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【ネタバレ注意】図像解釈学と修辞技法で見る「イコライザー」
先のエントリで「テッド2」の考察記事を書きましたが、
監督も作品ジャンルも作風もまるで異なるのに、奇しくも「ボストン」を舞台に「歴史」と「聖書」をモチーフにし、しかしそれらを知らなくても全く問題なく楽しめるという「テッド2」と同じ構造の映画として「イコライザー」があります。
「イコライザー」はアントワーン・フークア監督による2014年公開のアクション映画です。2015年公開の「テッド2」の前年
「トランスフォーマー/ロストエイジ」の精神的続編+ボストンの黒歴史=「テッド2」
先のエントリで「トランスフォーマー/ロストエイジ」の考察記事を長々と書きましたが、
同作がチャイナマネーのせいでメチャクチャになり放り出されてしまったテーマを拾いあげ、精神的に引き継いだと思われる映画に2015年公開の「テッド2」があります。
「テッド2」は、セス・マクファーレン監督・脚本・製作の2012年公開の(日本公開は2013年)「テッド」の続編です。1985年のクリスマスに孤独な少年ジ
GM!フォルクスワーゲン!中国!スポンサーが札束で殴り合う大乱闘「トランスフォーマー/ロストエイジ」
私が一般的な映画ファンに「実写トランスフォーマーシリーズで一番好きなのは4作目の『ロストエイジ』だ」と言うと、大抵の場合「お前は何を言っているんだ?」という顔をされます。それも当然、この「トランスフォーマー/ロストエイジ」は、全世界で1100億円以上もの興行収入を記録していながらありとあらゆる炎上を巻き起こし、Rotten Tomatoesの評価で脅威の17%を叩き出してド腐れ映画に認定され、アワ
もっとみる「カーズ」第1作目が内包する日本人女性へのフェティッシュ幻想
これまで当noteでピクサー映画「カーズ2」および「カーズ/クロスロード」の記事を公開してきましたが、改めて2006年に公開されたシリーズ第1作目の「カーズ」を鑑賞し、現在の価値観で見たらかなり露骨な”ステレオタイピング”があることが気になったのでメモも兼ねて書いてみたいと思います。
本作は車を中心とした乗り物を擬人化したキャラクターが現実を模した文明を築いて生活している設定の3DCGアニメーシ
シボレーvsフォードvsフェラーリvsベンツ! ただし日産、テメーはダメだ! 「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」
先に公開した実写版「トランスフォーマー」第2作目の記事に続き、2011年に公開されたシリーズ第3作目「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」についても書いてみたいと思います。
当初の予定では、実写版「トランスフォーマー」シリーズはトリロジー作として本作で最後となるはずでしたが、まともな映画ファンや映画評論家の酷評とは裏腹に興行収入は素晴らしかったため全6作になることが決定。当初マイケル・ベイ監
【ネタバレ注意】車×女子はいいぞ! 「シュガー・ラッシュ:オンライン」におけるプリンセス幻想とジェンダーロールの破壊
先日公開したピクサー映画「カーズ/クロスロード」の記事にて、同作が「車」をモチーフにジェンダー、とりわけ「女性」にエールを送る作品だと書きましたが、その後ディズニー/ピクサーは更にこの組み合わせで別のシリーズの続編を製作し、またもや高評価を得ることとなります。それが2018年公開の「シュガー・ラッシュ:オンライン」(原題:Ralph Breaks the Internet)です。
本作は2012
【ネタバレ注意】老害撲滅&マイノリティ応援映画「カーズ/クロスロード」
先日公開した映画「トランスフォーマー/リベンジ」の記事にて、同作に差別的表現があった件を書きましたが、逆に「車擬人化もの」で「ジェンダー」「人種」を敢えて打ち出して成功した例があります。それが2017年公開のピクサー映画「カーズ/クロスロード」です。
本作は「カーズ」シリーズの3作目にして最終章にあたる作品です。「カーズ1」が主人公のライトニング・マックイーンのルーキー時代、「カーズ2」が脂の乗
一般大衆に夢を見せてコルベットを作れ!どん底GMの起死回生広告「トランスフォーマー/リベンジ」
先日公開した実写版「トランスフォーマー」第一作目の記事に続き、2009年に公開された「トランスフォーマー/リベンジ」についても書いてみたいと思います。
本作は第一作目の成功により制作が決定した続編で、前作の1億5,000万ドルを超える2億ドルの製作費が投入され、興行収入は北米のみで4億ドル、日本国内でも前作を下回ったものの23億円を記録し大ヒット作となりました。本作の特長としてアメリカ国外での大
「フォードvsフェラーリ」に見るアメリカと欧州の車文化の違い
先日実写版「トランスフォーマー」第一作目の記事を書いたら、やはり同記事内で触れた「フォードvsフェラーリ」ついても書きたくなったので書きます。同作の公開当時、仙台では市内にある4つの映画館のうち3つがほぼ同時期にこれを上映するという激推しっぷりでした。やはり仙台も政令指定都市とはいえ東北の地方。それなりに車バカがおり、映画館も動員が狙えると踏んだのでしょうか。
本作はフォードがル・マン24時
フォードVSシボレー アメ車業界のメタファーとしての実写版「トランスフォーマー」
一昨年のGW中にYoutubeにて期間限定公開されていたトランスフォーマーの初代アニメ(所謂G1シリーズ)を視聴したことをきっかけに今更ながらトランスフォーマーにハマり、改めてAmazonプライムでマイケル・ベイ監督の実写版映画シリーズを視聴しました。マイケル・ベイ作品と言えば、それなりに映画を観ている人なら「爆破」「破壊」「バカ」でお馴染みで、やはり実写版トランスフォーマーシリーズもベイ節炸裂な
もっとみる「車」に着目して「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観る
本日2020年9月12日21:00より、フジ系・土曜プレミアムにて「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が地上波初放送されます。そこで、本作の重要モチーフであり魅力の1つである「車」に着目してみたいと思います。
そもそも本作がなぜ普段アクション映画を鑑賞しない層にも広く受け入れられたヒット作になったのか?それは作中にありとあらゆるモチーフとテーマが詰め込まれたハイコンテクストな映画だったからでし
善人なおもて往生をとぐ、いわんや裏切り者をや --- エリア・カザン救済映画「沈黙 -サイレンス-」
先日「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」のレビューで1950年代の米ハリウッドに吹き荒れた「赤狩り」の嵐について書きましたが、その際にふと頭に思い浮かんだ映画監督がいます。それは2003年に94歳という長寿で大往生したエリア・カザン。彼は「紳士協定」「欲望という名の列車」「波止場」「エデンの東」といった名作で知られる社会派映画の巨匠で、生涯に2つの監督賞を含む22ものオスカーを
もっとみる【ネタバレ注意】赤狩りのメタファーとしての「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」
先日「シェイプ・オブ・ウォーター」のレビューで東西冷戦のことを書いたら今度はハリウッドに吹き荒れた「赤狩り」ついても書きたくなったので2004年公開のアニメ「クレヨンしんちゃん」劇場映画シリーズ(通称”劇しん”)12作目「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」のレビューを書きます。
劇しんの傑作と言えば「オトナ帝国」「戦国大合戦」はもう定番中の定番ですが、私はそれらに次ぐ傑作がこ
【ネタバレ注意】ミレニアム世代向け冷戦モンスター映画「シェイプ・オブ・ウォーター」
先日「新感染 ファイナル・エクスプレス」のレビューで朝鮮戦争のことを書いたら今度はその背景である東西冷戦についても書きたくなったので2018年公開のギレルモ・デル・トロ監督のモンスター映画「シェイプ・オブ・ウォーター」のレビューを書きます。
私は公開当時に近所の映画館で鑑賞したのですが、観た直後に思ったのは「これはミレニアル世代のモンスター映画だ」といううことでした。
映画の舞台は1962年の