医療コーチング事始め〜言語聴覚士が考えるコーチング〜本当はどうしたい?という質問
(この文章は好きな人はすぐに読めるし、嫌いな人はすぐに読むのをやめるので結果的にすぐ読めます)
言語聴覚士がコーチングについてのアウトプットをするページです。
今回は自分が体験した患者さんとのやりとりにりついて書きます。
以前のことです。
構音訓練で関わっている、あるがん患者さんのところに行くと、訓練もそこそこに、いつもその人の心情を色々と聞くことが多く、その人もそれを望んでいるようでした。
内容はその人の苦痛や病気に対する不安、家族への思い、家族が面会できない現状への不満など…。
ある日病室に行くと、
あまりの苦痛と便秘による不快感で弱気になってしまっているとのことでした。
辛いので、死んで楽になりたいという気持ちが出てきていると漏らしていました。
以前の私だったら、話を聞いて、「それは辛いですね…」とか、「そんな死ぬなんて言わないでください」とか返したと思います。
その時の私は、
「今はそういう気持ちなんですね」と返しました。
すると、
「どう思う?」
「頑張って生きようと思って過ごすのと、もう楽になりたいと思って過ごすのとどっちがいいか」
と聞いてきました。
どちらとは答えられない質問。
でもその人はわかっているはずですよね。
だから、「本当はどうしたいのですか?」と聞いてみました。
するとその人は泣き出してしまい、
「生きたいに、決まってるじゃないですか」と言いました。
そこからまた家族への思いなどを話してくれたので聞かせてもらいました。
大切な人より先に寿命を迎えることが辛いとのこと。病気になってから家族の大切さに気づいたんだと話すのを聞いていました。
しばらくすると、「…浣腸したら、少し良くなるかな」と言ってきました。
それは、その人なりに今できそうなことを考えた結果だと思いました。
医者ではないので実際の苦痛に対してアプローチをすることはできないけど、
その人が本当に言いたいことを引き出すことができ、その人が少しでもいい状態に近づけばいいなと思っています。
どんな人でも良い状態になりたいという気持ちはあるのではないでしょうか。
いつも色々な話をしてくださるのがありがたいですし、
患者さんとのこうしたやりとりのひとつひとつを大切にしていきたいと思っています。
患者さんに対するコーチングは、
丁寧な傾聴と、こうした小さな一歩を生み出せるような関わりの積み重ねが必要だと思いました。
「生きたい」という大きな目的。
必ず終わりが来る命ですが、それまでにその人は何ができるか、我々はどんな関わりができるか、考え続けることが必要だと思います。
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