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第8回 サクラソウ咲く景色をふたたび 〜守るために、知ること・伝えていくことの大切さ~

2014.01.20
吉田康子
食資源教育研究センター 植物遺伝資源開発学 助教

概要
かつては日本各地で春先にピンク色の可愛らしい花をさかせていたサクラソウも、現在は絶滅危惧植物に指定されています。以前のようなサクラソウが咲く景色を求め、日本各地で地道な保全努力が続けられています。
吉田先生は、サクラソウの保全を目指して、全国のサクラソウの自生地を訪れ、現存する遺伝的な多様性を「評価(知る)」してこられました。一方で、地元のボランティアや小学生と一緒に観察会や勉強会を行い、サクラソウ特徴や正しい保全の考え方を「伝える」活動も熱心に行われています。
可憐なピンクの花の魅力と、その多様性を地域単位で保存していくことの大切さについて伺いました。

第8回A-launchでは
植物の遺伝資源の保全に関する研究をされている
吉田康子先生(農学研究科附属食資源教育研究センター
資源開発部門植物資源開発分野助教)をお迎えし

サクラソウ保全のための取組みについてお話を伺いました。

サクラソウはアジア北東部、日本に生息する多年草です。
日本では北海道から九州にかけて分布しています。
ピンク色をはじめとし、白、紅、紫のきれいな花を咲かせます。

江戸時代には園芸品種として親しまれていましたが
現在では準絶滅危惧種に指定されるほどに数が少なくなりました。

このサクラソウですが
個体数が減っているだけではなく、遺伝的な多様性も低下しています。

遺伝的な多様性が低下している状態とは
遺伝的に近い個体、もしくはクローン個体のみで
集団が構成されていることです。

このような状態は
環境変動に適応できずに絶滅する可能性を高めます

吉田先生は
サクラソウの保全のためにさまざまな活動を行われています。

園芸品種の作出源である埼玉県荒川河川敷では
サクラソウの多様性低下の対策を提示されました。

アサインメントテスト
という
個体がどの集団に属しているのか分析する手法を用いて調査された結果
クローン個体が多いこと種子ができにくいことが判明し
それを踏まえ

種子シードバンクもしくは移植を行うことが
多様性の低下を阻止する可能性が高い


と地域に提示されたのです。

また
より多くの人にサクラソウについて知ってもらうために
つくば市でサクラソウの展示会の企画などもしてこられました。

吉田先生は

「サクラソウが増えることで人の暮らしに直接役立つことはない。
 けれども
 サクラソウを通じて自然の保全を考えるきっかけになれれば嬉しい。」

とおっしゃっていました。

会場には、教職員や学生など約20名の方が参加され
中には
「サクラソウについて研究したい」
と言って、熱心にメモを取る学生もおりました。

より多くの人に
自然の保全について考えてもらえる機会
になったのではないかと思います。

お話の後には
自生地ではないにもかかわらず
自生地をうたって営業が行われている自然公園などについて
参加者の方と積極的に意見交換がなされ
活発な会となりました。

また、当日は、食資源センターで現在品種登録をすすめている
播磨の新しい特産品「はりまる」をはじめとした
4品種の馬鈴薯の試食もおこないました。

食資源センターの取組みについても知ることができ
有意義なお昼のひとときでした。

中塚万智

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