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薬学実務実習への想い

 今日から薬学生の実務実習が始まったのだが、実習初日の悪天候はかなり気の毒なように思えた。スーツ姿でやって来た実習生は緊張でカチコチになっていた。オリエンテーションを担当したが、本当であればアイスブレイクを企画した方がよくて、かといって良いアイスブレイクがそう思いつくものでもなく、結局指導指針で決められた内容を淡々とこなしただけになってしまった。やはり学生達はカチコチなままだったので反省点である。

 僕は、実務実習というものに対して熱意というものを持っている。学生にとっては、大学では学べないことを現場で学べるチャンスなのだ。実りの多いものでなくては困る。僕が実務実習生だったときは、臨床の現場ってこんなに面白いのだと感動すらおぼえたものだった。研究職を目指していた僕が、臨床の道に進みたいと思ったきっかけが実務実習だった。心変わりしろと言うつもりはないが、それくらい「臨床には学術的な面白さもある」という学びを得て大学に帰ってほしいと思っている。
 ゆえに、ただの無賃労働になるのが一番まずいわけで、もし実務実習がただの無賃労働であれば、現場は楽こそできるものの、学生にとっても現場にとってもマイナスの効果しか生まないだろう。以前、ずんだもんの動画で実務実習を取り扱ったものを見たが、実務実習生に扮したずんだもんが「無賃労働」と表現していたのに強い憤りを覚えた。誤った意識や認識をよくもネットの海に流してくれたものだと、実習生や現場の熱意を侮辱するつもりかと、コメントで文句の一つでも言ってやろうかと思った。そこはさすがに頭を冷やしたが、数日はずんだもんを見るのも嫌になったものだった。
 実務実習は現場の弛まぬ努力と学生の学習意欲、そして大学との信頼関係(場合によっては患者様のご協力も)によって初めて成り立つ学びの場であることを忘れてはいけない。僕が学生達に伝えたいのは生きた知識と、知識の活かし方と、学術的な面白さだ。

 今後、薬剤師の卵達はより高度な知識と技能を求められるだろう。いずれ、ベテランが新人に知識や技能で追い抜かれる時代が来るだろう。そんな時代に向けて、現場は更なる研鑽が求められる。年々、実務実習生が薬局に来る度に実感させられるものだ。

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