ミ來週報2021-1

一歩も外に出ない元日を始めとして、近所の買い物くらいにしか行かない年明けであった。デリバリーで届いたドミノ・ピザを食べながらビールを飲みつつBリーグの試合を見たのがなんだかそれらしくて(正月らしくはないが)楽しかった。あとは普段の休日とさほど変わりなく、テレビでサッカーを見たりマンガを読んだりして過ごす。

読み返したマンガの1冊が相澤いくえ「モディリアーニにお願い」4巻で、そこで主人公の一人であるもっくんが、亡くなった妹が生前話していたパン屋のシフォンケーキを藤本・千葉と一緒に食べるシーンがある。妹の話は大切な思い出ではあるが、同時に思い出すのがつらいものにもなっている。

世界は、
何かとお別れすると、それを思い出す装置だらけになってしまうから。
(p.163-164)

もっくんは2人には妹の話なんてしないけれど、信頼できる友だちと一緒に新しい思い出を作りそれをシフォンケーキに重ねることで、前に進もうとしているように見える。

思い出はたやすく人を引き止めて動けなくしてしまう。ぼくは音楽で特にそれが強く想起されることが多くて、高校3年生の文化祭の準備をしていた頃よく聞いていた椎名林檎の「無罪モラトリアム」はその後しばらく聞けない時期があった。どちらかといえば良い思い出のほうが多くても、何年経ってもそのときの気分や気持ちがありありと蘇ってしまうとときに生活に支障をきたすことがある。もっくんのシフォンケーキを見てそのことを思い出していた。

「無罪モラトリアム」は少し時間を置いてからまた聞くようになり、それで慣れて当時の空気を喚起する力は薄まった。良いことなのかどうかはわからないけれど、完全に上書きされるわけではないというくらいのバランスで、多分ぼくはそれを持ったまま生きていくのがいいんだろうなと思う。

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雨の日に転ばないでねとりあえずピザを取るのは禁止にするね


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