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【シリーズ|私と団体戦】人とかるたを結ぶ力|沖山槙之介さん(東京学芸大学かるた会 )

こんにちは。ちはやふる基金スタッフです。

夏の競技かるた界といえば、団体戦!高校選手権大会をはじめ、小学生団体戦、中学生団体戦、大学かるた選手権大会、職域学生かるた大会…。さまざまな団体戦の大会が、夏にたくさん開催されます。

そこで基金noteではシリーズ「私と団体戦」と題して、団体戦がテーマの記事をお届け。団体戦の魅力や団体戦にかける想いについて、さまざまな方にお話を伺います。

初回の語り手は、東京学芸大学かるた会の沖山槙之介さん。高校時代に団体戦に出会い、現在は教員をされながら社会人チームで団体戦を楽しんでいます。

沖山さんの経験をもとに、競技かるたにおける団体戦の魅力を語っていただきました。ぜひ最後までお読みください。

今回の語り手

沖山槙之介さん

東京学芸大学かるた会所属。A級四段。A級公認読手。東京都高文連理事。現在は教員として多忙な日々を送りながら、仕事と競技かるたの練習を両立。社会人チームで団体戦の大会に出場しています。


団体戦は人とかるたを結ぶ

高校1年生で競技かるたの世界に入ってから、今年で11年目。この11年を振り返ると、いかに団体戦が自分の中で大きな比重を占めていたかに気づかされます。

一度も競技の世界を離れることなく、今日までさまざまな立場で競技に関わり続けてきたのは、団体戦があったから自分を競技かるたの世界につなぎとめているのは団体戦だと言っても過言ではありません。

高校|叶わなかった夢

団体戦で高校選手権優勝を目指す部活で競技かるたを始めた私にとって、団体戦は常に身近な存在。団体戦のために日々の練習に励み、チームの戦力となるためにA級選手を目指していました。

しかし、高校3年生の高校選手権は東京都最終予選で敗れ、本戦には出場できませんでした。

個人で代表に選出されていた総文祭では、チームは優勝したものの、個人としては出場機会をほとんど得られないまま終わり、優勝した喜びよりもチームの力になれなかった悔しさの方が残る大会となりました。

2022年度学生職域団体戦より

大学|もう一度団体戦を

高校を卒業した私は、当時かるた会がなかった東京学芸大学に進学し、現在の所属会である東京学芸大学かるた会を設立。

一般会に移籍するのではなく、大学で新たにかるた会をつくる選択肢を選んだのは、ひとえに団体戦への未練があったからです。

高校時代、高校選手権でも総文祭でも目指していた場所までたどり着けなかった私は、もう一度団体戦をしたい団体戦で借りを返したいという気持ちがありました。

一般会で個人戦をメインに活動するよりも、大学にかるた会をつくり、団体戦でチームメイトと戦うことに魅力を感じたのです。

しかし、競技かるた未開の大学で初心者を集めてチームをつくることは、想像以上に大変な道のりでした。

はじめの2年ほどは、自分自身の練習というよりは初心者の指導やかるた会の運営に力を注ぎました。自分の練習だけに熱量を注げればどれだけ楽しいかと思ったこともありましたが、それでもその道を進み続けたのは、やはりもう一度団体戦がしたいという願望ゆえのことだったと思います。

その結果、念願叶って大学選手権や職域学生かるた大会に「東京学芸大学」チームとして出場することができました。優れた成績を残せたわけではありませんでしたが、再び団体戦の畳に上がり、仲間とともに戦う喜びを味わうことができて、自分の選んだ道が間違いではなかったと強く感じました。

社会人|私のモチベーション

その後、公立学校の教員として就職した私は、現在、社会人チームで職域学生かるた大会に出場しています。これも、団体戦が結んでくれたご縁です。

レジェンド級のベテランから同世代の若手までが一緒のチームで戦う社会人の団体戦は、高校、大学時代とはまた違った喜びがあります。

これから退職までの間、このチームで戦えることに、今はとてもワクワクしています。毎年の職域のために、仕事と両立しながら練習をしようというモチベーションにもなっています。やはり、私は団体戦によって競技かるたの世界につなぎとめられているのです。

団体戦の魅力、それは—

それほどまでに私を惹きつける団体戦の魅力とは何でしょうか。それは、自分のかるたを必要としてもらえることだと思っています。

個人戦は孤独です。どれだけ多くの仲間と練習をしていても、試合中は自分一人。目の前の対戦相手と一人で向き合い、そして自分自身と向き合います。

そこには個人戦ならではの喜びがあるのも確かですが、自分のかるたを必要としてもらえる団体戦は、それと同じか、それ以上の喜びがあると私は思っています。

自分が取った1枚を一緒に喜んでもらえること。お前の1勝がチームに必要なんだと言ってもらえること。苦しい場面でも仲間に応援してもらえること。そして、必死に勝ち取った1勝の喜びを共有できること。

どれも団体戦ならではの喜びです。

社会人になっても、高校生のときと同じように団体戦の喜びを味わうことができている今、心の底から幸せだと感じています。本当に、人との縁、チームとの縁に恵まれました。

この幸せをこれからの競技生活を通して味わい尽くしていきたいです。そして次の世代にも団体戦の喜びを伝えていくことが、学校教育に携わるかるた競技者としての使命ではないかと思っています。


おわりに

団体戦に生かされている沖山さん。もしも団体戦がなかったら、沖山さんの人生はどんなものになっていたのでしょうか。

私は基金スタッフとして団体戦を拝見する機会があり、団体戦の魅力はわかっているつもりでした。しかし、沖山さんの物語に触れて、私の理解は浅かったなあと。団体戦には人生を色づける力もあって、想像以上に体温がのったものであると。そう、思いました。みなさんはどう感じましたか?

基金noteでは引き続き、団体戦の魅力を紐解く記事をアップ予定です。また、大会レポートも執筆します。今月の基金noteもどうぞお楽しみに。

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