場され、お話を伺いました。

第一部「平山みきA面セレクション」

この日のコーディネートは「ザ・ルーシー・ショーのイメージ」と平山みきさん。60年代アメリカの雰囲気がとても素敵。もちろん、ラッキーカラーの「黄色」がアクセント。緊張しながらお迎えしましたが、登場されると一気に会場の雰囲気が華やかになります。

和やかな雰囲気の中、アルバム『トライアングル』が作られた経緯をお話しくださいました。筒美京平さんが亡くなられた後、何か残したいという思いから、未発表曲をはじめ、敢えてB面曲やアルバムの中のマニアックな作品を選曲されたとのこと。

中でも印象的だったのは「サンタモニカ マッチョマン」のエピソード。当時は「マッチョマン」という言葉に抵抗があって嫌いだったけれど、後に大好きになった曲だそうです。
「だって、こんな歌を歌う人は、他にはいないでしょ」と。こういう曲がたくさんあることを知ってほしかったという思いから『トライアングル』に「サンタモニカ マッチョマン」が収録されています。

ビューティフル・ヨコハマ

平山みきさんの記念すべきデビュー曲。そこら中に遊び人の男性がいる横浜。そんな横浜で遊ぶ女性が主人公、という歌詞。この曲で、「平山みき=横浜で遊んでる女の子」というイメージがついてしまったのとは裏腹に、ご本人は至って真面目で、それまで横浜に行ったことさえなかったのだそう。

世間のイメージに反発するため、当時、取材の時などに「お酒は飲めません。煙草は吸えません」と言ってアピールされていたそうですが「今思うと、年齢に関係なく、ずっとこういうイメージで来られたというのは最高」とおっしゃっていました。

真夏の出来事

平山みきさんをスターダムに押し上げたヒットナンバー。当初「ブン・ブン」という曲のB面としてレコーディングされましたが、「真夏の出来事」の方が面白いということでA面として発売され、大ヒットとなりました。

この曲で、フジテレビ「夜のヒットスタジオ」に出演し、平山みきさんの人生が激変します。

それまでは普通に街を歩いていたのに、放送の翌日から、街を歩けば誰もが振り返る、声を掛けてくる人もいる。「一夜にして人生が変わった」と。そんなドラマティックな経験をされた平山さん。実は当時、有線放送に電話をかけてご自身で「真夏の出来事」をリクエストされていたこともあったそうです。平山さんのお茶目な一面が垣間見えたエピソード。

ノアの箱舟

大ヒットした「真夏の出来事」の次にリリースされた曲。

ヒットした曲と同じテイストの曲を出せばヒットするというセオリーを踏襲することなく、自分たちが良いと思うものを作るという思いを貫いた筒美・橋本コンビ。確かに、「真夏の出来事」とは全く雰囲気の異なる、とても重厚な曲です。

「すごく歌うのが難しかった」と平山さん。レコーディングの時に、橋本淳さんから教わった歌い方で歌ったら「音が違う」と筒美京平さんに怒られて、その日のレコーディングが中止になったというくらい難しい曲。お聴きいただくとよく分かると思いますが、特にAメロは難しいなぁと思いました。

ちなみに、この曲の個人的オススメ箇所は「きずついた ことりは やさしく だきしめて」の「めて」の部分です。なんともお洒落なサウンド・・・。是非お聴きください。

第二部「平山みきB面セレクション」

後半からは、作詞家の橋本淳さんにお入りいただき、貴重なお話をお聞きしました。

Jazz伯母さん

筒美京平さんが10年ほど前に作られた未発表曲。Bossa Novaのリズムが心地よく、お洒落です。

ライブでは歌っていたもののレコーディングはされていなかったので、きちんとした形で残したいというお二人の思いが実現し、今年の5月にリリースされました。

当初、平山さんは、「伯母さん」はイヤだなぁと思っていたけれど、歌っていくうちに「Jazz伯母さん」が心地いい言葉になってきたそうです。

京平さんの作った曲は アレンジが歌っている

橋本淳さん

筒美京平さんは毎月40枚ほどの輸入盤LPを聴いて、コード進行を研究されていたそうです。「コード進行をとても大事にされていて、それが京平さんの曲の秘密なんです」と橋本淳さん。

歌手よりも前に イントロが歌っている

橋本淳さん

コード進行やアレンジを重要視して作られた楽曲であるが故に、過剰なビブラートのボーカルだとサウンドのバランスが崩れてしまう。「ストレートボイス」の平山さんの声が二人の巨匠に愛された理由はここにあります。

「この人が歌うことによって世界に何かを伝えたい だから平山みきは宣教師のようなものなのです」という橋本淳さんの言葉が、筒美・橋本コンビにとって平山さんがどれだけ重要であったかを物語っています。

あの人は感動を 生み出すお仕事

ラスト・ラブ・ソング

アルバム『トライアングル』のラストを飾る曲。筒美京平さんの未発表曲を完成させたいという思いで作詞された作品のうちの一つ。

この曲の歌詞は、橋本淳さんが筒美京平さんのことを思って書かれました。平山みきさんは「ラスト・ラブ・ソング」について、「京平先生が橋本先生に乗り移って書かせたのかな。哲学的な歌詞だなという実感が沸きました」と述べられました。

昭和の日本歌謡界のレジェンドから貴重なお話をお聞きした90分。お二方のお話を通して、平山みきさんの曲が、今聴いてもお洒落でかっこいいのは、まさに、筒美京平・橋本淳・平山三紀 3人の絆の賜物だったのだと実感しました。

最後に、「DISK-Over Session」シリーズ、第6回は、「林美雄と荒井由実~2022年のパックインミュージック」。『1974年のサマークリスマス』の著者、柳澤建さんをお招きし、荒井由実のLPを聴きながら当時を振り返ります。お楽しみに。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?