ブラックジャックに憧れて
「ブラックジャックを…ブラックジャックを私が小学3年生の頃に父が買ってきまして…それを見て、ブラックジャックに憧れちゃったんです!」
少し照れくさそうに、でも誇りで包まれたその言葉には、
迷いや濁りが全くなくて、
私の心は鷲掴みされました。
そしてきっと、その”小学3年生に描いた夢”を叶えるために
これまで闘い続けてきたんだろと、
そして、今も闘い続けているのだろうと思ったら、
なんだか胸が熱くなって、フェイシャルケア中の私の指先は、
ほんの、ほんの僅か、温度を上げたような気がします。
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初めてお会いしたのは、もう3ヶ月くらい前かな?
『品が良くて、笑顔がとびきり素敵な可愛い人』
それがU様への第一印象です。
それでも、U様に限らず、実は当店にいらっしゃるお客様は、
”そう言う印象”の方が多くて、
なにせブライダル=ご結婚式を控えていらっしゃる方々ですからね。
ほとんどがキラキラですよ。
そんな中でもU様は、とりわけニコニコされていて、
私が名古屋出身だ…と申し上げると、
「あ!私もです!嬉しい!」とか、
9年前に独立して…と申し上げると、
「組織から離れて自分で仕事するってすごいですね!」とか、
なんかですね、とても好感が持てる感じで。
さらに初日は、急な雷付きの大雨。日傘兼雨傘はお持ちだったようですが、
傘自体は小さめだったので、
「傘、お貸ししましょうか?」と申し上げると、
「大丈夫です!この傘、結構万能なんです!」
さらに、お帰りになった頃に別件でLINEをし、雨に濡られてしまわなかったか確認すると、
「それが全く濡れませんでした!ご心配ありがとうございます!」
・・・濡れてないわけがない…気遣い…泣く。
そして私はまんまとU様の魅力の沼へ。
そこから始まったU様とのご縁。
今までも、本当に素敵なお話をたくさんたくさん聞かせていただいていたんです。
お仕事のこと、旦那様との出逢い、ご家族のこと…
全てのことをとても嬉しそうにお話しされる方で、
好感しかありませんでした。
ただ、研修医として現在お勤めだとは伺っていましたが、
今日までどんな経緯でお医者さんを志し、どんな苦労をしてきたか?どんな想いで将来を描いているのか?は具体的に聞いたことがありませんでした。
と言うわけで、本日はここぞとばかりにド直球で質問。
「今までで一番辛かったのはいつですか?」
すると・・・
「大学一年目です。医学部に入るまでの勉強ももちろん大変でした。でも、長期で計画的に勉強をすることはクセがついていました。ただ、入学して、『短期でたくさん次々に試験を受ける』っていう時期があって。『自分のこれまでの勉強法では太刀打ちできない』って思い知らされたんです。きっと少しだけあった自信もあったんだと思います。でも、合格できない試験もあったりして、挫折でしたね…せっかく夢だった医学部に入れたのにって、かなり悩みました。」
私はすかさず伺いました。
「そんな中で、なぜ頑張れたんですか?」
するとお客様は、
「お医者さんに…お医者さんになるのが夢だったので。どうしてもお医者さんになりたかったんです。それしか考えていませんでした。」
そして私は伺いました。
「いつ、お医者さんになろうと思ったんですか?何かきっかけが?」
すると、小3の頃のエピソードが。お父さんがたまたま買ってきたブラックジャックを読んだU様の心は一気に持って行かれたようで、
「人を助けたい!ブラックジャックになりたい!」
U様は、正義感が満たされていくのが分かったそうです。
いやね、
「お医者さんになりた!」は正直、
無くはない話だと思います。
小学3年生でも。
ただ、多くの子どもたちが、
大変な
✔︎勉強量 と、 ✔︎学費含めたお金
の問題で、現実を知り、断念すると思うんです。
いや、断念って言葉じゃないな。
変更。
でも、それも人生だからいいと思うんです。
夢なんて、夢だから。
ただお客様は、その時のキラキラと、その時いの
ワクワクが
ずっと
忘れられなくて、
諦められなくて、
そして、
努力を重ねてきたんです。
「諦めが悪いですよね、私。」
そう笑いながらお客様は微笑みました。
「でも、その諦めの悪さを、努力に変えて今のUさんに繋がってるんだと思うとその諦めの悪さ、カッコ良すぎますよ。」
そう申し上げると、
お客様はまた嬉しそうに微笑みました。
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U様は、きっと元々のポテンシャルも高かったと思います。
経済的にも恵まれていた方かもしれません。
それでも、それだけでは、お医者さんにはなれなかったはず。
実際に、ご両親に負担をかけまいと、
国公立の医学部一本で受験されたそうですからね。
半端じゃない。
そう、
「ブラックジャックみたいになりたい!」
そう思ったその瞬間から、
きっと”諦める”と言う選択肢を自分の中から外したんだと思います。
その執念が、その想いが、その覚悟が、
今のU様をつくってきたのだ、と。
かっこよすぎでしょ…
私には、その執念があるのか?
私には、その想いがあるのか?
私には、その覚悟が持てているのか?
”頑張っている風”の自分を、ただただ反省しました。
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「次回は、ラストケアですね。」
そう申し上げる私にU様は、
「近かったとはいえ、こちらのお店に来れて、私は幸せです。次回もよろしくお願いいたします。」
丁寧におっしゃいました。
この謙虚さが、U様の強さなんだと思いました。
今の自分に不足感を感じているあなたへ。
「本当にやりたいことから、諦めていないか?」
そう、自分に問うところがスタートなのかもしれません。
本日は、「U様に申し上げました。『私、最近は一周、いや五周くらい回って、人生なんて頑張らなくていいって思っています。でも、でも、それは頑張っている人がダメってことじゃないし、なんなら、頑張らなくても良いのに頑張っている人は、かっこいい。超かっこいい。だから、これからも応援しています。立派では無くていいから、U様が小3の時に憧れた、ブラックジャックのような人に、なってください。』と。心から応援しています。そして私も、頑張ります。」ってお話でした。
学び:すぐ感化される系エステティシャン
おしまい
chihiro
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