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名前のはなし

2021年に子どもが生まれました!
親になるにあたって迷走しまくったのが、名前。
これはその備忘録です。

先に言っておくと、以下は私の考えであって、誰かの名前をどうこう言う気は一切ありません。子どもの名前で悩みまくったからこそ、どの名前も素敵だなと心底思っています。

名前って

名前って大事だよね。一生使う名前。どんな時にもついて回る名前。家族からも友達からも恋人からも先生からも上司からも他人からも呼ばれる名前。SNSのアカウント名とは全然重みが違う。
子どもの名付けサイトを見ていると「親からの最初の贈り物」と書かれている、それが名前。

だから、「名付け」って重い。本当に重い。自分の名前を決めるならまだしも、生まれてもいない会ったこともない人の名前を、親だからという理由で考えなくてはいけない。まだ子どもが生まれてなくて親の自覚すらないのに。

そのうえ、名前って自由。
2音以上、使える文字は3000字近くある。一つの漢字で何通りも読み方ができるし、漢字ひらがなカタカナの組み合わせも選べる。いったい何通りの名前を作れるの?
膨大な数の候補から絞り込んでたった一つに決めて、それを我が子に贈る。そして一生使ってもらう。
名前を決めるのは難しい上に責任が重い。しんどい。

とはいえ考えなければいけないのが名前。
本格的に考え始めたのは性別が判明した7月中旬で、タイムリミットは生まれる日。たった5ヶ月で一人の人間が一生使う名前を決めなければいけなかった。

五里霧中の名前探し

まず最初に夫婦で話した「名前で外せないポイント」は、読みやすく、呼びやすく、書きやすいこと。これだけの条件だと全然名前が絞れないから、他に何かあるかを話し合った。
使いたい漢字→なし!
使いたい音→なし!
家族伝統の名前のルール→なし!
親の漢字をもらうパターン→ピンとこない!
名前を決めるとっかかりすらない状態からのスタートだった。

困った私たちは名付けの方法を見まくった。名前とは「どんな人になってほしいかの願いを込めると良い」らしい。そこでまた夫婦で討論開始。名前に使われる漢字の定番を一個ずつ精査した。
「友」達はそんなに多くなくてもいいかな。私たちも友達少ない方だし。
「優」しい方がいいとは思うけど、優しくなくても楽しく生きてくれればそれでいいかな。
「賢」いと人生がちょっと楽かもしれないけど、勉強ができなかった時に自分の名前に苦しまないかな。それに別に賢くなくてもいいしね。
「夢」はあったら良さそうだけど、そもそも私たちも夢なんて特にないよな。でもわりと楽しく生きてるし夢はなくてもかまわないな。
人との「和」は大事だけど、孤高に生きるのもありだよね。人に合わせて生きるのって疲れちゃうし。私たちも1人で過ごすの好きだし。
世界に「翔」びたつのはかっこいいかもしれないけど、地域に根付いて生きるのもすてきよねぇ。
「健」康は大事だね。でも暴飲暴食して太く短くワイルドに生きても良い人生になるかもしれない。親としては寂しいけど。

決まらな〜〜〜い!!
考えれば考えるほど、「こうなってほしい」という具体的な像が浮かばない。むしろ「こうなってほしい」というのが親のエゴのような気がしてきて、そういう漢字を選びたくないとすら思い始めた。

このあたりから薄々気づいていた。名前の候補は膨大だから消去法では埒があかないって。
いっそのこと誰かに名前を決めてもらいたい、お坊さんに相談するのはどうだろうかと夫は言い出したし、私もそれもアリだなと思い始めた。それでもやっぱり「親からの最初の贈り物」だから考えてあげたくて、名付けサイトを巡ってとっかかりを探し続けた。

世界に羽ばたかなくていい。
社会で活躍しなくていい。
優しくも賢くもなくていい。
たくさんの人に愛されて生きてくれたら嬉しいけど、あなたがそれを望まないならそれでもいい。
周りの意見とか、社会的な評価とか、そんなのもどうでもいい。

でも、どんな人生かはなんだっていいけど、どんな人になってもいいけど、自分で自分の人生に満足していてほしい。
人生の節目節目で「あーーー、いい人生だなぁ」ってしみじみと思ってほしい。

そんなふんわりとした祈りのような想いを、なんとかして名前に落とし込みたかった。

試行錯誤の果てに

名前を考え続けて2ヶ月半、9月のその日もごろごろしながらパソコンを眺めてあーでもないこーでもないと話をしていた。そんな中でポンッと一つの名前にたどり着いた。
意味、よし!
呼びやすさ、よし!
書きやすさ、よし!
読みやすさ、2パターンあるけど捻ってはないからよし!
ひとつ名前の候補を出せたことに心の底から安心したのをよく覚えている。「他の候補もいくつか出して、生まれてから選べばいいね」って言っていたけれど、結局このときの名前に勝るものは生まれるまでに思いつかなかった。

これしかないと思えた名前だった。それでも、この名前でいいんだろうかと何度も考えた。だって一生使ってもらうことになるから。改名を望まれない限りは。

どうか良い人生を

子どもが生まれて1時間後くらいに、助産師さんから「名前は決めてるの?」と聞かれた。ドキドキしながら名前を伝えたら好感触で、心の底から安心した。考えて煮詰まりすぎて、トンチンカンな名前になってたらどうしようと思ってたから。

新生児用の小さなベッドで眠っている生まれたてほやほやの小さくてかわいい赤ちゃんが、自分たちが考えた名前で呼ばれているのを聞いた時、なんともくすぐったくて、嬉しかった。
生まれてから8ヶ月経った今でもそう。名前を呼んでもらうたびに嬉しい。

あなたの名前に願いを込めた。
あなたが名前を呼ばれるたびに、
あなたが名前を名乗るたびに、
あなたが名前を書くたびに、
名前があなたを幸せへと導きますように。

赤ちゃんをかわいがれるかなって心配していたはずなのに、お母さんもお父さんも生まれる前からあなたのことが大好きだったみたい。
あなたの望むように、あなたの人生を生きてね。