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勝手に和訳シリーズ1 『黄昏のなかに』

ドイツ屈指の抒情詩人アイヒェンドルフの作品。
1948年に最晩年のR•シュトラウスによって、「4つの最後の歌」中でオーケストラ伴奏付きで歌曲化された。長い激動の人生を噛み締めるような静謐さ、憧れに満ちた哀しげな旋律、そして何よりも、淡い回想に浸りながら喜びも苦しみもその全てを受け入れて、すぐそこに迫り来る自らの死を、後ずさりせずに見つめ続ける彼の魂の強さが浮かび上がる。 

原文では四行連のうちにababと見事な韻律が通っています。
以下原文ドイツ語に続き、和訳掲載。



« Im Abendrot »

Wir sind durch Not und Freude
gegangen Hand in Hand;
Vom Wandern ruhen wir
nun überm stillen Land.
-
Rings sich die Täler neigen,
Es dunkelt schon die Luft,
zwei Lerchen nur noch steigen
nachträumend in den Duft.
-
Tritt her, und laß sie schwirren,
bald ist es Schlafenszeit,
daß wir uns nicht verirren
In dieser Einsamkeit.
-
O weiter, stiller Friede!
So tief im Abendrot.
Wie sind wir wandermüde
Ist dies etwa der Tod?

『黄昏のなかに』
-
苦難の日々も喜びの瞬間も
私たちは手を取り合って歩んできた。
でも、さすらい続けることはもう終わりにしよう。
この静かなる土地にて休もうじゃないか。
-
ここはどこも谷が囲ってくれている。
空がもう暗闇にのまれつつある。
二羽のひばりは夜から逃れるやうに
夕焼けの向こうへと飛び去ってゆく。
-
おいで・・ひばりは逃がしてやろうじゃないか。
もうじき、まどろみの時は来る。
決して離れ離れにならないように
私たちはずっと二人でいよう。
-
嗚呼・・・どこまでも平和なる静寂!
夕映えの中に遥か彼方へ広がってゆく。
なんとも旅にも疲れてしまったね・・・
死とは、もしかすると、このことだったのだろうか?


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