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令和5年度大阪大学基礎工学部編入体験記

はじめに

はじめまして.ちぃさんと申します.
大阪大学基礎工学部 情報科学科 ソフトウェア科学コースに合格しましたので体験記を投稿します.これから同校を受ける方の参考になると幸いです.

同じく阪大基礎工の方がおられたら,TwitterのDM(@chii560)にでも連絡してくれませんか.友達になってください.同期の知り合いがいません助けて.

自己紹介

  • 出身 - 某高専情報工学科

  • 席次 - 1-4年1位

  • 受験年度 - 令和5年度

  • 受験学科 - 情報科学科 ソフトウェア科学コース

  • 併願大学 - 同高専専攻科,大阪大学工学部(辞退)

  • TOEIC - 805

順位は真面目さの指標でしかないのかもしれません.私は勉強は好きですが, 周りには専門分野でもっっっとすごい先輩や友達がいたので楽しかったです.

挑戦したい大学があるなら挑戦するのが吉
受験勉強を始める前に様々な大学を調べておくことをお勧めします.本当に進学したいか? したいことができるのか? などを自己分析しながら決めましょう.

私は筑波大学とかなり迷いました.筑波大学と阪大基礎工学部は2年連続(R4, R5)で試験日が被っていたので,両方を考えている人は注意した方がいいかもしれません.

概要

大学編入は情報戦です.私は他学科の先輩に阪大合格者の方がおられたため,いろいろとアドバイスやら過去問の解答やらをいただきました.本当に感謝しかありません.

過去問は幣高専の資料室から,解答は先輩からいただきました.昔の過去問の解答が載っている素晴らしいサイトがあったので以下に示します.

勉強内容

実際に使用した参考書の詳細とおすすめ度等は別記事に記録したいと思いますので,ここでは省略します.私が勉強した参考書をすべて記載しています.

大体の参考書は図書館にあるので,それを活用することをお勧めします.図書館は偉大だと思います.後述する使用した参考書の内,数学2冊,物理2冊しか購入しませんでした.

また,基本的に参考書は周回するのですが,2周目は1周目で間違えた問題だけ解いているので,3周したと書いていても実際の3周目は10問くらいしか解いていなかったりします

勉強記録を残すことをお勧めします.StudyPlusがおすすめです.
長期休暇中は平均5時間程度,試験1か月前の平日は平均6時間,休日は11時間勉強しました.

英語

英語は来年度よりTOEICに置き換わるため,勉強内容は省略します.
TOEICは2年で500点,4年6月で740点,4年12月で805点という推移でした.私はオンライン英会話を3年近く続けており,それがリスニングなどに直結してスコアが伸びたように感じます.絶対というわけではないですが,英会話はオススメです.

数学

数学は微積分,線形代数,確率の3問構成を2時間で解きます.

微積分は偏微分,重積分,微分方程式などが出ます.過去問特訓のB, C問題程度の難易度です.

線形代数は行列の対角化,一次変換,固有値固有ベクトル問題などが出ます.過去問特訓のB問題程度の難易度です.

確率は幅広く,球を取り出したり,コインを投げたり,確率漸化式を解いたりします.過去問特訓に例題として載っている阪大の確率問題は,阪大確率の中でも難しい方だと思います.平成20年度あたりはかなり難しい確率の証明が出ており,最近は球を取り出すなど易化していましたが,今年は難化しました.


使用した参考書

  • 徹底研究(3周)

  • 過去問特訓(3周)

  • 大学編入のための数学問題集(2周)

  • 大学編入試験問題 数学/徹底演習(0.3周)

  • 細野真宏の確率が本当によくわかる本(2周)

  • チャート式 基礎からの確率統計(0.01周)

  • + 高専の教科書(n周)


勉強スケジュール

3年の10月くらいから徹底研究を解き始めました.1週目は割と時間がかかり,高専の教科書を併用しながら理解しました.
徹底研究を1.5周したくらいで過去問特訓を解き始めました.C問題は難しいものも多いです.わからなければすぐ答えを見て効率化を図る方もおられますが,私はできるだけ解けるまで考える方法をとりました.これは人によると思います.

4年夏休み終わりまでには徹底研究を2周,過去問特訓を1周しました.
4年冬休み終わりまでに過去問特訓を2周しました.
その後,細野確率を2周ほどしました.総合問題が東大や京大の問題ばかりで,阪大の編入対策には難易度が丁度よいと感じました.

5年5月ごろから大学編入のための数学問題集を解き始めました.B, C問題を一通り解きました.C問題は面白い問題が多いです.阪大の問題は全然ありませんでした.

5年6月ごろから大学編入試験問題数学/徹底演習を解き始めました.数学が大体解けるか確認するという意味合いでこの本を選びました.実際,過去問特訓は何周もしすぎて答えが頭に入っていたので,未知の問題のほうが楽しいだろうと考えました.難しそうな面白い問題(阪大や筑波,京大,東大あたりがおすすめ)だけをピックアップして解きました.大学編入のための数学問題集に比べてこちらは阪大の問題が多いので良かったです.ただし,工学部の問題と混ざっているので注意が必要でしょう.

同時期にチャート式基礎からの確率統計を解き始めました.私の理解が乏しい部分の必要な問題10問くらいのみを解きました.ほかの本でもよかったのですが,装丁が美しかったのでこれにしました.古い本なので図書館に置いていない高専もあるかもしれません.最近のチャート式でもよいと思います.

試験前日は大学編入試験問題 数学/徹底演習を解いて精神統一をしました.

物理

物理は力学,電磁気学,熱力学の3問から2問選択を1.5時間で解きます.(ソフトウェア科学,計算機科学コースの場合)

力学はほぼ剛体が出ます.何年か前に一度だけ第一宇宙速度的な問題がありましたが,ここ15年はほぼ剛体といって過言ではないでしょう.棒を振動させたり,滑車をころころしたり,球をころがしたりします.運動量保存則,角運動量保存則,エネルギー保存則,運動方程式,回転運動方程式,運動条件(すべらずころがるのか?など)をきちんと理解して解けるなら大丈夫でしょう.

電磁気学は幅広い出題です.電場や磁場,電磁誘導などから出ます.年によって難しかったり簡単だったりします.何年か前に電磁波が出ており,びっくりしました.一応勉強はしていましたが,電磁波が出たら電磁気はパスしようと考えていました.

熱力学はサイクル,気体分子運動論,ピストンによる操作が出ます.最近は易化する傾向です.サイクルに伴う諸量(W, Q, ΔU)や気体分子運動論の概要,エントロピーの序論まで理解すればよいでしょう.ヘルムホルツやギブスの自由エネルギーが出ている問題は見たことがありません.

3問中2問選択なので,電磁気を勉強しない or 熱力学を勉強しない 選択も可能ではあるのですが,リスク的にあまりお勧めしません.電磁気学ですと電磁波,熱力学なら古典力学を逸脱した光子などの分野(相対性理論?)が以前出題されていました.

使用した参考書

  • 基礎物理学演習I (力学,熱力を3周)

  • 基礎物理学演習II (電磁気を3周)

  • 弱点克服大学生の初等力学(2周)

  • 弱点克服大学生の電磁気学(2周)

  • 弱点克服大学生の熱力学(2周)

  • 詳解力学演習(2周)

  • 先生にいただいたプリント

勉強スケジュール
4年の夏休みから本格的に物理の勉強を始めました.
夏休み中に基礎物理学演習I,IIで力学と熱力学,電磁気学の範囲を1周しました.熱力学と電磁気学は幣高専で授業がなかったため,1周目は大変でした.その後4年学年末までに3周終わらせましたが,もう少し理解して勉強すればよかったと感じています.

同時期に高専の先生からいただいたプリント(力学,電磁気学,熱力学)を何周か解きました.

5年4月に入ってから弱点克服シリーズを始めました.先にこのシリーズをしておけば良かったと思います.基礎物理学演習と比べて編入試験の実際の問題が採録されており,阪大の問題に近いです.このシリーズによって物理の理解が深まりました.

5月ごろに昨年の力学を解き,かなり難しい印象を受けたので,力学を強化するために詳解力学演習を始めました.図書館で解く本を探していた時,美しい赤い装丁に惹かれて軽く中身を見てみると,かなり素晴らしい内容だったのでこれにしました.阪大の力学に近い問題が多いです.

試験前日は弱点克服シリーズを解いて精神統一をしました.

過去問

数学は17年分,物理は14年分しました.英語は解答を持っていなかったので,阪大の英語20か年を中心に演習しました.よって,傾向を把握するための8年分しかしませんでした.

大体1月くらいに過去問を解き始めました.
過去問は大事に解きたいと考えたため,H27, H28は6月まで残しておいて,試験日と全く同じスケジュールで解きました.
試験日と全く同じスケジュールで解くのはオススメです.

数学は昔になるほど難しい問題が多いので,ショックを受けないように気を付けてください.私はショックを受けました.

口頭試問

面接の練習しかしませんでした.
というのも,私は当日の口頭試問が始まるまで口頭試問を口頭試問だと思っておらず,面接だと思っていたので,口頭試問の対策を何もしていませんでした(絶望).

面接練習は3回ほどお願いしました.幣高専の受験報告書を参照し,質問項目を調べ,各項目について自分の考えをまとめました.以下に典型的な項目を示します.

  • 志望動機

  • 自己PR

  • 現在の研究内容

  • 基礎工で興味のある研究

  • 大学計画

  • 将来の予定

自分の軸をしっかり持って話せるなら大丈夫だと思います.私は面接練習を2週間前に始めましたが,軸がぶれぶれでダメダメで精神的につらかったです.面接練習はもう少し前から始めてもよかったかもしれません.面接練習で精神的につらいときは勉強して精神を安定させました.

試験

大阪在住の親戚の家に前泊しました.阪大基礎工の豊中キャンパスへは1時間ほどで行けるので,前日は朝6時くらいに起きました.石橋阪大前駅から試験会場まで徒歩20分ほどかかります.

  1.  英語 (90 min)

  2.  数学 (120 min)

  3.  昼休憩 (60 min)

  4.  物理 (90 min)

以下に令和5年度の各教科の試験の出来や感想を述べます.あくまでも主観的な意見であることを考慮願います.



英語

来年度よりTOEICが導入され,英語の試験がなくなりますね.

阪大編入英語の最後の年なので何か特別な問題が出るかと思っていたら傾向通りでした.
出来は8-9割くらい.
英語は得意なので,絶対に落とせない戦いでした."車輪" の訳で"wheel"がどうしても出てこなかったので,"car ring"という一昔前のGoogle翻訳みたいな訳を書きましたが合格したのでおk.

おそらく英語で割ととれたのが大きかったと思います.

数学

阪大の数学は易化する傾向が続いていましたが,今年は打って変わって難化しました.

微積分は,全微分,陰関数の接線,接平面(tの関数),接平面がtにかかわらず点Pを通る時の点Pの座標が出ました.
全微分の定義は記憶の遥か彼方だったので落としました.接線,接平面は取りましが,点Pはわかりませんでした.点Pと仲良くなりたかったです.
出来は5割くらい.

線形代数は,一次変換とその表現行列,固有値,固有ベクトルが出ました.微積分と確率に比べて簡単に思えたので,これは落とせないなと判断しました.
出来は10割

確率は,証明がたくさん出ました.
ある事柄について,数式による証明と,文章だけで説明するという2通りが求められる面白い問題がでました.数式の方はできましたが,文章の方は微妙な解答を生成しました.物理を解いていても感じますが,定性的な評価は難しいですね.あと2問あったのですが,よくわからなかったので空欄でした.編入試験において空欄を作らないのは鉄則ですが,普通に破りました.かなり難しい問題群だったと思います.平成20年ごろの難しい確率問題が再来しました.
出来は5割くらい.

全体の出来は7割くらいだと思います.あまりできなかったですが,周りもできてなさそうな空気感でしたので,あまり落ち込まないようにメンタル維持を努めました.

昼休憩

お気に入りの音楽(藤井風)を聴くなどして精神統一をしました.私は同学部を受験した知り合いがいませんでしたが,周りも一人の人が多そうな雰囲気でした.そういえば同コースで私以外に女子の受験者の方はいませんでした.

物理

難易度は通常通りだったと思います.私は力学と熱力学を選択しました.
今年の電磁気は一見したところ3変数の連立微分方程式を解く必要がありそうでした.私は2変数の連立微分方程式しか解いたことがなかったので,リスクの観点から,電磁気学を選択することはやめました.

力学は,剛体棒の振動における回転運動方程式,微小振動の角速度,それが最大になるときの固定点と重心の距離を求める問題でした.
昨年(令和4年度)の力学がかなり難しいと感じたため,いろいろと勉強したにもかかわらず,今年の問題は非常に簡単でした."力学で難しい問題がでて,それにより他の受験者と差をつける作戦"が崩壊しました.
出来は10割

熱力学は,断熱過程,等圧過程,等積過程を含むヒータ付きピストンの問題でした.
力学が30分で解けたので時間に余裕があったにもかかわらず,30分ほどたったあとに,最初の操作が断熱過程でないことに気づき,すべて消して解きなおすという暴挙を行いました.かなり焦っていましたが,「ここで何も書かなければ後悔するから絶対なんか書く」という気持ちで何とかすべて埋めました.しかし,単なる等圧過程であることになぜか気づかず,ピストンに行った仕事の値を間違えました.それが後の二問にも影響したと考えられます.このミスにより,受験後のテンションがかなり下がりました.もしかすると部分点があるのかもしれません.とりあえず全部埋める気持ちは重要です
出来は6-7割くらい.

全体の出来は7-8割くらいだと思います.前述したとおり,熱力学をやらかしたので,かなりテンションが下がりました.

口頭試問

口頭試問は2日目です.1日目の低いテンションを修正…できたのか微妙な感じで挑みました.

控室で1.5時間ほど待ちました.実際の口頭試問は10分程度だったと思います.面接官の教授方は3人で,圧迫感は感じませんでしたが,教授方の圧倒的知力というか凄みを感じました.私はリラックスして話せたと感じています.
以下に質問項目を示します.

  • 志望動機

  • 他大学でなく,阪大の基礎工である理由

  • 他の受験大学とその志望順位

  • 口頭試問

    • クイックソートの説明と平均,最悪計算量

    • (3問から選択) 組み合わせ回路と順序回路の違い,Mealy型とMoore型の違いの説明

  • (調査書を見て) いろんな外部のカンファレンスに参加しているみたいだけど,どうやって情報収集したの?

基礎工である理由や,基礎工が第一志望であることを情熱的に語りました.

前述した通り,口頭試問の対策を何もしていませんでした(絶望).つまり,専門に関してホワイトボードでうまく説明するといったことを今回初めてしました.
面接前に,後ろの方でほかの受験者の方々がやたら専門の話するなあと呑気に考えていましたが,こういうことだったんですね.これから受験するみなさん,口頭試問の対策をしてください.

実際の口頭試問は,一問目がクイックソートの説明で,二問目が3つの問題からどれか一つを解答する形式でした.ホワイトボードの使用が認められました.
一問目のクイックソートの説明に関しては,阪大工学部対策で実装するなどして理解していたので,耐えました.アルゴ式という素晴らしいサービスで基本的なアルゴリズムを勉強していました.
二問目の組み合わせ回路と順序回路の違い,Mealy型とMoore型の違いの説明に関しては,専攻科対策で回路をかなり勉強していたので,うまく(?)説明できました.残念ながら,解答しなかった他の2問の内容は忘れてしまいました.
恥ずかしいので詳細は割愛しますが全体的に私の説明が知的でなかったように思います.コミュニケーション能力を向上させたいですね.

面接で話す内容を増やすという意味でも,3,4年次に様々なイベント,カンファなどに参加して知見を増やす活動をすることをおすすめします.

大学入学後の計画や現在の研究内容,興味のある研究など何も聞かれなかったので「これ落ちたんちゃうか」とかなり落ち込んでいました.

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました.合格発表のその瞬間まで受かると思っていませんでした. こんだけやってもだめなんかとか思いながら, 帰りの地下鉄では涙を流していました. 前に座っていた方, ごめんなさい. 合格発表までの1週間はずっと工学部の勉強をしていました.

私はたくさん問題を解いて数で勝負した人間ですが, 勉強が趣味だと感じることができる自分に少なくとも感謝します.
それよりも, 家族は受験勉強に集中できる環境を用意してくれ, 同じレベルの大学を受ける友達はモチベ維持に寄与してくれ, 素晴らしい先輩はたくさんアドバイスをくださって, 私は環境に恵まれた人間なんだと思います.

人類に感謝!

あ, 私の推しはディグダです.

参考文献

編入勉強において様々なブログを参考にさせていただきました.ありがとうございました.特に同高専の先輩であるK先輩, R先輩には感謝してもしきれません.


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