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第22回 綿づくりから地域活性化〜綿から生まれたマヨネーズ!?〜

日時:令和5年10月17日(火)12:15~13:15
場所:神戸大学農学研究科 地域連携センター


ゲスト
メインスピーカー
神戸大学4年生
濱田 紗希さん

サポート
ため池みらい研究所
山田 真輝さん


今回のA-Launchは、神戸大学4年生の濱田紗希さんとため池みらい研究所の山田真輝さんをゲストにお迎えしました。
綿づくりから地域の活性を目指すプロジェクトについてお話しいただき、調査・研究地である加古川市についても学べる貴重な機会となりました。
また、前回同様、オンラインと現地で発表を観覧できるように開催し、後半では登壇者のお二人と観覧者でディスカッションする時間もあり、盛り上がりました。

今年の5月から10月にかけて、ため池みらい研究所で行われた《ため池アクション》。参加した学生が3つのチームに分かれ、それぞれ課題のある地域で地域活性化に取り組むプロジェクトであり、神戸大学の濱田さんはこのプロジェクトに参加し、その成果報告を今回のA-launchでの発表を行うこととなりました。

濱田さんが参加したチームでは[国産コットンの生産から地域ブランド創造を考える]というテーマの元、活動を行いました。
活動の中ではコットンだけじゃなく、農業者とのコミュニケーションや農作業のお手伝い、イベントに参加をするなど、幅広く活動することで地域の課題や交流の大切さ等が見えてきたとのことです。



地域課題を肌で感じ、地域関係者と交流を重ねてインプット

6ヶ月という短い期間の中、活動内容やアイデアは沢山出てきたが、限定して活動を行う大変さがあったと述べます。

活動地域である加古川市志方町広尾東地域でどのような課題があるのかを、地域住民や関係者と話し、また実際に農作業や交流の機会を設けることで、理解を深めていきました。


プロジェクト期間中に参加した農業体験


活動を通して、地域住民や町内会長さん、営農組合、地域の企業に話を聞くことで
主に

  • 人口減少や後継者不足

  • 地域ブランドの確立

  • 地域の活性

が課題として浮き彫りになってきました。
また、地域の農作業に関わることで「農作業の大変さ」「地域の温かさ」など関わらないと見えない景色が見え、関わることで地域の方に認知してもらえるという良い影響が生まれたことも新たな収穫になったようです。

(活動をしている中で、地域の交流の場に普段は顔を出されない方も覗きに来られたのだとか。若者の影響なのか、活動の噂なのか、活動が生み出すエネルギーの大きさを感じました。)

インプットを通して見えてきたチームでできる『活動』

上記の地域課題を通して、どのように地域活性化を目指すのか…
濱田さんのチームでは、大きく分けて

  • 発信すること

  • 地域の活動に学生が主体的に参加すること

の2項目で課題解決・地域活性化ができるのではと考えました。



上記の目的に沿った活動を行うにあたり、6ヶ月間という短期間で活動をして成果を得るために、内容を絞りながらチームで具体案を検討することに苦戦されたそうです。

そして、
コスモスまつり」への主体的な参加と
綿マヨ(綿から生まれたマヨネーズ)のクラウドファンディング
の2つに絞って活動を行うことに決まりました。

インプットからアウトプットへ ー見えてきた課題を解決する活動へー

コスモスまつりへの”主体的”な参加

コスモスまつりは毎年行われる地域のイベントであり、地元の農産物の購入や地域の交流の場になっており、地域の活性に寄与しています。SNSや新聞などのメディアに取り上げられることで年々来場者が増えているイベントです。

濱田さんの所属するチームは、コスモスまつりの運営をサポートする形で参加することで地域活性化を促進する活動を行われました。詳細として、フォトスポットの場(トリックアート)を設け、その他のフォトスポットも含め、撮影補助を行うことで外部の人が当該地域の良さを発信しやすくし、地域活性化に繋がる動きや、地域内外の来場者に営農の取り組みについて関心を持ってもらうコミュニケーションを積極的にとる等を実施されたそうです。



まつりに参加されて、インプットの時とは異なる成果も得られたそうです。それまでの地域内の住民のみとの交流だったのが、地域外からの方との交流も出来たことで当該地域のブランドを感じ、新たな地域の魅力を知れたようです。また、車で来場される方・レンタカーを借りて来られる方も多く、まつり自体の需要も知ることが出来たようです。

綿づくりで地域を活性〜綿から生まれたマヨネーズ〜

綿花の産地でもある加古川市志方町広尾東地域。産地としての綿花の活用で地域活性化を促すべく”綿から作るマヨネーズ”当該地域の企業✖️営農組合✖️ため池みらい研究所(当プロジェクトチーム)の合同チームで考案。
ここに至るまでに地域の課題として

・播州木綿の衰退
・耕作放棄地の増加
・働き手、後継者の不足
・綿花価値低迷

が当該地域の企業(かこっとん株式会社)にお話を伺い、”綿から作るマヨネーズ”での課題解決に行き着きました。



まだ実験段階ですが、今後地域農産物が売れることで、下図のように巡り巡って、地域や地域農業の継承につながることが期待されています。


マヨネーズ(播州木綿由来)が売れることによる地域活性のサイクル


また、合同チームでクラウドファンディングをすることに決め、マヨネーズのデザイン・ターゲットの設定・サイト作成等、商品開発と販売までの足掛けをこれまでに行い、クラウドファンディングをスタートしました。
A-Launchでの発表日(10月17日)スタートしたクラウドファンディングは11月初旬の1ヶ月で達成し、今後の動向に目が離せません。

▼クラウドファンディングページ▼

※支援募集の期間中は金額が達成していますが、追いかけての応援も可能です。原材料費やこのプロジェクトを進める上で皆様の応援をまだまだ募っているとのこと。是非、これまでの活動を知っていただく場合にもリンク先のページをご覧になって下さい。

活動のまとめ

以上の活動を通して、濱田さんはチーム内や関係者間での合意形成を大切にして進めることで、スムーズに活動を通すことが出来たと述べます。《ため池アクション!》というプロジェクトに参加した大学生4名で構成されるチーム、年齢も違えばプロジェクトに何に興味を持って参加されたかは、それぞれ全く違ったそうです。チームで活動をする上では、各々の興味に沿っているか・各々の収穫があるのか、などを合意形成を行ったことがスムーズに進める上で良かった点だそうです。

また、地域の関係者に関われば関わるほど、地域の新しい魅力を知ることができ、逆に活動を重ねるほどに地域の方にチームやチームの活動を知ってもらうことができ、地域と一体感を持って活動を行うことができたそうです。
一方で、活動の期間がインプットを含めて半年しかないことが、余裕を持った活動の準備ができなかったこと。全地域住民へのヒアリングはできず、プロジェクトを通して地域に還元・貢献できることは何か、の正解を出すことは叶わなかったことが悔やまれたとのことでした。
半年間の活動を通して、当該地域に愛着を持ったことで、これからもチームで関わりを持って地域活性化に貢献していきたいと述べられています。


濱田さんからの発表は以上でしたが、発表を終えて観覧頂いていた方々に質問を頂く時間を設けることができました。

例えば、今回の活動のような地域貢献や地域課題の解決を研究として行う学生や研究者は多く、活動の成果を考える際には定量的な評価軸が難しいこともある中、「活動が地域にどのような影響が与えられたか、その評価軸はどのように考えているか。」という質問がありました。
濱田さんは、「今後のクラウドファンディングでの結果やそれを基に今後行なっていく《綿マヨ》の生産や販売における地域への影響、発表後も続くコスモス祭りの来場者数などが定量での成果に繋がっていく為、追いかけていきたい。」と濱田さんは回答していました。
寧ろ発表後、活動はさらに本格化していく様子で、地域連携センターとしても引き続き追いかけて行きたいと思います。

また、「プロジェクトを行った地域に何年くらい関わる想定をしているか。」という濱田さんが在学中の環境での参加であることも踏まえ、毎年同じ内容量で関わり続けられるのか、という疑問も含めての質問を頂きました。
濱田さんは、「プロジェクトを行った地域は、今後も関わっていきたいが、自身の環境も変わっていく為、関係していく内容も今回同様には出来ないだろうことは考えている。学生としての関わりは最長2年である為、今後も自身の代わりとなる地域活動に興味のある地域後継者や学生を繋げる動きができたらと考えている。」とのことでした。今後濱田さんの後継者へ繋いだ後も、時間を経て地域の課題も変わる可能性もある為、地域への関係性や活動の見直しを数年に一度見直す必要もあるというコメントも質問者から頂きつつ、濱田さんの今回携わった地域への思いも聞くことができました。




発表を聞いて、プロジェクトは半年間という短い期間ですが、時間よりも関わる質や行動力、濱田さんグループのバイタリティに感動しました。また、携わるうちに関係人口が増え、半年前には縁(ゆかり)も無い地域だったとは思えないくらいに濱田さんは加古川市志方町広尾東地域のことを熱くお話されていました。地域の活性化に真摯な取り組みとその様子は地域連携センター全体として学びになりました。

今後の活動も地域連携センターで追いかけて行きたいと思います。
濱田さん、山田さん、素敵なA-launchをありがとうございました。



農学研究科地域連携センター
太田 聖人



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