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イベントレポート「スージー鈴木さん新刊『桑田佳祐論』出版記念イベント~戦後民主主義を謳歌した言葉」

ついに私もnoteを始めました。記念すべき第1回の記事は、私がアシスタントを務めたスージー鈴木さんプロデュースのイベントシリーズ「DISK-Over Session」(ディスカバーセッション)vol.4(6/28開催)のイベントレポートです。

ご自身の新刊『桑田佳祐論』(新潮新書)発売記念として、南青山BAROOMで開催されたイベント「新刊『桑田佳祐論』読書会~戦後民主主義を謳歌した言葉」。ゲストに「第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞」を受賞された、ノンフィクション作家の細田昌志さんをお迎えしました。ご参加くださった皆様、ありがとうございます。

サザン/桑田佳祐の曲を聴くとき、サウンド重視で、ともすれば歌詞を顧みることが少ないのではないか?そんな問題意識から、桑田佳祐の言葉を改めて掘り起こし、検証するために書かれた『桑田佳祐論』。

今回のイベントでは、その内容に沿って、桑田佳祐の歌詞が表す世界の広さ、深さについて、実際に曲を取り上げつつ、二部構成で語り合いました。

と書くと、なんだか堅苦しいように聞こえますが、実際は・・・とても和やかな雰囲気でした。途中、何度も笑いあり! それもそのはず、スージーさんと細田さんは旧知の仲で、細田さんのラジオ番組『細田昌志の時空旅行RADIO』にも登場しておられます。素晴らしいコンビネーションでした。

第一部「僕と私の桑田佳祐論」

まず第一部は「僕と私の桑田佳祐論」と題し、3人がそれぞれ「この曲、この歌詞の推しはココ!」と “フリップ芸” なども取り入れながら、熱く楽しく語り合いました。テーマは「桑田佳祐との出会い」「僕的(私的)サザン/桑田フェイバリット“ソング”」「僕的(私的)サザン/桑田フェイバリット“フレーズ”」。サザンファンとしてはどれもワクワクするテーマ!

細田昌志さん(中央)とスージー鈴木さん(右)


●桑田佳祐との出会い
・スージーさん、細田さん『勝手にシンドバッド』
・チカチカ『チャコの海岸物語』

●僕的(私的)サザン/桑田フェイバリット“ソング”
・スージーさん『メロディ(Melody)』
・細田さん『さよならベイビー』
・チカチカ『EMANON』

●僕的(私的)サザン/桑田フェイバリット“フレーズ”
・スージーさん「しゃぶりつくように Patiently」/思い過ごしも恋のうち
・細田さん「時折さめた笑顔の君 濡れない夜もある 二人だけになればとびきりShyな人」/Just a Little Bit
・チカチカ「何故に人は旅路の果てに 思い出を捨てに行く」/慕情

あなたのフェイバリットは入っていましたか?

印象的だったのは、細田さんの「さよならベイビー論」。

細田さん「イントロの出だしに全部持っていかれるんですよ!」

細田さんのフェイバリット・サザン/桑田ソング
『さよならベイビー』


細田さんがこの曲をフェイバリットに挙げた理由は、イントロ。

そうそう!サザンファンならきっと分かりますよね。そして、フェイバリットフレーズのコーナーで、スージーさんが「桑田佳祐の歌詞は情景描写をあまり具体的にしない。『夕陽に別れを告げて』とか『遠い街角』も、どこの街なのか分からない。だからこそ聴く人によって解釈の幅が広がる。」と解説されました。

確かに、3人が挙げたフェイバリットフレーズが入っている曲も、具体的な場所やシチュエーションは、明確ではありません。(特に“しゃぶりつくように Patiently”)この3つのフレーズを見るだけでも、桑田佳祐の歌詞が表す世界の広さが見て取れますよね。

第二部「『桑田佳祐論』読書会」

「今日この場が、ROCK AND ROLL HEROについて語られる起爆剤になればいいなと思ってます。」というスージーさんの言葉でスタートした第二部。『桑田佳祐論』の中からメッセージソングに焦点を当て、3人で語りました。

メッセージソングを取り上げた第二部

安保(まも)っておくれよLeader
過保護な僕らのFreedom

ROCK AND ROLL HERO

屈指のアメリカ音楽好きの桑田佳祐がアメリカに対して疑義を唱えるという逆転構造。しかもCMソング。

細田さん「桑田佳祐は、敢えてCMで完全犯罪を狙ったんじゃないかな?」
スージーさん「コカ・コーラのCMソングですもんね」

CMソングのど真ん中に鋭いメッセージを入れるという「愉快犯」っぷりを語るお二人。こういうメッセージソングが増えてもいいのに、どうして若手のミュージシャンは歌わないのか。

チカチカ「メッセージソングって、なかなか若い世代に届かないと思うんです」

政治のことを歌で語るのは、なんとなくダサいという風潮があるのは事実。主義主張は持っているけれども、楽曲にのせなくてもいいのではないか、というのがあるのかもしれない。

ノンフィクション作家の細田昌志さん

細田さん「でも桑田佳祐はそんなモン関係ないと思ってるから歌うし、敢えて商業ロックとして入れ込む。で、ニヤっと笑ってる感じがします」

政治的な歌を、70年代フォークのような雰囲気は出さずにサラっとロックで歌う桑田佳祐。
チカチカ「それって、桑田佳祐の声とか歌い方によるところも大きいですよね」

「レジスタンスの香りを出さないじゃないですか。俺は、歌いたいから歌うよ、ってサラっと歌っちゃいますよね」という細田さんのコメントに対する「もっとみんな、メッセージソングもあっけらかんと歌えばいいのにな」というスージーさんの発言は、この本を書くに至った理由の一つとのこと。

著者のスージー鈴木さん

20世紀で懲りたはずでしょう?

ピースとハイライト

「戦争の世紀」とも言える20世紀。桑田佳祐が「20世紀で懲りたはずでしょう?」と歌うことは「お花畑」なのか。

スージーさん「桑田佳祐は、“分かってるよ。みんなお花畑って言うだろ?”って感じでしょうね」
細田さん「“絵空事かな?”って言ってもいいかな?っていう桑田佳祐なりの問いかけだと思う」

この曲も、CMソングでメッセージを歌った「完全犯罪」。こんな曲でもCMで堂々と流してしまう。地上に愛を育てようというメッセージは、“お伽噺かな?”。

チカチカ「でも、政治的な歌が今の日本の聴衆に届くのは、なかなか難しいんじゃないかなって、思っちゃいます」
細田さん「そういう意見もあるでしょうね。たぶんね、歌詞が気に入らない人はメロディだけ楽しんでね、サビだけ楽しんでねという選択肢を与えてくれてると思う」

「ハイライト」もダブルミーニングだと深読みせず、タバコのハイライトだと捉えていいじゃん。聴く人によって解釈の幅が広がる、という特徴がこの曲にも表れていると言える。

最強バッテリーの細田さんとスージーさん

年を追うごとに言いたいことを惜しみなく出している桑田佳祐。

「桑田佳祐の曲は、無意味な歌詞を意味から解放されたと解釈して聞くのが正しいと思ってます。歳を重ねて、時々こういった政治的な歌をもっと歌っていってほしいですね」と細田さん。

色んな事情があるけどさ
知ろうよ 互いのイイところ!!

ピースとハイライト

スージーさんの心に響いた桑田佳祐のこの歌詞は、今こそ多くの人に聞かれるべきときかもしれない。

サザン/桑田佳祐の言葉について、桑田佳祐チルドレンのお二方と語った時間は、まさに「あっという間の夢のTONIGHT」。もっともっと色んなお話を聞きたかったなぁ。

「あっという間の夢のTONIGHT」でした

今回、改めてサザン/桑田佳祐の歌詞を読み返し、「これはこういう事を歌っていたんだな」と気付かされることもありました。聴く人によって解釈の幅が広がる桑田佳祐の言葉。身近な方と「僕と私の桑田佳祐論」を話してみるのも楽しいかもしれません。

DISK-Over Session」シリーズは毎月、南青山BAROOMにて開催しております。
毎回異なるアーティストのレコード盤を高品質サウンドシステムで聴く、
スージー鈴木さんのトークイベント。
是非遊びにいらして下さい。

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